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「地球温暖化」のせい?現代の子どもが親の子ども時代より健康ではない可能性

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2022年08月22日 PM03:30

地球温暖化で子どもたちの健康が害されている

現在の子どもたちは、親が子どもだったころほど身体的に健康ではなく、地球温暖化がさらに子どもたちに害を及ぼす可能性があるとするレビュー論文が、「Temperature」に8月4日掲載された。リュブリャナ大学(スロベニア)のShawnda Morrison氏によるもので、暑熱環境による子どもたちの身体活動の変化などを検討した、150件以上の研究報告をまとめたもの。


画像提供HealthDay

環境運動生理学を専門とするMorrison氏は、極端な環境へ人がどのように適応するのかという研究をしている。「健康な成人は、生理的、行動的、心理的な対処を組み合わせることによって、より高い気温にも耐えることができる。一方で地球の温暖化の進行とともに、子どもたちはかつてないほど体調を崩しやすくなっている。現在では、子どもたちが楽しみながら体を動かし、毎日、身体活動を維持していくように奨励することが不可欠だ。身体活動や運動を、子どもたちが『仕事』や『雑務』のように感じてしまうような接し方は避けてほしい」と同氏は語っている。また近年、世界の多くの国々で小児肥満の増加や子どもの運動不足が問題になっているが、同氏によると、肥満や運動不足は、脱水や熱中症など、暑熱環境に関連した健康問題を引き起こす危険性を高める可能性があるという。

Morrison氏がレビューした研究報告の中には、タイの5~12歳の子どもたち457人を対象に行った研究が含まれていた。その研究では、肥満傾向のある子どもが屋外で運動した場合、鼓膜温が38℃以上になる割合が普通体重の子どもの2.1倍多いという結果が報告されていた。米国で実施された別の研究からは、気温の高い日には小児病院を救急受診する子どもの人数が増加し、特により年少の子どもでは、緊急治療を要するケースが多いことが報告されていた。

子どもの有酸素運動能力は、1958~2003年にかけて年率-0.36%ずつ低下したというデータも見つかった。過去30年間にわたり、子どもたちの身体活動量は世界的に急速に減少してきており、(WHO)が推奨する「毎日少なくとも60分の中~高強度の身体活動」を行っている子どもは少数派だ。さらに新型コロナウイルス感染症のパンデミックがその傾向に拍車をかけている。

また、温暖化が進み、保護者が「屋外は暑すぎて遊ぶには適切でない」と判断する日が増加した場合、子どもが最低限の身体活動量を満たせなくなる確率が高まる。さらに別の研究によると、気温の上昇は、新たな感染症の発生を引き起こす可能性があるという。地球温暖化のせいで起こり得る将来の感染症アウトブレイク抑止のために、外出制限などによって運動の機会が失われた場合、子どもの体力に取り返しのつかない影響を与えることも考えられる。

その上、子どもは単に「小さな大人」ではない。Morrison氏は、「子どもたちが深部体温を維持する方法は成人と異なる。子どもは成人よりも発汗が少なく、皮膚への血流を増やすことで熱を下げようとする」と説明する。ただし、身体を高温に適応させる暑熱馴化の方法に関する研究は、その大半が成人を対象に行われてきており、「子どもでの研究はごく限られている」とのことだ。

Morrison氏は、子どもたちが体を動かしたくなるような活動を提案している。例えば、フットボール、バスケットボール、野球などのスポーツと、友人や家族との遊びを組み合わせたものだ。できる限り屋外で行った方が良い。研究によると、学校での体育の授業は、子どものフィットネスレベルを高め、生涯にわたって運動を続けるための、最良かつ最も費用対効果の高い方法であることが示されている。ただし、学校に通う子どもだけでなく、家族ぐるみで活動的な生活スタイルに変えることを同氏は勧める。

「家族全員で自転車に乗ったり、ローラースケートを楽しんだり、森の中を散策したり、犬の散歩をしたり、好きなことをしてほしい。重要なことは、暑さを完全に避けて運動をしないのではなく、例えば朝や夕方などの比較的暑さが和らぐ時間帯を選択して身体活動を続けることだ。地球温暖化が進行中ではあるが、われわれは自分の健康を自分で維持していかなければならないのだから」とMorrison氏は語っている。(HealthDay News 2022年8月8日)

▼外部リンク
Moving in a hotter world: Maintaining adequate childhood fitness as a climate change countermeasure

HealthDay
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