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子どもが採血を肯定的に解釈するために「本人への事前情報提供」などが重要-山梨大

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2023年01月27日 AM11:00

採血やワクチン接種を子どもが肯定的にとらえるためには?

山梨大学は1月26日、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査()」の山梨県内の参加者(小学2年生)を対象に、採血の経験を肯定的に評価してもらうための方法を調査し、その結果を発表した。この研究は、同大エコチル調査甲信ユニットセンターの山縣然太朗センター長(同大大学院総合研究部医学域社会医学講座教授)、由井秀樹特任助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Health Science Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

採血やワクチン接種は子どもの健康のために重要な処置である。しかし、こうした処置に対して恐怖や強い痛みなどへの負担を感じる子どもは少なくない。そこで研究では、どのように工夫すれば、負担を軽減でき、子どもが採血経験を肯定的にとらえることにつながるかを検討した。

採血経験がある小学2年生566人へアンケート、20人にインタビュー

2020年4月〜2021年3月に実施した、小学2年生を対象とした学童期検査・総合健診に参加した566人へのアンケートを分析し、2021年7月〜2021年10月に実施した学童期検査・総合健診参加者のうち協力の得られた20人の子どもにインタビューを行った。

甲信ユニットセンターの追加調査である8歳総合健診には、採血が含まれる。ここでは、今回の調査を実施する前から、採血の負担軽減措置として、麻酔パッチを用いた局所麻酔、アニメキャラなどを使った採血の部屋の装飾、ディストラクション(採血中にタブレット端末でアニメを見たりゲームをしたりして気を紛らわすこと)などを実施している。

多くの子どもが採血経験を最終的には肯定的に解釈

アンケートやインタビューの結果から、多くの子どもが採血経験を最終的には肯定的に解釈しており、麻酔の効果もあって痛みをほとんど感じていなかったことがわかった。ただし、否定的な解釈をして、強い痛みを感じたケースも少数あった。採血やワクチン接種の恐怖と痛みの強さは関連することはすでに知られている。

アンケートの分析では、「痛みの度合いが低かったこと」「情報提供用のパンフレットを事前に読んでいたこと」が、採血経験の肯定的な評価と関連していたことが示された。また、インタビューでは、「採血の理由を含めた事前の情報提供」や「局所麻酔による痛みの軽減」、「ディストラクションなどの工夫を施すこと」で、当初、採血を否定的に捉えていた子どもであっても、多くの場合で最終的には採血経験を肯定的に解釈していたことが示された。自分の血液を使った研究の成果を知りたいという意見も得られた。

逆に、説明や処置の時間が長いと感じられたこと、大量の血液が採取されると思っていたこと、強い痛みを感じていたことなどが、採血経験の否定的な評価につながることも明らかになった。

子ども本人に採血の目的や採血量を伝えるなど、有効な6つの方策を示唆

アンケートとインタビューの分析から、子どもが採血経験を肯定的に評価できるようにするために有効な方策が6点示唆された。1)なぜ採血をするのかという理由も含め、パンフレット等で情報提供する、2)採血の量は少量であること伝える、3)局所麻酔のリスクとベネフィットを保護者に丁寧に説明する、4)説明も含めた採血作業は迅速かつ簡潔に行う、5)強い恐怖や痛みを感じていたり、採血に時間がかかっていたりするケースは、苦痛を完全になくすことはできないので、処置終了後すぐに周囲の大人が子どもの努力と協力に感謝を示す、6)血液を研究に利用する場合は、研究結果を子どもに理解できるように伝える。

今後、異なるシチュエーションでの調査が必要

研究で得られた知見は、子どもへの採血やワクチン接種の負担軽減につながることが期待される。一方、調査の限界として、子どもがスタッフに気を遣って肯定的な評価を示していた点を否定できないこと、小学2年生にとって自分の経験を言語で十分に説明することは必ずしも容易でないことなどがある。「さらなる調査を異なるシチュエーションで実施することが必要だ」と、研究グループは述べている。

また、調査では、麻酔パッチによる局所麻酔を施して採血を行ったケースの分析をしている。痛みの軽減が採血経験への肯定的な評価の重要な要素の一つであるが、日本の診療の現場で採血やワクチン接種に局所麻酔が用いられることは一般的ではないことも留意が必要だ。

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