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コロナ後遺症に慢性炎症が関与?退院時ステロイド処方の有無で予後に有意差

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2022年05月23日 PM02:30

COVID-19後遺症は慢性炎症?

(COVID-19)の急性期以降に長期間続くさまざまな症状、いわゆる「long COVID」に慢性炎症が関与しており、炎症を抑制する治療介入が予後を改善する可能性が報告された。米フロリダ大学のArch Mainous氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Medicine」に5月12日掲載された。


画像提供HealthDay

Mainous氏らの研究グループは昨年12月に、「重症COVID-19から回復後1年以内の死亡リスクは2.5倍であり、非高齢者に限ると3倍以上に上る」という趣旨の論文を、同じく「Frontiers in Medicine」に発表している。しかし、その時の研究では、「COVID-19から回復後に、なぜそこまで死亡リスクが高くなるのか」という原因は検討していなかった。今回発表された研究は、その答の探索を目的として行われた。

2020年1月1日~2021年12月31日のCOVID-19入院患者1,207人を、退院後1年間追跡。入院中の炎症マーカーであるC反応性タンパク質()の値や、退院時に抗炎症治療として経口ステロイド薬が処方されていたか否かと、予後との関連を検討した。

その結果、入院時のCRP高値群は低値群に比較して、退院後の死亡リスクが約6割有意に高いことが分かった。具体的には、年齢、性別、人種/民族、チャールソン併存疾患指数で調整後、CRPの上位50%は下位50%に対して退院後死亡のハザード比(aHR)が1.61(95%信頼区間1.19~2.20)であり、第1三分位群と第3三分位群の比較でもaHR1.61(同1.12~2.32)だった。その一方で、退院時に経口ステロイド薬が処方されていた場合は、aHR0.49(同0.33~0.74)と有意に低リスクだった。

これらの結果を基に、論文の筆頭著者であるMainous氏は、「long COVIDには全身の慢性炎症が関与しているのではないか。慢性炎症の影響は、認知機能の低下や嗅覚障害、腎機能低下、脳卒中リスクの上昇など、さまざまなかたちで現れる。ただし、long COVIDの慢性炎症に対してステロイドを長期間用いるという判断は、時期尚早である。今回の研究は単なる観察研究であって、治療効果を調べた臨床試験ではない」と早急な解釈をしないよう注意喚起している。

米メイヨー・クリニックのCOVID-19後遺症ケア部門のディレクターであるRavindra Ganesh氏は、long COVIDの病態に慢性炎症が関与しているという考え方に同意。その上で、「われわれの患者の多くは6カ月以上症状が継続しており、一部は筋痛性脳脊髄炎や慢性疲労症候群の診断基準を満たし、それは一生続く可能性のある疾患だ。しかし一方で、大多数の患者は最終的に症状が消失している」と解説する。

Ganesh氏はMainous氏同様、long COVID患者へステロイドを長期間投与することに対して慎重な姿勢を崩さない。その理由は、「ステロイド治療には感染症リスクの上昇を含む、さまざまな副作用を伴うからだ」という。

Ganesh氏によると、COVID-19患者を対象に行われた7件(合計対象者数2,214人)の研究のメタ解析から、酸素療法を要さないながらステロイドを投与された患者は、COVID-19重症化と死亡リスクが上昇する可能性が示されたという。ステロイド使用のタイミング次第では、ウイルス感染期間と入院期間の長期化につながる可能性も考えられることから、同氏は「ステロイド使用がlong COVIDリスクを左右するのか、現時点では不明。リスクとベネフィットの比較は非常に難しい」と述べている。(HealthDay News 2022年5月12日)

▼外部リンク
The Impact of Initial COVID-19 Episode Inflammation Among Adults on Mortality Within 12 Months Post-hospital Discharge

HealthDay
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