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医療法人誠心 志村デンタルクリニック 志村俊一院長

読了時間:約 6分  2011年01月20日 PM05:31
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療法人誠心 志村デンタルクリニック
志村俊一院長

10年間の「開店休業」から、「全面改装」成功へ
治療方針や設備は「個」を重視
スタッフには「和」の気配り

一番の苦労

他の場所に転院すべきか悩む日々

エントランスには初代と2代目の医院と院長の写真が掲げられている

 当院は昭和の初期からこの土地に根を下ろし、私で3代目になる。祖父の石井次三は北海道の歯科医としては草分け的存在で、札幌歯科医師会の創設にかかわり2代目の会長であったほか、北海道歯科医師会の会長も務めていた。しかし、順風満帆の状態で後を継いだわけではない。
 2代目の伯父が脳こうそくで倒れたのが高校生の時だった。この時点で後を継ぐことを決意した私は、祖父も学んだ東京歯科大学に進んだ。その後、札幌医科大学の口腔外科に入局し、1998年に当時の石井歯科医院で診療を始めて2年後に院長となった。
 しかし、実はそれまでの約10年間、クリニックは医師不在の“開店休業”状態だった。かかりつけで来ていた患者さんも、とっくに離れてしまっている。1階が自宅で2階が診療所という昔ながらの建物のままで診療を始めたが、1日に来る患者はわずか3、4人。周りに大先輩の先生方も多いこの土地でやっていけるか当初から不安はあったが、ここまで少ないとやはり他の場所で開業するべきかと悩んだ。
 そんな時、患者さんの1人が来て「あなたのおじいさんはこういう方で、おじさんはこんな方で……」と話をしてくれた。聞くうちに、私は自分がなぜ歯科医師になったかという原点に立ち返ることができた。さらに当時を知る父親や他の患者さん、周りの先輩方から数々のエピソードを聞くうちに、さまざまな歴史を持つこのクリニックで、あと数年はしっかり頑張ってみようと決意した。

一番の発見

目の前の患者さんにこそ、答えはある

カウンセリングを重視して多角的に治療方針のアドバイスを行う

 患者さんに丁寧な治療や説明を心がけ、時には世間話もしているうちに、やがて来院する数も少しずつ増えていった。一方で、患者さんの生活環境や背景を聞き出していくうちに、治療する側とされる側の考えが必ずしも一致しないことに気づいた。こちらが良いと思っている治療でも、必ずしも向こうに認められるとは限らない。高度な治療を望まれる方、仕事が忙しいのでとりあえずの部分でよいと思っている方などニーズはそれぞれであり、また個人のライフステージによっても違ってくる。「クリニックは患者さんが評価する」ということを実感したのはこの時だ。
 そこで私は、治療の選択を患者さんにしてもらうことにした。もちろん、今の症状に至る経緯とさまざまな治療法のメリット、デメリットはしっかりと説明する。また、プロの歯科医師としてベストまたはベターと言える選択肢も提示した。一方で、常にスタッフとは「患者さんから見て自分という歯科医師はどうあってほしいのか?この歯科医院の在り方は?」など話し合っていった。
 まずは自分の歯科医師としての在り方を明確にすること、次はクリニックのホスピタリティー向上とポイントを絞ってレベルアップを図るうちに、患者さんも増えて数年後には1日に20人の診察を行うまでになった。やがて銀行から資金調達のめどもつき、温めていたビジョンを実現すべく全面改装を行い2002年「志村デンタルクリニック」としてリニューアルオープンした。

一番の工夫

ニーズの変化を捉え、応え、維持する努力

診察室はプライバシーを重視した半個室タイプ。完全個室もある

 リニューアル前から、欧米や東京で見聞を広げるうちに、歯科に対してのニーズが「ただ痛いところを治す」から「きれいに治す」方向へと広がっていくことを感じていた。プライバシー重視の診療も特にアメリカでは一般的だ。そこで、改装の際には従来のように診療台をただ並べるのではなく、半個室の形式で4ユニットを設置した。現在は完全個室も含めて8ユニットある。最初から拡張できるようにスペースを確保しておいたのだが、それは歯科医の専門分野が細分化することを見込んでより多くの人員が必要になると考えたからだ。今では常勤歯科医2名、非常勤歯科医4名、常勤歯科衛生士4名、非常勤歯科衛生士2名が勤めている。
 建物の設計は、親の知人だった建築デザイナーに頼んで「見た目が歯科らしくない、10年たっても斬新な設計」をお願いした。外観はスタイリッシュなイメージだが、中に入ると木を豊富に使った造りでかつての医院の雰囲気が随所に垣間見れるようになっている。通りがかりに何の建物かと立ち止まって、来てくれるようになった患者さんも少なくない。ユニットはすべて性能の高さや患者さんの快適性を考えて選択したが、最先端の設備を使いこなすにはそれだけの努力を必要とする。自分にプレッシャーをかけて技術の向上につなげる意味でも良い判断だったと思っている。

