鼻洗浄で新型コロナ感染後の重症化リスクが低減か
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した人が、生理食塩水を用いた鼻洗浄を1日2回行うと、入院および死亡のリスクが有意に低減する可能性のあることが新たな研究で報告された。米オーガスタ大学医学部救急医療学科長のRichard Schwartz氏らが実施したこの研究の詳細は、「Ear, Nose & Throat Journal」に8月25日掲載された。
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Schwartz氏らは今回の研究を実施した背景について、「体内に存在するウイルスが多ければ多いほど、影響も大きくなる。このことからわれわれは、新型コロナウイルス検査で陽性の判定が出てから24時間以内にウイルスの一部を洗い流すことができれば、重症化のリスクを下げることができるかもしれないと考えた」と説明する。
また、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質は、細胞表面のACE2受容体に結合して細胞内に侵入することが明らかにされている。研究グループによると、生理食塩水による鼻洗浄は、新型コロナウイルスのACE2受容体への強固な結合を減弱させるのに役立つ可能性があるという。
今回の研究は、2020年9月24日から12月24日の間に実施された新型コロナウイルスのPCR検査で陽性が判明してから24時間以内に登録された、55歳以上のハイリスク患者79人を対象に実施された。対象者は、14日にわたって1日に2回、消毒薬のポビドンヨード(37人)または重曹(炭酸水素ナトリウム、42人)のいずれかを混合した240ccの生理食塩水で鼻洗浄を行う群にランダムに割り付けられた。対象者の平均年齢は64歳で、女性が46%、非ヒスパニック系の白人が71%を占め、平均BMIは30.3であった。主要評価項目は、試験登録後28日以内のCOVID-19による入院または死亡とし、米疾病対策センター(CDC)が公表しているデータ(COVID-19 Case Surveillance Public Use Data)で確認された、同期間内に新型コロナウイルス陽性が判明した50歳以上の人(対照群)と比較した。
その結果、入院を要した対象者は、ポビドンヨード群で1人、重曹群で0人であり(1.27%)、死者はいなかった。これに対して対照群では、9.47%(28万533/296万2,541人)が入院し、また入院に関するデータが不明な人のうち4万4,773人(1.5%)が死亡していた。このことから、対照群の入院または死亡のリスク(11%)は鼻洗浄をした群の8.57倍であると計算された。さらに、生理食塩水による洗浄で症状の程度も抑えられるようであり、1日2回の洗浄をきちんと実施していた患者では症状の消失も早かった。
研究グループは、「11%から1.3%への低減は、2021年11月の時点であれば、米国で入院を要した高齢者の絶対数が100万人以上減ることに相当する」と結論付け、「この知見が他の研究でも裏付けられれば、世界的に重症者や死亡者を大幅に減らせる可能性がある」と付け加えている。
なお、研究グループによると、この研究で用いられた鼻洗浄は家庭でも実施可能だ。その方法は、煮沸した水または蒸留水1カップに塩と重曹をそれぞれ小さじ半分入れた液を用いて、鼻洗浄ボトルで鼻腔を洗い流すというものだ。
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・Rapid initiation of nasal saline irrigation to reduce severity in high-risk COVID+ outpatients
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