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ALS診断の新規バイオマーカー「TDP-43」を発見-広島大ほか

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2022年05月26日 AM11:30

病理解剖症例の骨格筋組織で、ALS関連タンパク質発現を病理学的に評価

広島大学は5月24日、)患者の骨格筋での異常に関する研究を行い、ALS患者ではALS診断基準を満たす以前から、骨格筋内にある筋内神経束にタンパク質TDP-43が異常蓄積することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科の丸山博文教授、国立病院機構呉医療センター脳神経内科(広島大学原爆放射線医科学研究所)の倉重毅志医師、徳島大学大学院医歯薬学研究部の森野豊之教授(2021年5月まで広島大学在籍)、和泉唯信教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Neurology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ALSは、運動ニューロンが変性して筋萎縮と筋力低下を来す進行性の病気。個人差はあるものの、人工呼吸器を使用しなかった場合には発症後2~5年で死に至る。これまでに治療薬としてリルゾール(経口薬)、(点滴注射薬)が保険収載されているが効果は限定的であり、初発症状を見逃さずにいかに早く治療・ケアを開始するかが重要となる。

ALSは手足の筋力低下、しゃべりにくさ、飲み込みにくさなどで初発する。ALSを診断するためのバイオマーカーは確立されておらず、同じような症状の病気はALS以外にもあることから、ALSの診断のためには他の病気がないことを確認する必要がある。また、ALSは腰椎症、すべり症、腰部脊椎管狭窄症、頸椎椎間板ヘルニア、靱帯骨化症などを合併していることが多いことから、脳神経内科以外の診療科を受診する患者が多いという現状がある。そのため、ALSの診断までに時間を要することが珍しくなく、ALSの進行が速いことも相まって、診療上の大きな問題となっている。

今回の研究では、まず、病理解剖症例(ALS症例10例、非ALS症例12例)の骨格筋組織で、ALSに関連していることが知られているタンパク質の発現を病理学的に評価。さらに、その結果を基に、過去に筋生検を実施した症例のうち、筋疾患と診断されなかった114症例について、タンパク質の発現と生検前後の経過を解析した。

ALSでは骨格筋内の筋内神経束にTDP-43が蓄積

まず、病理解剖症例での検討では、ALS症例の骨格筋内にある筋内神経束にTDP-43が蓄積しており、非ALS症例においてTDP-43は認めなかった。また、TDP-43以外のALSに関連したタンパク質の蓄積はALS・非ALSともなかった。

ALS診断基準を満たさない・TDP-43陽性筋内神経束認める症例、最終的にALSと診断

筋生検症例では、筋内神経束を含んでいた71例のうち、TDP-43を筋内神経束に認めた33例は全例が最終的にALSと診断されていたが、筋内神経束にTDP-43がなかった38例は全例がALSを発症していなかった。生検筋内に筋内神経束を認めなかった43例では3例のみがALSと診断されていた。

筋生検時の症状をゴールドコーストALS診断基準で分類したところ、ALSの診断基準を満たさない症例であってもTDP-43陽性の筋内神経束を認める症例は最終的にALSと診断されていた。

末梢神経でのTDP-43凝集による障害阻害のALS新規治療法開発につながる可能性

同研究の結果から、TDP-43陽性の筋内神経束はALSに極めて特異的に認められ、これまで知られていなかったALSの重要な病理学的特徴と考えられる。今後さらに症例数を増やして確認する必要があるとした上で、研究グループは臨床的に強く求められていたALS早期診断のための有用な診断バイオマーカーであると考えているという。

また、末梢神経の一部である筋内神経束の異常が明らかになったことから、末梢神経でのTDP-43凝集による障害を阻害するALSの新しい治療法開発につながる可能性がある、としている。

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