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人間の皮膚で暮らす「ニキビダニ」が絶滅危機に?ゲノムシーケンシングでわかったこと

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2022年07月04日 PM01:45

人間の顔の皮膚に生息する小さなダニが絶滅の危機に?

人間の皮膚には数えきれないほどの小さなダニが暮らしていて、交尾もしている。気持ちが悪いと思う人もいるかもしれないが、これは真実だ。ただし、心配する必要はない。人間の皮膚で暮らすニキビダニ(、Demodex folliculorum)と呼ばれるダニは、毛穴を清潔に保ち、皮膚の健康維持に貢献してくれている。ところが、これらの頼りになるダニが絶滅の危機に直面している可能性のあることが、英レディング大学のAlejandra Perotti氏らの研究から明らかになった。研究結果は、「Molecular Biology and Evolution」に6月21日発表された。


画像提供HealthDay

ニキビダニは体長が0.3mm前後で、顔面やまつ毛の毛包に生息している。90%以上の人がニキビダニと平和な共存関係を築いている。ニキビダニの生存期間は約2週間で、日中は毛穴の中で過ごし、夜間に孵化や移動、食事、交尾などを行う。顔面に生息するニキビダニの数は、皮脂の分泌量が最も多い20代から30代にかけてピークを迎える。Perotti氏によると、ニキビダニは皮膚の毛穴の状態を良好に保つ役割を果たしており、免疫が抑制された状態にある人や皮膚疾患のある人などを除けば、健康にとって問題になることはないという。

Perotti氏らは今回、ニキビダニについてさらに解明を進めるため、一人の人の額や鼻から毛穴吸引器で採取したニキビダニを調べた。まず、顕微鏡でそれらが本当にニキビダニであるかどうかを確認した上で、ゲノムシーケンシングを実施した。

その結果、外敵のいない孤立した環境に身を置いていたことが原因で多くの不要な遺伝子や細胞が取り除かれ、ニキビダニは驚くほど単純な生物へと進化を遂げていたことが明らかになった。例えば、ニキビダニの8本の脚は3つの単核細胞の筋肉のみで動いていることや、生存に必要なタンパク質の種類は近縁種の中で最も少ないことなどが明らかになった。

また、進化に伴う遺伝子の減少は、ニキビダニが夜行性である理由の一つであることも分かった。ニキビダニは紫外線から身を守ることができず、太陽の光で目覚めるための遺伝子も持っていない。また、小型の無脊椎動物の夜間の行動を促し、人間を含む哺乳類には眠気をもたらすメラトニンと呼ばれる物質を産生することもできない。その代わり、夜間の活動のために、すみついている人間のメラトニンを使うことはできるという。さらに、過去の研究では、ニキビダニには肛門がなく、2週間の生存期間中に糞便が体内に蓄積され、死を迎えたときにそれが放出されて皮膚の炎症が起こると考えられてきた。しかし、今回の研究ではニキビダニには肛門があることが確認された。

Perotti氏らは、進化を通じて人間への依存度が高くなり、他の宿主のダニと出会う機会がないことなどから、ニキビダニは絶滅に向かっている可能性があるとの見方を示している。ただ、これらのダニたちが外部寄生虫から内部共生者に変化すれば生き延びる可能性はあるという。内部共生者とは完全に宿主に頼って生きている生物を指す。例えば、腸内細菌は人間の内部共生者である。

Perotti氏は、「断言できるわけではないが、おそらくニキビダニがいなくても、われわれには問題はないだろう。とはいえ、ニキビダニはわれわれの皮膚を健康に保ってくれているため、われわれとともに生きていてほしい」と話している。(HealthDay News 2022年6月22日)

▼外部リンク
Human Follicular Mites: Ectoparasites Becoming Symbionts

HealthDay
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皮膚上のニキビダニ Photo Credit: University of Reading
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