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乾癬治療の新たな選択肢として初のTYK2阻害剤が承認取得

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2022年12月23日 PM07:00

既存治療で効果不十分な例や難治性皮疹の局所療法に有効


森田明理氏( スクイブ提供)

ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は、国内で初となる経口投与可能なチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害剤である「(R)錠 6mg」(一般名:)について、2022年9月26日、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬および乾癬性紅皮症を効能・効果として、製造販売承認を取得した。

これを機に同社は11月10日(木)にメディアセミナーを開催。セミナーには帝京大学医学部皮膚科学講座主任教授の多田弥生氏と、名古屋市立大学大学院医学研究科加齢・環境皮膚科学分野教授の森田明理氏が登壇した。森田氏は「臨床試験の結果は日本人乾癬患者におけるソーティクツの有効性および安全性プロファイルを支持するものであり、既存治療で効果不十分な例だけではなく、難治性の皮疹を有する局所療法で効果不十分な例に使用することが適している」との見解を示した。

1日1回投与で用量の漸増・調節が不要な経口薬が治療選択肢を拡大

乾癬とは、皮膚が赤くなり(紅斑)、新陳代謝が異常になることで盛り上がり(肥厚)、銀白色のフケのようなもの(鱗屑)が出現する慢性の炎症性疾患であり、長期にわたる治療が必要とされる。皮膚の痒みや痛み、関節の腫れや痛み、関節破壊を起こすこともある。


多田弥生氏(ブリストル・マイヤーズ スクイブ提供)

乾癬の国内の患者数は約43万人と推計されている1)。その内訳は、皮膚の一部に紅斑や鱗屑をきたす尋常性乾癬が全体の85.6%と最も多く、全身に膿疱が現れる膿疱性乾癬は2.3%、全身の皮膚が赤くなる乾癬性紅皮症は1.5%となっている2)。現状では、中等症から重症の尋常性乾癬や膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症を完治できる薬剤はなく、患者は複数の薬剤を切り替えながら治療を継続している。

多田氏(帝京大学)は「乾癬は身体的かつ精神的にQOLが障害される」と指摘。患者の多くが、皮膚症状による外見の変化や、感染性の疾患なのではないかとの誤解などから、自己肯定感の低下や周囲との人間関係に支障をきたし、ストレスを抱えている現状があると報告した。そのため「患者のつらい経験をなるべく少なくできるよう、早期からの適切な治療が重要」と強調した。

乾癬の治療は外用療法、光線(紫外線)療法、内服療法、生物学的製剤による注射・点滴療法がある。多田氏はこれらを「患者の病状やライフスタイル、治療目標に合わせて選択している」と説明したうえで、1日1回の経口投与で用量の漸増・調節が不要なソーティクツの登場により、治療選択肢が増えることへの期待感を示した。

ソーティクツの有効性は長期間持続、経口薬の利便性も魅力

TYK2は細胞外からの刺激シグナルを細胞内に伝達するために働くリン酸化酵素(キナーゼ)群のひとつであるヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの分子で、乾癬を含む自己免疫疾患の病態に寄与するインターロイキン(IL)-23、IL-12、I型インターフェロンなどの炎症性サイトカインの受容体に結合して下流にシグナルを伝達する役割を担っている。ソーティクツはTYK2に対するアロステリック阻害作用により、これらのシグナル伝達経路を抑制する。

森田氏(名古屋市立大学)は、臨床試験結果を踏まえ「いったん効果が得られると、長期間にわたり有効性が持続することがわかった」と解説した。さらに、近年開発された生物学的製剤の有効率には到達しないものの、「患者にとっては1錠内服することと、注射を打ちに行くことにはずいぶん大きな差がある」とし、治療選択肢を考える際は、経口薬である簡便さもポイントになるとの考えを示した。

また、ここ10年ほどで乾癬治療を大きく進展させた生物学的製剤について、治療成績は大きく改善されたものの高コストであることが課題と指摘。その点、経口薬は製造コストが抑えられるため「世界中で多くの人を救う力になるだろう」と述べた。今後の実臨床では、安全性を担保しつつ、ソーティクツが経口薬であることを活かし、「外用薬などほかの治療方法とも組み合わせることで、さらに高い治療効果を得られるのではないか」と期待を寄せた。

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