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出生後の子どもの3歳までの成長パターンと妊娠中の血中元素濃度に関連-環境研ほか

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2023年01月04日 AM11:11

子どもの体重を出生時の低体重のみで評価した研究が多かった

国立環境研究所は12月23日、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の、約10万人の子どもを対象に繰り返し測定された体重データを用いて、出生後から3歳までの成長パターンを解析した結果を発表した。この研究は、同研究所エコチル調査コアセンターの山崎新コアセンター長、中山祥嗣次長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Environmental Health Perspectives」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22年度から全国で10万組の親子を対象として開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査である。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。この調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

これまでの国内外の研究では、子どもの体重を出生時の低体重のみで評価した研究が多く、子どもの成長パターンを、大規模な繰り返し調査のデータを基に評価している研究はなかった。また、母親の妊娠中の血中元素濃度が、子どもの成長パターンに影響するのかどうかは明らかにされていなかった。

約10万人の情報から子どもの成長パターンを類型化、母親の妊娠中の血中元素濃度との関連性を調査

今回の研究では、エコチル調査の対象者のうち、出生から3歳までの間に体重データが収集できた約9万9,000人の情報をもとに、子どもの成長パターンを類型化した。また、約9万5,000人の母親の妊娠中の血中元素濃度(カドミウム・)と子どもの成長パターンとの関連性を調べた。子どもの体重は、出生時、1か月、0.5歳、1歳、1.5歳、2歳、2.5歳、3歳の合計8時点の体重データのうち、2時点以上データがそろったものを解析対象者とした。体重データは、性別と月齢毎の体重SDスコアに換算し、統計モデルにより成長パターンを類型化した。母親の血中元素濃度を4グループに分けた上で、子どもの成長パターンとの関連性を分析した。

3歳までの成長パターンを5つに分類、「出生時に小さくその後も小さく成長」は約4.7%

その結果、出生から3歳までの間の子どもの成長パターンは5つに分類できることがわかった。「標準的な成長」を示した群(全体の約21.9%)、「標準的な体重で生まれてその後小さく成長」を示した群(全体の約31.3%)、「出生時は大きくその後標準的な体重になる成長」を示した群(全体の約28.1%)、「出生時に大きくその後も大きく成長」を示した群(全体の約14.0%)、そして、「出生時に小さくその後も小さく成長」を示した群(全体の約4.7%)が存在することがわかった。

妊娠中の母親の血中元素濃度、子どもの成長と発育パターンに影響

母親の血中元素濃度と子どもの成長パターンの関連性を調べた結果、妊娠中の母親血中鉛濃度やセレン濃度が高い場合、子どもが「出生時に小さくその後も小さく成長」を示すリスクが高いことが明らかになった。また、母親の血中水銀濃度が高いことやマンガン濃度が低いことも子どもの発育パターンに影響することが明らかになった。

この研究により、日本における子どもの成長パターンが明らかになり、「出生時に小さくその後も小さく成長」を示す子どもが全体の約5.0%いることがわかった。妊娠中の母親の血中元素濃度が、子どもの成長パターンに影響することを示した初めての報告である。

3人に1人は標準的なグループに比べて小さく成長、追跡期間の延長も検討

今回、出生時から3歳までの子どもの体重の推移を調べたことで、全体の約4.7%が「出生時に小さくその後も小さく成長」を示すことがわかった。また、全体の約31.3%が「標準的な体重で生まれてその後小さく成長」を示し、研究対象者の3人に1人は標準的なグループに比べて小さく成長するパターンを示すことがわかった。出生以降に低水準で成長する子どもに対する介入や対策の構築は、公衆衛生上重要な課題である。また、小児期を通じて体重が小さく推移する子どもにどのような健康事象が発生しやすいのかは、今後の研究課題である。さらに、小学校に入学するまでの幼児期や、学童期、思春期においても体重の変化は健康管理の重要な指標になるため、追跡期間を延長して体重の変化パターンを明らかにすることも今後の検討課題である。「なお、セレンは生命を維持するために必要な元素(必須微量元素)であり、適切な量を摂取することが必要である」と、研究グループは述べている。

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