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パーキンソン病、2年後の症状進行を予測する4つの腸内細菌を同定-名大ほか

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2022年06月03日 AM11:00

パーキンソン病患者の腸管神経叢に高頻度でα-シヌクレイン異常凝集体が蓄積

名古屋大学は6月2日、パーキンソン病患者165人を2年間フォローアップし、研究開始時の腸内細菌叢から2年後の症状進行を予測するランダムフォレストモデルを作成し、早期パーキンソン病患者で短鎖脂肪酸産生菌が少ない患者あるいはムチン分解菌の多い患者で症状が早く進行することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科神経遺伝情報学の大野欽司教授、オミックス医療科学の平山正昭准教授、神経内科学の勝野雅央教授、神経遺伝情報学助教の西脇寛助教、岩手医科大学脳神経内科・老年科の前田哲也教授、岡山脳神経内科クリニックの柏原健一院長、福岡大学医学部脳神経内科の坪井義夫教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「npj Parkinson’s Disease」の電子版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン産生神経細胞にα-シヌクレインが異常凝集することによって引き起こされる。α-シヌクレイン異常凝集体は、腸管神経叢から始まり中脳黒質まで上行することが次の4つの事実から明らかにされてきた。

はじめに、α-シヌクレイン異常凝集体はプリオンのように正常のα-シヌクレインを異常凝集させて異常を伝播させることが明らかにされている。次に、便秘、レム睡眠行動障害、鬱がパーキンソン病の運動症状が始まるそれぞれ20年、10年、5年前から起こることが知られており、α-シヌクレイン異常凝集体の上行に一致している。第3に、迷走神経切除術を受けた人はパーキンソン病になる確率が半減する。最後に、パーキンソン病患者の腸管神経叢には高い頻度でα-シヌクレイン異常凝集体が蓄積している。

パーキンソン病患者の腸内細菌に関して20の既報研究、進行予測に応用できるか検討

疫学研究の結果から年齢が高いこと、男性であること、認知機能が低下していること、歩行障害が強いことはパーキンソン病の早期進行を予測することが知られている。

現在までに、20報のパーキンソン病患者の腸内細菌についての研究報告がある。研究グループは2020年に5か国のパーキソン病患者の腸内細菌叢メタ解析を行ってムチン分解菌Akkermansia属の増加と短鎖脂肪酸産生菌の減少を明らかにした。また、過去にパーキンソン病患者の症状進行と個別の菌種の関係を調べる縦断的研究がフィンランドで行われており、Prevotellaの減少と症状進行との関連が示されていた。

そこで、研究グループは、2年後のパーキンソン病患者の症状進行を腸内細菌叢で予測することができるかどうか調べた。まず、パーキンソン病患者165人を2年間フォローアップして、腸内細菌叢と症状の進行の関係を明らかにするために研究開始時の腸内細菌叢から2年後の症状進行を予測するランダムフォレストモデルを作成した。そして、パーキンソン病の重症度を確立された手法により5段階に分けて評価した。

「2年以内に重症度第1段階の患者の症状進行」、正答率79.2%で予測

まず、データサイエンスが推奨する入れ子交差検定(nested cross-validation)により研究方針が正しいことを確認した。入れ子交差検定によって腸内細菌叢が5段階中第1段階の早期パーキンソン病患者の症状進行を正答率79.2%で予測した。第2段階、第3段階と進むにつれてパーキンソン病患者の症状進行の腸内細菌叢による予測の性能は落ちた。

腸内細菌叢を使ったモデルと対照的に、31種類の臨床データを使ったモデルでは第3段階の中期パーキンソン病患者の症状進行を正答率66.1%で予測し、第2段階、第1段階の早期パーキンソン病では臨床データによる予測の性能が落ちた。

4つの菌の異常を持つパーキンソン病患者は早期に進行する可能性

短鎖脂肪酸産生菌であるFusicatenibacter属、、Blautia属の低下と、ムチン分解菌であるAkkermansia属の増加が、パーキンソン病の早期進行予測に関わることがわかった。短鎖脂肪酸の減少は中枢神経において炎症を起きやすくし、αシヌクレインの異常凝集につながる可能性が示されてきた。Akkermansia属の増加は腸管壁ムチン層を破壊し、腸管壁透過性が上昇して腸管神経叢におけるαシヌクレインの異常凝集につながる可能性が示唆された。

これらの菌は2020年に研究グループが行った5か国のパーキンソン病患者の腸内細菌叢メタ解析でも健常者とパーキンソン病を分ける重要な細菌だった。、Faecalibacterium属、Blautia属はパーキンソン病の進行とともに減少し、Akkermansia属はパーキンソン病の進行とともに増加した。しかし、これら4つの菌の量は3悪化群において2年間で変化しなかった。従って、これら4つの菌の異常を持つパーキンソン病は早期に進行する可能性が示された。

腸内細菌叢を正常化や不足する腸内代謝産物を補う治療介入に期待

早期パーキンソン病患者でムチン分解菌であるAkkermansia属の増加、短鎖脂肪酸産生菌であるFusicatenibacter属、Faecalibacterium属、Blautia属の減少が症状進行を加速させる可能性を示した。「今後は早期パーキンソン病患者で腸内細菌叢を正常化する、あるいは不足する腸内代謝産物を補う治療介入を行うことで症状進行を遅らせるような基礎研究・臨床研究に繋げていくことが期待される」と、研究グループは述べている。

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