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加齢黄斑変性の日本人の疫学と治療実態を、NDBの解析で明らかに-京大ほか

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2022年03月07日 AM11:45

全国民規模のレセプト情報・特定健診等情報データベースで加齢黄斑変性の実態を調査

京都大学は3月4日、)のオンサイトリサーチセンターを利用してNDBの全データを解析することにより、治療を要する加齢黄斑変性の発症率や治療実態を、初めて全国規模で明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科眼科学の三宅正裕特定講師、木戸愛同博士課程学生、辻川明孝同教授、国際高等教育院の田村寛教授を中心とした研究グループによるもの。研究成果は、「Ophthalmology Science」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

近年、日々行われている実際の診療実態を反映したリアルワールドデータの大規模データベースを研究題材とした臨床研究が注目を集めている。医療機関が保険者に提出するレセプトデータは、日々行われている保険診療を反映したデータであり、リアルワールドデータの代表的なものだ。国内にいくつかあるレセプトデータベースの中でも、レセプト情報・特定健診等情報データベース(ナショナルデータベース、NDB)は、厚生労働省が管理しているレセプトデータベースで、他のデータベースとは異なり、日本全国民のレセプト情報が集約されている。このような全国民規模のデータベースがある国は、台湾・韓国と日本のみで、世界的にも有数の貴重なデータベースと言える。

加齢黄斑変性は、ものを見るために重要な網膜の中心部分(黄斑部)に新生血管という悪い血管が生えて出血や浮腫を引き起こす疾患。視力低下、ものがゆがんで見える歪視、見ているもの付近が見えにくい中心暗点といった症状を引き起こし、重大な視機能障害につながる。加齢黄斑変性は先進国の主要な失明原因の一つとして知られており、日本でもすでに失明原因の第4位の疾患となっているが、加齢に伴って増加する疾患であるため、超高齢社会に突入して久しい日本においては、患者数が増加している。

加齢黄斑変性の治療としては、悪い血管の活動性を抑制する「」を眼内に注射する治療が一般的に行われる。しかし、注射の効果は永続的なものではないので、必要に応じて注射を繰り返すことになる。この薬剤は高額であるため、患者に過不足ない注射をすることが求められるが、これまで実際の診療現場における治療実態さえ明らかになっておらず、今後適切な治療を推進するにあたり、そのような情報が必要不可欠だった。

日本の治療を要する加齢黄斑変性は約2,500人に1人、発症率は男性が約1.8倍高く、年々増加

研究グループは今回、厚生労働大臣の許可を得て、京都大学医学部附属病院内にあるNDBオンサイトリサーチセンターを利用し、NDBに含まれる全データを解析。2011年1月~2018年12月の間に新規発症し、抗血管内皮増殖因子阻害薬の治療を要した加齢黄斑変性の患者を同定し、その発症率、性別や年齢による発症の傾向、治療実態について調査した。

2011~2018年までの8年間で「治療を要した加齢黄斑変性」を新規発症したのは日本全国では24万6,064人で、平均して年間に10万人あたり40人(約2,500人に1人)が発症していることが明らかになった。アジアでは加齢黄斑変性は男性に多いことが知られているが、同研究でも男性の発症率は女性より約1.8倍高いことが確認されたという。発症率はどの年齢層でも2011~2018年にかけて年々増加しており、高齢化の影響だけではなく、治療を要する加齢黄斑変性が増えていることが示唆された。

抗血管内皮増殖因子阻害薬の注射回数は1年目が最も多い

治療を開始してからの抗血管内皮増殖因子阻害薬の注射回数は、治療開始初年度が平均3.7回、2年目は1.4回、3年目は1.2回と、治療開始1年目に1番注射回数を要していることが判明した。また、1年目の注射回数が多い人ほど2年目以降の注射回数が多い傾向があり、治療を開始してから期間が経っても疾患の活動性が維持されるためだと考えられるという。

今後もレセプトデータベースを用いて、眼科難病・希少疾患の病態解明や治療法の発展を目指す

今回の研究は、NDBオンサイトリサーチセンターを活用し、加齢黄斑変性の疫学と治療実態を報告した成果だ。著者らはこれまでにも当該データベースを解析して、中心性漿液性脈絡網膜症という特殊な網膜剥離を呈する疾患の日本での疫学を初めて報告している。

今回、研究題材となった加齢黄斑変性は、世界的にも患者数が増加しており重大な視機能障害につながる疾患であるため、同疾患の予防や有効な治療法の開発が喫緊の課題となっている。同研究で報告した、超高齢社会である日本における全国民規模の疫学および治療実態は、今後の加齢黄斑変性の病態理解や、製薬企業が日本における研究開発方針を策定するための基盤となる重要な知見であると言える。

「今後もNDBをはじめとしたレセプトデータベースを用いて、加齢黄斑変性のみならず種々の眼科難病・希少疾患の疫学や発症リスクを評価し、病態解明や新たな治療法の発展につなげていきたいと考えている」と、研究グループは述べている。

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