一番の配慮

「ごめんね、怒られ役になって」と言えるか

 「患者さんを大切にするということは、スタッフを大切にすること」だと私は考えている。そこで意識しているのは、まず自分が常に楽しい雰囲気を持って仕事をすること。そうすればスタッフたちも明るく笑顔でいられるようになるし、そういった空気は患者さんにも安心感をもたらすものだ。時には、スタッフを怒鳴りつける患者さんもいる。そんな時には後から「ごめんね、怒られ役になってもらって」と声をかけるようにしている。スタッフは自分の代わりに患者さんに接していてくれるのだし、どんな理由でも怒られるような要因があったことは院長の責任でもあるのだから。このように個々まで目配りすることはかなり気を使う作業かもしれないが、それこそが院長になれる条件だと私は思っている。
 当院ではスタッフのチームワークを高めるためにもよくミーティングを開いている。また、みんなで食事に行くこともある。忘年会の時には、各自がクリニックの全員に感謝の手紙を書いて渡すようにしている。そうすればスタッフのモチベーションも高まるし、連帯感も生まれるものだ。さらに私も含めスタッフは、歯科関係のほかティーチングやコーチングのセミナーなどにも積極的に参加するようにしている。コミュニケーションを学ぶことは仕事の上でも必要なことだ。スタッフにはこのクリニックで技術を高めると同時に、人間としても成長してもらいたいと願っている。

一番の秘訣

揺るぎないビジョン、決してブレない決意


待合室に入る前の引き戸上部には開設の年が彫り込まれている

 私はここまで一気にクリニックを大きくしたわけではない。常に身の丈で前に進み、積み重ねてきた結果が今となっている。「すべては自分に責任がある」というスタンスはずっと変えていない。リニューアル直後は、建物のプランや診療スタイルなどに対して周囲から「生意気だ」という声もよく上がっていた。しかし、私は10年後には時代の流れがこうなるだろうと確信を持っていたし「自分はこうするんだ」という揺るぎない決意があった。確固たる決意を持つことは非常に重要なことだ。
 あらためて感じるのは「クリニックは患者さんが評価する」ということだ。ある患者さんからは、定期的にクリーニングすることで「歯がなくなるのは加齢によるものと思っていたけれど、おかげでこの10年に1本もなくさずしっかりと食事できています」と感謝の言葉をいただいた。ホームページや広告での宣伝をして一時的に患者数が増えても、受け入れる側に能力がなければ再診に来てくれることはない。このクリニックでは、今でも患者さんの紹介で新しい来院者が増えている。
 だから、新規開業やリニューアルを行う際には、どんなクリニックをつくりたいかという明確なビジョンを持つことが必要だと思う。そのためにも経営コンサルタントの助言を受けることは有効だろう。私も大学病院で働いていた時は、医療と経営は両立しないものと何となく思っていた。だが、ある経営コンサルタントの先生から「良い経営をしないと良い医療はできない」とアドバイスをもらい、今ではまさにその通りだと思っている。創業80年と歴史のあるこのクリニックで前向きに進み続け、ぜひ100年目を自分の代で達成したい。

医院プロフィール

医療法人誠心 志村デンタルクリニック

北海道札幌市中央区南一条東7-1-4
TEL:011-221-1716
医院ホームページ:http://www.shimura-dental.jp/


地下鉄東西線『バスセンター前』10番出口より徒歩5分。または札幌中心部より南1条通りを東に向かって一条大橋のすぐ手前左側。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

歯科・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科

理念

地域医療に貢献し、確固たる信用と信頼をもって患者さんに評価される歯科医院を目指す。

院長プロフィール

志村俊一(しむら・しゅんいち)院長略歴

1997年 東京歯科大学卒業
同年 札幌医科大学口腔外科学講座入局
2000年 石井歯科医院院長就任
2002年 医療法人誠心志村デンタルクリニック開設
2006年 アメリカ・ハーバード大学歯学部インプラント科留学

所属学会

日本口腔外科学会 、日本口腔インプラント学会、日本歯周病学会、日本顎咬合学会(認定医)、日本歯科審美学会、日本臨床歯周病学会 、アンチエイジング歯科学会、日本レーザー歯学会など

物腰柔らかく丁寧な語り口の志村院長にはファンの患者さんも多い。
そのソフトな印象とは裏腹に、3代目としてクリニックを前進させていく
決意とリーダーシップには揺るぎないものを感じた。