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ニキビ患者は推奨値より「オメガ3脂肪酸」の血中濃度が低い-ドイツの研究

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2022年05月30日 PM04:30

オメガ3脂肪酸がニキビに効く?

米国には5000万人のニキビ患者がいるとされる。人によってはニキビを恥ずかしいと感じたり、ときには痛みの症状を伴うことがある。このようなニキビに対する新たな治療法につながる研究結果が、欧州皮膚科学・性病学アカデミー(EADV)春季シンポジウム(5月12~14日、スロベニア・リュブリャナ)で発表された。この新しい治療法には、副作用の懸念がないという。


画像提供HealthDay

ルートヴィヒ・マクシミリアン大学(ドイツ)のAnne Gürtler氏らは、ニキビ患者100人を対象に血液中の栄養関連指標を検討。その結果、患者の約94%は、魚油やナッツ類に豊富に含まれている脂肪酸であるオメガ3脂肪酸()のレベルが、推奨される値よりも低いことが明らかになった。また、ニキビの生成を刺激することが知られている、インスリン様成長因子-1(IGF-1)のレベルが高かった。

本研究には関与していない、米国アーカンソー州の皮膚科医であるSandra Johnson氏はこの研究発表について、「非常に興味深い報告だ。われわれはニキビに有効な治療法を既に手にしているが、それらはコストがかかり、潜在的な副作用のリスクを伴う。それに対して食事療法は、より自然でリスクが少なくコストもかからない」と評価する。

Gürtler氏らの研究では、大半のニキビ患者のω3FAレベルが推奨される値を8~11%下回っていた。一方、ω3FAレベルが高い人は普段、ひまわり油を控え、ひよこ豆やレンズ豆を習慣的に食べていた。ひまわり油の過剰摂取はニキビを悪化させることが、過去の研究で示されている。Gürtler氏によると、ω3FAは抗炎症作用のあるプロスタグランジンE1やE3、およびロイコトリエンB5の生成を刺激し、IGF-1のレベルを下げることによって炎症を軽減するという。

IGF-1は、ニキビを誘発することが知られている。Gürtler氏らの研究からは、ω3FAレベルが低い患者は、IGF-1のレベルが高いことも示された。またω3FAレベルが極めて低い一部の患者は、IGF-1レベルが特に高かった。これらの研究結果を基に同氏は、「臨床医は、ニキビ治療の最新のアプローチの一つとして、食事の選択に関する情報を患者に提供する必要がある」と述べている。

なお、Johnson氏によると、ニキビに対する食事の影響はこれまでにも長年調査されてきたという。しかし、このテーマの研究には資金が十分集まらず、質の高い研究が少なかったとのことだ。本研究でニキビとの関連が示されたω3FAのほかには、グリセミック指数の高い食品、肥育ホルモンが使われている食肉、乳製品などについて、ニキビリスクを高める可能性を示唆する研究報告があるという。

米国ニューヨーク市の皮膚科医であるDebra Jaliman氏は、「ニキビの治療に際しては、患者が使っているスキンケア用品とともに、食事の好みについても把握するようにしている」と話す。Jaliman氏も本研究には関与していない。同氏は、「ω3FAはわれわれの食事において非常に重要な栄養素であり、多くの健康上のメリットと関連がある。今回の発表は観察研究のため、食事以外の因子が結果に関与している可能性もあるが、実際にω3FAには効果があるのではないか」と語っている。

ただ、研究者らは、血液中のω3FAレベルが低いニキビ患者にはω3FAサプリメントが有効と判断するのは、時期尚早であるとする。有効性を確かめる介入試験がまず必要とされる。またJohnson氏は、「ω3FAの潜在的な副作用リスクと、最適な投与量を確認する必要がある」と指摘している。Jaliman氏も「よりサンプル数の大きい研究が必要だ」と語る。ただ、同氏は「ω3FAサプリではなく、ω3FA含有量の高い食品を積極的に食べたとしても、それによる有害事象の心配はない」と話している。

なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2022年5月18日)

▼外部リンク
Dermatologists in Germany have identified what could be a crucial link between acne and a deficit of omega-3 fatty acids

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