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肥満は脂質異常症より糖尿病と高血圧リスク増、女性でより顕著-神戸大

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2023年02月15日 AM10:37

65歳神戸市民1.1万人対象、糖尿病・高血圧・脂質異常症リスクと肥満について検討

神戸大学は2月14日、65歳の神戸市民約1万1,000人を対象に、肥満に合併する代表的な疾患である糖尿病、高血圧、脂質異常症の肥満度別の有病率と、普通体重に対して各疾患を有するリスクを検討した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科健康創造推進学分野の田守義和特命教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

肥満は各種の疾患を併発して、健康寿命を短縮し、日常生活の質を低下させる。中でも、肥満に合併する代表的な疾患である糖尿病、高血圧、脂質異常症は動脈硬化を進展させ、脳卒中や心疾患といった生命を直接脅かす病気につながる。特に、日本人を含め東アジア人は軽度の肥満でも代謝異常を発症しやすいという特徴がある。しかし、どの程度の肥満になれば、どういった疾患がどのくらい発症するのか、詳しい研究はほとんどなされていない。

65歳という年齢では、肥満を回避することが重要なことはもちろんだが、同時にサルコペニアやフレイルの原因となる低体重や痩せにも注意が必要だ。今回の研究は、65歳の神戸市民、約1万1,000人を対象に糖尿病、高血圧、脂質異常症の肥満度ごとの有病率を明らかにするとともに、普通体重者と比較した時、肥満度別に疾患を有するリスクを検討した。

糖尿病/高血圧は肥満進行に伴い有病率「増」、脂質異常症は普通体重者でも有病率「高」

研究の結果、各疾患の有病率は、糖尿病が9.7%、高血圧が41.0%、脂質異常症が63.8%。どの疾患も肥満度の上昇と共に有病率が増加したが、糖尿病と高血圧は肥満の進行と共に有病率が大きく増加した。一方、脂質異常症は普通体重者群でも有病率が60%を越えて高い反面、肥満の進行に伴う有病率の増加は緩やかだった。また、この傾向は女性でより顕著だった。

肥満進行に伴い男性は3疾患のリスクが増加、女性は糖尿病/高血圧リスクが大きく増加

糖尿病や高血圧は肥満度の上昇と共に有病率が大きく増加するが、脂質異常症は低体重や普通体重から有病率が高く肥満が進んでも増加の程度は糖尿病や高血圧に比して少ない。疾患リスクについては、男性では肥満度の上昇にともない、3疾患とも疾患リスクが増加した。しかし、女性では糖尿病と高血圧のリスクが大きく増加する反面、脂質異常症については軽度増加するに留まり、そのピークも軽度の肥満者群で認められた。

女性の脂質異常症には体重減だけでは不十分、生活習慣改善を見据えた指導や診療が必要

今まで肥満に関連する疾患の有病率を肥満度別に検討した報告はほとんど無く、肥満すると、どの肥満関連疾患もリスクが増加するという漠然とした認識しか無いのが実情だった。そのため、生活習慣病や肥満症の診療でも、どの程度減量すればどのくらい疾患リスクが低下するかと言った具体的な指導ができなかった。今回の研究で、糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病率を減らすためには、男性では減量が有効であること、女性では糖尿病と高血圧を減らすには減量が有効であるものの、脂質異常症には体重を減らすだけでは不十分で、減量以外にも、食事や運動など生活習慣の改善を見据えた指導や診療が必要となることが示唆された。

この3疾患以外にも、脳梗塞や冠動脈疾患、、変形性関節症といった運動器疾患など、肥満に関連する重要な疾患がある。今後は、このような肥満に関連する健康障害が、どの程度の肥満でどのくらいの有病率を示すのかを、年齢別、性別で解明することが肥満に関連して発症する疾患を指導および診療して行く上で重要なうえ、医療経済的な側面に対する減量の効果を推測する上でもたいへん参考になる、と研究グループは述べている。

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