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動かないと筋肉減少のメカニズム解明、細胞内カルシウム濃度低下が関連-神戸大ほか

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2022年03月17日 AM11:15

筋肉が減ると運動しにくくなり、運動しなくなるとさらに筋肉が減る悪循環

神戸大学は3月16日、動かないと筋肉の量が減少するメカニズムを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授ら、名古屋大学、、長崎県立大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Investigation」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

筋肉が減少すると、運動能力が低下するだけでなく、さまざまな病気にかかりやすくなり寿命の短縮にもつながる。加齢による筋肉の減少と運動能力の低下であるサルコペニアは、高齢者が増加し続ける日本で、大きな問題となっている。

運動やトレーニングによって筋肉量が増えること、逆に動かないと筋肉量が減ることが知られている。筋肉が減ると運動しにくくなり、運動しなくなるとさらに筋肉が減るという悪循環が生じる。また、入院や手術などによってベッドの上で安静を強いられることがきっかけとなり、このような悪循環が一気に加速することもある。このような悪循環を断ち切ることのできる薬剤の開発が、期待されている。また、動かないと筋肉が減るメカニズムはよくわかっておらず、運動という筋肉を増加させる刺激がなくなるために筋肉が減少するという仮説も提唱されている。

KLF15増加で筋肉減少へ、マウスで確認

まず、運動神経の切断やギプス固定などによってマウスの脚を動かないようにすると、筋肉量が減少するとともに、タンパク質KLF15が筋肉で増えることを発見。筋肉だけでKLF15を無くしたマウスを作製した結果、同マウスは脚を動かなくしても筋肉が減らないことがわかった。このことは、動かないとKLF15が増えることが筋肉を減少させる原因であることを示している。

筋肉細胞内カルシウム濃度低下でKLF15増加

続いて、動かないとどのようなメカニズムでKLF15が増えるかを検討。その結果、細胞内のカルシウム濃度の低下が原因であることを突き止めた。通常、どのような細胞でも細胞内のカルシウム濃度は低く保たれている。細胞に刺激が加わるとカルシウム濃度は数十倍~数百倍に上昇して、さまざまな細胞の反応の引き金となる。

研究グループは、非常に感度の高い生体イメージングを開発することによって、筋肉が動かないと、低く維持されている筋肉細胞内のカルシウム濃度が一層低くなることを発見。これがKLF15を増加させ、筋量を減らす原因であることを突き止めた。細胞内のカルシウム濃度の上昇は多彩な細胞の反応の引き金になることが知られているが、カルシウム濃度の低下によって起こる反応はほとんど知られていない。

患者の筋肉サンプルによる検討でも、Piezo1/KLF15/IL-6経路の関連を確認

最後に、KLF15が増えることによりタンパク質IL-6が増えて、これが筋肉を減らす作用を持つことも突き止めた。IL-6の働きを抑える抗体をマウスに投与すると、脚を動かなくしても、筋肉が減らなくなることがわかった。

これらの結果から、動かないと筋肉でPiezo1が減ることによって、低く保たれている細胞内カルシム濃度が一層低くなり、それによってKLF15が増え、KLF15がIL-6を増やすことにより筋肉量を減らすというメカニズムが初めて明らかとなった。骨折によるギプス固定によって筋肉減少をきたした患者の筋肉サンプルを用いた検討でも、Piezo1、KLF15、IL-6が働いている証拠が得られたとしている。

IL-6抗体が筋肉減少の抑制薬として有効な可能性

細胞内のカルシウム濃度が低くなることが筋肉減少の原因となることも、この現象にPiezo1/KLF15/IL-6経路が関わることも、今まで全く想定されていなかった新発見だ、と研究グループは述べている。

今回突き止められたPiezo1/KLF15/IL-6経路は、運動による筋肉増加には直接関係しておらず、動かないと、筋肉増加刺激がなくなるだけでなく、動かないこと自体によって積極的に筋肉を減らすスイッチが入ることが今回の研究で明らかになった。

現在、筋肉減少に対する有効な治療薬はない。今回の研究でIL-6抗体が筋肉減少の抑制薬として有効な可能性が明らかになったが、IL-6抗体を用いた治療では免疫能を下げる副作用が懸念される。今後、Piezo1やKLF15に作用する薬剤を開発できれば、筋肉減少の治療薬になる可能性が期待される。研究グループは、日本医療研究開発機構の支援を受け、薬剤開発を進めているとしている。

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