医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 海外 > 新型コロナ罹患後の重症化リスクに、意外な生活環境が絡んでいる可能性?-米報告

新型コロナ罹患後の重症化リスクに、意外な生活環境が絡んでいる可能性?-米報告

読了時間:約 2分57秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年08月10日 PM02:30

子どもがそばにいるとCOVID-19が重症化しにくい可能性

家庭内に小さな子どもがいる場合、(COVID-19)に罹患した際に重症化しにくい可能性を示唆するデータが報告された。米カイザーパーマネンテ北カリフォルニア病院のMatthew Solomon氏らの研究によるもので、詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に7月27日掲載された。


画像提供HealthDay

子どもはしばしば幼稚園や学校で風邪をうつされ、帰宅後に家族に感染させる。風邪の多くはコロナウイルスによるものであるため、このような経路で成人が軽度の風邪に繰り返し感染した場合、それがCOVID-19の重症化を防ぐように働くのではないかという仮説が存在する。Solomon氏は、「そのような仮説は多くの人の支持を集めている。われわれは、仮にそれが正しいとすれば、そのシグナルを既存のデータベースの中から見つけ出せるのではないかと考えた」と話す。そして得られた結果から、「この研究は、風邪をひくことがCOVID-19重症化から身を守ってくれることの証明にはならない。しかし、さらに研究を進める価値はあることが示された」と述べている。

Solomon氏らはこの研究に、カリフォルニア州を中心に医療機関を展開しているカイザーパーマネンテの医療保険データベースを用いた。2019年2月~2021年1月にわたり継続的に保険へ加入していた成人312万6,427人を、子どものいる群(子どもの年齢が0~5歳、6~11歳、12~18歳の3群)と子どものいない群の計4群に分類。年齢、性別、人種/民族、BMI、併存疾患・疾患重症度、剥奪指数などを傾向スコアによりマッチさせた上で、COVID-19罹患や重症化リスクを比較検討した。

解析の結果、子どものいない成人は0~5歳の子どものいる成人に比べて、COVID-19に罹患した際に重症化するリスクが高いことが示された。例えば、発症後に入院を有するリスクは49%有意に高く〔発生率比(IRR)1.49(95%信頼区間1.29~1.73)〕、ICU入室に至るリスクは76%有意に高かった〔IRR1.76(同1.19~2.58)〕。ただし、COVID-19罹患率は子どものいない成人の方が有意に低かった〔IRR0.85(0.83~0.87)〕。

なお、6~11歳または12~18歳の子どものいる成人の感染リスクは、0~5歳の子どものいる成人より有意に高かった〔子どもが6~11歳でIRR1.09(1.05~1.12)、12~18歳でIRR1.09(1.05~1.13)〕。重症化リスクに関しては有意差がなかった。

本研究の解析対象データは、COVID-19ワクチンが利用可能になる前のものであるため、ワクチン接種が行き渡ったことの影響は把握できていない。またSolomon氏は、「子どもから風邪をうつされたことがあるからといってCOVID-19に感染しないわけではない。身を守る最良の手段はワクチン接種だ。われわれの研究結果は、科学が解明しようとしている非常に大きなテーマのごく一部を明らかにしただけだ」と語っている。

本研究には関与していない米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのMarc Siegel氏は、「ある種のコロナウイルスに感染することが、別のコロナウイルスへの感染に対して保護的に働くという考え方は新しいものではない。報告された研究結果も、そのような考え方が真実である可能性を示す複数の研究のうちの一つだ」と解説する。そして、この研究が、「風邪に罹患すればCOVID-19にかからないことを意味するのではなく、COVID-19罹患時に重症化する確率が低い可能性を示したにとどまる」と述べ、拡大解釈しないように注意を促している。さらに同氏は、「本研究の結果が現在主流となった、より感染力の強いオミクロン株にも同じように当てはまるとは言えない」としている。

Siegel氏は、「最善の方法は、自分がCOVID-19のワクチン接種を受け、子どもたちにも受けさせることだ」と強調。その上で、「さまざまなコロナウイルスへの曝露は、COVID-19罹患時に重症度を軽減する程度の免疫能を得るのに役立つ可能性がある。ワクチン接種と過去のコロナウイルスへの感染の組み合わせは、重症化を抑えるための良いカクテルなのかもしれない」と語っている。(HealthDay News 2022年8月1日)

▼外部リンク
Risk of severe COVID-19 infection among adults with prior exposure to children

HealthDay
Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved.
※掲載記事の無断転用を禁じます。
Photo Credit: Adobe Stock
このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 海外

  • GLP-1受容体作動薬使用者の56%で術前に多量の胃残留物、GL推奨の絶食時間は不十分?
  • 世界の肥満人口がついに10億人突破か、小児でも1億5000万人以上と推定-英研究
  • アレルギー性鼻炎と思って受診した患者の約50%に慢性副鼻腔炎?米国の診断実態とは
  • 未就学児の言語能力向上に「親が思い出話をすること」が影響?-米研究
  • 「ゾレア」の食物アレルギーへの適応拡大を米FDAが承認、臨床試験の結果は?