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手術予定の早期非小細胞肺がんに対する新たな遺伝子スクリーニングを開始-国がん

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2022年11月24日 AM11:03

治療成績向上に向け、手術前後に遺伝子変化に基づく治療の追加が検討されている

国立がん研究センターは11月18日、肺がん遺伝子スクリーニングネットワーク「」の新たなプロジェクトとして、2022年8月29日より、手術予定の早期非小細胞肺がん患者を対象にした遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-Advantage/MRD」を開始したと発表した。この研究は、同センター東病院の後藤功一呼吸器内科長(兼 LC-SCRUM-Asia研究代表者)らの研究グループによるもの。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

LC-SCRUM-Asiaでは、研究を開始した2013年2月から2022年8月までの約9年間で、1万7,000例を超える肺がん患者の遺伝子解析を行い、国内におけるさまざまな分子標的薬や遺伝子診断薬の開発、臨床応用に貢献し、進行非小細胞肺がんのゲノム医療を推進してきた。2020年からは、進行・再発非小細胞肺がん患者を対象に、薬剤耐性遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-TRY」も始動し、分子標的薬の耐性機序を明らかにして、薬物耐性を克服する新たな治療薬・診断薬の開発を推進している。

現在、早期(ステージ1、2、および3の一部)非小細胞肺がんに対する標準治療は手術である。国内における約2万例を対象とした肺がん手術例の検討では、手術前後に従来の点滴の抗がん剤治療を追加した場合でも、ステージ2や3の非小細胞肺がん患者の半数以上が再発し、5年生存率は40~50%と、大腸がん、胃がん、乳がんと比べて満足のいく治療成績が得られていない。そのため、遺伝子変化を有する進行非小細胞肺がんにおける分子標的薬の優れた効果をふまえて、最近では、早期非小細胞肺がんの手術前後に遺伝子変化に基づいた治療を追加し、治療成績の改善につなげる研究が行われている。しかし、遺伝子変化を有する早期非小細胞肺がんの特徴はまだ明らかではなく、十分な遺伝子解析も行われていない。そこで今回、LC-SCRUM-Asiaでは、早期非小細胞肺がんにおける遺伝子変化の特徴を明らかにすることを目的に、手術予定の早期非小細胞肺がん患者を対象にした新たな遺伝子スクリーニング研究「LC-SCRUM-Advantage/MRD」を計画した。

遺伝子解析により、手術前後の個別化医療を目指す

LC-SCRUM-Advantage/MRDでは、手術予定の早期非小細胞肺がん患者を対象にして、遺伝子変化のスクリーニングを行う。2022年8月29日より登録を開始し、5年間で約1万例の登録を目指す。遺伝子変化に基づく手術前後の個別化医療を目指すAdvantageにおいて、遺伝子スクリーニングには、複数の遺伝子変化を同時かつ迅速に調べることが可能なマルチ遺伝子検査を用い、Amoy Diagnostics社が開発したマルチPCR検査や、サーモフィッシャーサイエンティフィック社が開発した次世代シーケンサー(NGS)解析システム「on Torrent GenexusSystem/Oncomine Precision Assay (以下、Genexus/OPA)」を用いて遺伝子解析を行う。これら最新のマルチ遺伝子検査を用いることで、検体提出から1週間以内に遺伝子変化に関する情報を研究機関へ提供することが可能になる。もし、特定の遺伝子変化が見つかった場合、患者は、対応する分子標的薬の臨床試験への参加を検討できる可能性がある。

微小残存病変を検出するためのリキッドバイオプシー解析により、再発や治療効果の予測を検討

また、上記Advantageと同時に、手術、放射線治療、または薬物療法の治療予定の肺がん患者を対象にして、治療中や治療後、定期的に血液や尿を採取して遺伝子解析()を行い、患者さんの体内にまだ残っているだろうと想定される微小ながん病変(細胞)である微小残存病変(MRD)が存在するかを調べる。MRDの解析には、SeekIn社が開発した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を検査する技術やCraif社が開発した尿中マイクロRNAを検査する技術を用いる。最新技術により、MRDの評価が肺がん治療後の再発や治療効果予測につながるか検討するという。登録予定期間は、2022年8月29日~2027年8月末(5年間)、対象症例は主に手術予定の早期非小細胞肺がん、目標症例数は1万例で、解析方法は、AdvantageがAmoy Diagnostics社が開発した最新のマルチPCR検査、サーモフィッシャーサイエンティフィック社が開発したGenexus/OPAを用いたNGS解析、MRDはctDNAや尿中マイクロRNAを用いた解析が予定されている。予定参加医療機関は、国内約200施設で、施設情報は国立がん研究センター東病院のホームページ内にて順次公開予定であるという。

研究グループは、「今後も国立がん研究センター東病院は、日本およびアジアにおける肺がんの遺伝子スクリーニング基盤の構築を主導し、アジアにおけるゲノム医療の推進に取り組んでいく」と、述べている。

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