医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 日本人2型糖尿病の個別化栄養指導、従来の栄養指導との比較で優位性を実証-東大ほか

日本人2型糖尿病の個別化栄養指導、従来の栄養指導との比較で優位性を実証-東大ほか

読了時間:約 3分8秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年03月24日 PM12:00

日本人2型糖尿病患者向けBDHQのフィードバックシートを作成

東京大学は3月22日、日本人2型糖尿病患者を対象に簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた個別化栄養指導を行い、従来臨床現場で行われている栄養指導と比較した血糖改善効果の優位性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の佐々木敏教授、大村有加客員研究員、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Diseases」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

世界各国の糖尿病診療ガイドラインでは、糖尿病に向けた栄養指導は患者に応じて「個別化」した目標を設定すべきであると推奨されてきたが、その具体的な方法は記されていない。一方、糖尿病に対する栄養指導の国際ガイドラインでは、「一人ひとりの患者の栄養摂取状況を把握(=食事調査)した上で栄養指導計画を立てるべきである」と推奨されており、これは具体的な「個別化」のメソッドと言える。しかし、臨床現場では、糖尿病患者一人ひとりに食事調査をせずに栄養指導を行うことが多いのが実情だ。その背景には、栄養士が「食事調査が不可欠であること」を広く認識していないことに加えて、対象者全例に食事調査を行うことが時間やシステムの都合上困難なことがあるという。

食事調査を行なった上で個別化した栄養指導を行った先行研究もあるが、「食事調査に基づいて個別化した栄養指導が、食事調査に基づかない栄養指導よりも優れているか」については明らかにされていない。

日本に住む成人の習慣的な食事を簡便に調査できるツールとして、BDHQがある。58項目の食物摂取頻度調査法(FFQ)と15項目の食事歴法という食事調査方法で構成されており、平均10~15分で回答できる。BDHQの元となったオリジナル版のフィードバックシートは、脂質異常症に対する職場での栄養指導や、地域人口に対する減塩の栄養指導の介入研究で用いられており、すでにその有効性が示されている。しかし、糖尿病に向けたフィードバックシートは存在しなかった。

今回の研究では、日本人2型糖尿病患者に栄養指導を提供するためのBDHQのフィードバックシート(糖尿病向けフィードバックシート)を作成。日本人の食事摂取基準(2015年版)および糖尿病診療ガイドライン2019を主軸に、糖尿病の発症や合併症のリスクに関連のあるメタアナリシスやシステマティックレビューを参照して栄養指導項目を抽出して、目標値をまとめた。そして、BDHQによる食事調査の結果に基づき個別化した栄養指導が、従来の栄養指導と比べて優れているかどうかを比較検討した。

診断10年以内の患者対象、個別化栄養指導と従来型栄養指導で比較

今回、診断されてから10年以内の2型糖尿病患者を対象に、個人栄養指導を個別化栄養指導と従来型栄養指導で提供する並行2群間ランダム化割付比較試験を実施。個別化指導群には、BDHQによる食事調査の結果を反映した糖尿病向けフィードバックシートを用いて個別化した栄養指導を提供した。具体的には、食品群、栄養素、グリセミックインデックス(GI)、食べ方に対して個人の食事摂取状況に応じた指導が行われ、エネルギー摂取量の指導は肥満者にのみ提供された。

従来型指導群には、主治医があらかじめ選択した1,600、1,840、2,000kcal/日のうち一つの目標エネルギー摂取量に対応する病院献立例の写真と、食品交換表を用いて「目標エネルギー摂取量で6つの食品群をバランスよく食べる」ことを目指す指導を実施。具体的な指導内容は、担当栄養士の采配にゆだねられた。実施後に後ろ向きに調査した結果、前日の食事内容や一般的な一日の食事をおおまかに尋ねた事例は散見されたが、妥当性のある食事調査を行われた事例はなく、その結果「毎食必ず野菜を食べましょう」、「手の届くところにお菓子を置かない」といった目標が明確でない指導が行われたとしている。

HbA1c変化は個別化指導群−1.1%、従来型指導群−0.7%

6か月間の介入後、HbA1cの変化は個別化指導群において−1.1%と、従来型指導群の−0.7%に比べて有意な低下を認めた。さらに、体重と中性脂肪、LDL-Cも減少傾向を示し、HDL-Cが増加傾向を示した。

2型糖尿病の予後・QOL改善に期待

今回の研究成果により、従来の栄養指導と個別化栄養指導の効果を完全に平等な条件下で比較することに世界で初めて成功し、個別化栄養指導の方が従来の栄養指導と比べて優れていることを示した。

今回開発され有効性が検証された「BDHQとそのフィードバックシートを用いた糖尿病患者向け個別化栄養指導」は、現在日本で行われている栄養指導を国際ガイドラインに則した方法に近づけるとともに、日本ならびに諸外国における糖尿病栄養指導を抜本的に変え、2型糖尿病に苦しむ人々の予後並びにQOLの改善に大きく貢献することが期待される、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 急性赤白血病、ゲノム解析で4つのサブグループに分類し治療標的も発見-京大ほか
  • 「持続グルコース測定」が有用な糖尿病患者の特徴が判明-順大
  • 1日3食+間食ごとの食品摂取量を評価できる簡易ツールを開発-東大
  • 膝前十字靭帯再建、移植腱への負荷は膝蓋腱より大腿四頭筋腱で低い可能性-大阪公立大
  • ヒト造血幹細胞移植、HSC体外増幅技術と移植予後診断システムを開発-AMEDほか