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2型糖尿病、毎日実践することでHbA1cがより低下することが判明した行動は?

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2022年10月28日 PM12:00

ヨガや瞑想などで血糖コントロール改善の可能性

ヨガや瞑想などが、2型糖尿病患者の血糖コントロールに役立つ可能性が報告された。その血糖降下作用は、メトホルミンなどのよく使われている血糖降下薬に匹敵するほどだという。米南カリフォルニア大学(USC)ケック医学校のFatimata Sanogo氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Integrative and Complementary Medicine」に9月7日掲載された。ただしSanogo氏は、「この研究結果は、薬物療法などの糖尿病の標準治療に替えて瞑想をすべきだという意味ではない。現在継続している標準治療に、上乗せして実践してみる価値のあることを示すものだ」と正しい理解を求めている。


画像提供HealthDay

米国立衛生研究所(NIH)のデータによると、米国内だけで3700万人以上の糖尿病患者が存在し、その大半が2型糖尿病だ。2型糖尿病は、糖を細胞に取り込む際に必要なインスリンの作用が低下して発症する。その結果、糖が血液中に蓄積し、その状態が長期間続くと血管や神経がダメージを受ける。糖尿病患者の多くは、心臓病、腎臓病、足の神経障害、失明の可能性のある網膜症などの合併症を発症する。

それら合併症のリスクを抑制するには、血糖値をコントロールすることが重要だ。ただ、既に多くの血糖降下薬があるにもかかわらず、一般的なコントロール目標(7%未満)を達成しているのは患者の半数に過ぎない。この現状から、Sanogo氏は「治療に利用可能な全てのツールを試みる価値があるのではないか」と話す。また、ヨガのインストラクターでもある同氏は、「ヨガや瞑想、マインドフルネスの血糖値への影響に関する、これまでのエビデンスを掘り下げたかった」と、この研究の動機を語っている。

この研究のためにSanogo氏らは、既報文献からエビデンスを構築する、システマティックレビューとメタ解析という手法を用い、28件の公開された臨床試験の結果を統合して解析した。解析対象研究の多くはヨガの影響を検討したもので、そのほかに、気功、瞑想、マインドフルネスなどの影響も評価されていた。

それらの研究全体で、研究参加者のHbA1cは平均0.84%低下していた。この低下幅は、血糖降下薬であるメトホルミンで示されている効果(およそ1%)に近いものだった。論文の上席著者である同大学のRichard Watanabe氏は、「示された影響はかなりのものだ。一般的には、ヨガなどにこれほど大きな影響があるとは考えられていなかったのではないか」と述べている。なお、ヨガに関しては行う頻度が重要であって、ほぼ毎日実践することでHbA1cがより大きく低下することが分かった。

なぜ、ヨガやマインドフルネスなどが血糖コントロールに役立つのだろうか? メカニズムは明らかでないが、ストレスの軽減に関連していると考える研究者が多い。ストレスが解消されると、糖尿病管理に求められる毎日の行動の負担感が減って行いやすくなり、また、ストレスホルモンの低下によって全身の炎症反応が抑制されて、血糖値が低下する可能性があるという。

米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・メディカル・アソシエイツのEliud Sifonte氏は、「糖尿病患者が薬物療法以外の血糖コントロール法に興味を持つのはよくあることで、それを試みることは合理的とも言える」と語る。ただし、食事や運動というライフスタイルの改善を基本とし、かつ自分にあったマインドフルネスの方法を見つけることを注意点として挙げている。後者の注意点については、例えばヨガ一つとっても、「静的なものから動的なものまで、さまざまなタイプがある」と、同氏は話す。

なお、Sanogo氏は、マインドフルネスなどには副作用のような心配はあまりないものの、アクセスが限られる場合があるという。特に受講コストが障害になることがあるとのことだ。同氏は、「ネット上には無料で指導を受けられる情報がたくさんある」とし、それらの活用を勧めている。(HealthDay News 2022年10月5日)

▼外部リンク
Mind- and Body-Based Interventions Improve Glycemic Control in Patients with Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-Analysis

HealthDay
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