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脳卒中後てんかん、脳波上IEDsが再発リスクに関連-国循ほか

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2022年11月30日 AM10:17

IEDs、PDs、RDAなど異常脳波の有無により発作再発率を比較検討

国立循環器病研究センターは11月29日、脳卒中後てんかんにおける脳波所見とてんかん再発の関連を解明したと発表した。この研究は、同研究センター脳神経内科部長猪原匡史が代表を務める国内多施設共同研究(PROgnosis of Post-Stroke Epilepsy:PROPOSE)において、国循脳神経内科の阿部宗一郎医師、田中智貴医長、福間一樹医師、猪原匡史部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Brain communications」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脳卒中後てんかんは、脳卒中罹患後の主要な合併症の一つ。脳卒中後てんかんの再発は機能予後、生存率を悪化させるため、早期に治療介入し再発予防を行うことが重要だ。脳卒中後てんかんの再発にはいくつかの報告があるが、てんかん診療の大きな柱である脳波所見と再発の関連についてはあまり知られていなかった。そこで今回、研究グループは、脳卒中後てんかん患者の脳波所見について詳細に観察し、Interictal epileptiform discharges(IEDs)やPeriodic discharges(PDs)、Rhythmic delta activity (RDA)といった異常脳波所見とてんかん再発の関連について検討した。

今回の研究では、全国8施設(、神戸中央市民病院、熊本済生会病院、、中村記念病院、聖マリア病院、国立病院機構岡山医療センター、)において2014~2018年にかけて脳卒中後てんかんと初めて診断された症例において、前向きに1年間の発作再発、予後、抗てんかん薬の服薬状況を観察した。脳波所見については、IEDs、PDs、RDAといった異常脳波の有無により発作再発率を比較し、更にそれぞれの脳波の頻度や形、範囲などを詳細に検討した。

IEDs呈する群、呈さない群に比し有意にてんかん再発「多」

今回の研究では、国立循環器病研究センターに入院した191人とその他の施設に入院した201人が登録された。国立循環器病研究センターの症例で脳波検査が行われなかった4例を除いた187例の症例において、IEDsを48例(25.7%)、PDsを39例(20.9%)、RDAを12例(6.4%)に認めた。

IEDsを呈する群では、呈さない群に比し有意にてんかんの再発が多く見られた(調整ハザード比3.82倍, p<0.01)。PDsを呈する群では、呈さない群とてんかん再発率において有意差はなかったが(ハザード比1.67, p=0.12)、棘波や鋭波を呈するPDsはてんかん再発と関連する傾向が見られた(ハザード比1.85, p=0.08)。RDAはてんかん再発との関連は見られなかったという。高齢者、若年者、初発/再発てんかん、抗てんかん薬種類などで抽出した各サブループでもIEDsはてんかん再発の有意な危険因子だった。国立循環器病研究センター以外の他施設でのコホートでも、IEDsはてんかん再発と関連が見られた(p<0.05)。

再発予防への早期治療介入、治療効果評価で重要な知見に

脳卒中後てんかん診療において、発作再発リスクの高いIEDsの存在に気をつけ、適切な抗てんかん薬による治療をすることは、非常に重要であると考えられる。PROPOSE試験では新世代抗てんかん薬が旧世代抗てんかん薬と比較して、てんかん発作再発抑制、服薬継続率で有効性が高いという報告や発作再発を予防することが機能予後にも極めて大切である報告を行っている。同研究は、今まで報告が少なかった脳波所見と脳卒中後てんかん再発に関する報告だ。脳波所見は判読が難しく、これまで画一的な評価を行いにくい側面があったが、、てんかん専門診療に特化した医療機関が参加した国内多施設共同試験を行うことで、実臨床を反映した信憑性が高い結果が得られた。てんかん治療の柱の一つである脳波を詳細に観察した同研究結果は、今後の脳卒中後てんかんの再発予防に対する早期治療介入や治療効果を評価する上で重要な知見となると考えられる、と研究グループは述べている。

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