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子宮内低栄養が「精巣機能障害」の原因となることをマウスで確認-浜松医大ほか

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2022年03月09日 PM12:15

子宮内発育不全が精巣機能障害を招く機序や、精巣機能障害がDOHaDスペクトラムに含まれるのかは不明だった

浜松医科大学は3月8日、子宮内低栄養におかれた雄マウスが出生前に男性ホルモン分泌不全を起こし、さらに、出生後に精子数減少を示すことを世界で初めて見出したと発表した。この研究は、同大医化学講座の緒方勤特命研究教授(浜松医療センター院長補佐)、同大小児科の藤澤泰子病院准教授、小野裕之助教、国立成育医療研究センター分子内分泌研究部の深見真紀部長らと、九州大学大学院医学研究院の諸橋憲一郎教授の研究グループとの共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of the Endocrine Society」に掲載されている。

先行研究により、「子宮内発育不全で出生した男児・男性が高率に外性器異常(尿道下裂など)や不妊症を有すること」「胎児期の低栄養環境が成人期の糖尿病・高血圧・メタボリック症候群などの発症に関与するというDOHaD (Developmental Origins of Health and
Disease)仮説」が報告されている。しかし、子宮内発育不全が精巣機能障害を招く機序、ならびに精巣機能障害がDOHaDスペクトラムに含まれるか否かは不明だった。

栄養制限マウスから出生した雄マウスは精巣内男性ホルモン濃度などが通常に比べ半減

研究グループは今回、妊娠メスマウスに対して妊娠6.5日から栄養摂取量を50%に制限する実験を行った。その結果、在胎17.5日(妊娠末期)の精巣内男性ホルモン濃度と男性ホルモン産生酵素遺伝子発現量が、栄養制限を受けたメスマウスから出生した雄(Rマウス)において、通常食で飼育されたメスマウスから出生した雄(C-マウス)に比し、半減していることがわかった。また、生後6週の精巣上体内精子数が、R-マウスにおいてC-マウスに比し、生殖細胞のアポトーシス亢進により約3分の2に減少していることもわかった。

精巣機能不全がDOHaDスペクトラムに含まれると判明

これらのデータは、子宮内発育不全が外性器異常や不妊症を招く原因を明らかにし、さらに、精巣機能不全がDOHaDスペクトラムに含まれることを示している。そして、日本において高頻度に認められる子宮内低栄養という環境因子に起因する精巣機能不全(尿道下裂や精子数減少)の予防に向けて、妊婦の栄養状態改善という社会啓発活動を推進することの重要性を再確認させるものと言える。

子宮内発育不全と精巣機能障害の予防に向け、女性のやせ願望是正に向けた社会啓発が重要

今回の研究成果により、日本で高頻度に認められる子宮内発育不全およびそれに起因する精巣機能障害の予防のために、女性の低栄養状態(やせ願望)の是正に向けた社会啓発活動を推進することの重要性が示された。

しかし、全ての子宮内発育不全出生した男児・男性が臨床的に明らかな精巣機能不全を呈するわけではなく、子宮内低栄養の他にも精巣機能に影響する因子が存在すると考えられることから、研究グループは、この共役因子の同定に向けて、現在2つの研究を進めている。第1は、「遺伝的感受性因子の同定」で、すでにエストロゲン受容体遺伝子に世界共通の感受性因子を見出している。第2は、「遺伝―環境相互作用の解析」で、すでに遺伝的に脆弱な性分化疾患発症遺伝子変異を有するマウスにおいて子宮内低栄養実験を進めている。これらの研究で、多因子疾患としての精巣機能不全の発症機序が解明され、その予防法が進展すると期待される、と述べている。

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