医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 小児の好酸球性胃腸炎に対し「Rainbow食事療法」を新たに開発-成育医療センターほか

小児の好酸球性胃腸炎に対し「Rainbow食事療法」を新たに開発-成育医療センターほか

読了時間:約 2分31秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年11月25日 AM11:11

小児患者の75%は炎症持続型、ステロイド以外の維持治療開発が望まれていた

国立成育医療センターは11月24日、好酸球性胃腸炎における新たな食事療法を開発したと発表した。この研究は、同センター好酸球性消化管疾患研究室の永嶋早織共同研究員、野村伊知郎室長らと、免疫アレルギー・感染研究部の松本健治部長、アレルギーセンターの大矢幸弘センター長、消化器科の新井勝大診療部長、栄養管理部の齊藤由理室長らによるもの。研究成果は「Allergology International」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

好酸球性消化管疾患は、慢性的な消化管の炎症性疾患であり、炎症がおきる部位に好酸球が集まって、はき気、嘔吐、腹痛、下痢、栄養吸収障害などの症状が現れる。好酸球性消化管疾患は、好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に分かれるが、欧米では食道炎の患者が圧倒的に多く、逆に日本では胃腸炎の患者が多いことが知られている。好酸球性胃腸炎の5〜17歳の小児患者は特に重症で、75%は数年から10年以上炎症が続く持続型である。また、70%が日常生活に制限がある。

好酸球性胃腸炎の治療法は、主に経口ステロイドの内服だ。効果は明らかだが、長期に続けると、成長障害などのさまざまな副作用が起きることがある。小児患者は成長発達において重要な年齢であることから、新たな寛解導入、維持治療の開発が望まれていた。

既存食事療法「エレメンタルダイエット」「6種食物除去」に課題

好酸球性食道炎には食事療法の効果があることがわかっている。重症者には、エレメンタルダイエット(アミノ酸栄養剤のみを摂取)や、6種食物除去(鶏卵、乳製品、小麦、肉類、魚介類、ナッツ類を除去)が行われる。このうち、エレメンタルダイエットはほとんどの患者が、つらくて続けることができないことがわかっている。6種食物除去は、継続できたとしても日本の好酸球性胃腸炎では効果がない患者が存在することが問題だった。

Rainbow食事療法、芋類、野菜、果物とアミノ酸栄養剤、特定の調味料だけを使用

厚生労働省の研究班が、食事療法を行った50人についてアレルギーを引き起こす原因食物を調査した結果、ほとんどの食物が、1人以上の患者で炎症を起こすことがあるとわかった。一方、芋類、野菜、果物によって非即時型反応が起きた患者は一人もいなかった。

このため、これらの食材と、、特定の調味料だけを使用した「Rainbow食事療法」を開発した。調味料は多くの食物加水分解物を含み、アレルギーを引き起こす可能性があるため、安全性を確認した7種類(塩、砂糖、醤油代替食品、スープの素、昆布液体だし、トマトケチャップ、ノンオイルドレッシング)のみに限定した。この治療法では、Rainbow食事療法で炎症をなくしてから、一つずつ食物を再導入して、安全な食物と原因食物を判定する。

Rainbow食事療法開始後に消化器症状が消失、好酸球数正常化などの改善

研究グループは、2~17歳の持続型の好酸球性胃炎、十二指腸炎患者7人にRainbow食事療法を実施した。2〜4週にわたる治療期間で、7人中6人はRainbow食事療法で提供される食事を摂取することができたが、1人は7日目に決められた食品以外の食品を加えることを希望したため治療期間を満了できず、途中離脱となった。

7人全員で、Rainbow食事療法開始後、消化器症状は消失、低下していた血清アルブミン値の正常化、増加していた血液中の好酸球数の正常化、上昇していた血清TARC値の正常化も見られた。また、栄養不足などの有害事象は認められなかった。

今回の研究で、安全性と忍容性が明らかとなった。「成長発達に重要な小児期において、多くの患者が長期間の消化器症状に悩まされている。今後、人数を増やして、効果の検証を行い、Rainbow食事療法のエビデンスを積み上げ、よりおいしい食品をつくれるよう改良を重ね、更に有用な療法にすることを目指す。免疫学的研究を進めて、原因食物特定検査法を開発することも検討している」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 平均身長の男女差、軟骨の成長遺伝子発現量の違いが関連-成育医療センターほか
  • 授乳婦のリバーロキサバン内服は、安全性が高いと判明-京大
  • 薬疹の発生、HLAを介したケラチノサイトでの小胞体ストレスが原因と判明-千葉大
  • 「心血管疾患」患者のいる家族は、うつ病リスクが増加する可能性-京大ほか
  • 早期大腸がん、発がん予測につながる免疫寛容の仕組みを同定-九大ほか