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夫婦間ストレスは本当に心臓に悪い?心筋梗塞経験者の追跡でわかったこと

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2022年11月10日 PM03:00

不幸な結婚生活は心筋梗塞後の回復の障壁に

結婚生活がうまくいかなくて心を痛めることがあるが、結婚生活の破綻は本当に心臓に悪いことを示唆する研究結果が明らかになった。心筋梗塞を経験した人のうち、夫婦関係でストレスを抱えている人は、その後の回復状態の悪いことが、米イェール大学公衆衛生大学院のCenjing Zhu氏らの研究で示された。Zhu氏は、「夫婦間ストレスは、心筋梗塞発症後1年以内の転帰不良に独立して関連していることを、われわれは突き止めた」と説明している。この研究結果は米国心臓協会()学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表された。


画像提供HealthDay

Zhu氏らは今回、2008~2012年に心筋梗塞の治療を受けた18~55歳(平均年齢47歳)の米国の成人1,593人のデータを分析した。研究参加者の居住地は全米30州に分布しており、全ての参加者に配偶者またはパートナーがいた。参加者は夫婦間ストレスの評価に用いられる17項目の質問票Stockholm Marital Stress Scaleに回答。その結果に基づき、夫婦間ストレスの程度を、軽度またはストレスなし、中程度、重度の3段階に分類した上で、最長で1年にわたって健康状態を追跡調査した。

その結果、夫婦間ストレスが軽度あるいは全くない人と比べて重度の人では、心筋梗塞発症後1年間に胸痛が再発するリスクが67%高いことが示された。また、重度の夫婦間ストレスがある人では、あらゆる原因による再入院のリスクが約50%高かったほか、QOLや身体的および精神的な健康状態の悪化も認められた。例えば、夫婦間ストレスが軽度あるいは全くない人と比べて重度の人では、12項目の質問で構成される評価尺度(SF-12)の点数が、精神的側面の項目で約2.6点、身体的側面の項目で約1.6点低かった。このほか、夫婦間ストレスを報告した人は男性よりも女性の方が多いことも明らかになった(男性:10人中3人、女性:10人中約4人)。

この研究には関与していない、米ニューヨーク大学グロスマン医学部のNieca Goldberg氏は、「人間関係が人々の健康状態に与える微妙な影響を明らかにする一助となる研究結果だ」とコメント。また、「結婚に関する先行研究では、パートナーがいない人よりもいる人の方が心臓の健康状態は良好であったことが明らかにされている。それに対して、今回の研究は、夫婦関係の質、そして夫婦間に存在する重度のストレスが及ぼす影響を調べたものだ」と解説している。

Goldberg氏は、夫婦間ストレスが心筋梗塞後の回復に影響を与えていると考えられる人たちは、「カウンセリングを受け、ストレスや不安、抑うつを軽減するための助けを得る必要がある」と話す。同氏は、「夫婦関係の悪化による緊張感は、血圧の上昇を招くなど、確実に心血管のリスク因子に悪影響を与える。大きなストレスや不安がある人の場合、それによって治療レジメンや生活習慣プログラムに従うことが難しくなる」と指摘している。また、AHAによると、ストレスはエネルギーを低下させ、回復に必要な睡眠を奪うほか、不整脈や高血圧、消化器の異常、炎症、心臓への血流の低下などにも関連しているという。

さらにGoldberg氏は、「パートナーとうまくいっていないと、心筋梗塞の発症という人生の一大事に必要なサポートを得られない可能性もある」とも話す。「もし心筋梗塞を起こした場合、治療レジメンに従うとともに、食習慣の改善や禁煙など、生活習慣を是正する必要が生じる。しかし、周りの人たちの協力がないと、そうした是正を行うのは困難だ」と同氏は言う。

Zhu氏とGoldberg氏は、回復期の心筋梗塞患者の診療に関わる医師たちは、身体的な健康状態だけでなく、精神的および情緒的な健康状態にも注意を払う必要があるとの見解を示している。

なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年10月31日)

▼外部リンク
Marital stress linked to worse recovery after heart attack

HealthDay
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