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術後頭頸部がんにシスプラチン毎週投与+放射線、標準治療に対し非劣性-国がんほか

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2022年03月07日 AM11:30

術後再発リスクの高い頭頸部がんの標準治療、3週毎+放射線治療

国立がん研究センターは3月2日、術後再発リスクの高い頭頸部がん患者を対象に、従来の標準治療(シスプラチン3週毎+放射線治療)に対して、シスプラチン毎週投与+放射線治療の非劣性を検証するランダム化比較第2/3相試験を実施し、中間解析の結果、全生存期間の非劣性が証明されたことを発表した。この研究は、国立がん研究センター東病院頭頸部内科の田原信科長、神戸大学医学部附属病院腫瘍センターの清田尚臣准教授ら、(JCOG)によるもの。研究結果は、「Journal of Clinical Oncology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

頭頸部がんの90%以上は、扁平上皮がんという組織型であることから、頭頸部扁平上皮がんを対象に臨床試験が実施され、標準治療が確立されてきた。ステージIII、IVの切除可能な局所進行頭頸部扁平上皮がんは、術後に放射線治療を行った場合でも、局所再発、遠隔転移の頻度は高く、5年生存割合40%と予後も不良だ。特に、切除断端陽性、頸部リンパ節の節外浸潤陽性、頸部リンパ節転移の多発、大きなリンパ節転移などは、再発リスクが高い因子と認識されている。

治療効果や安全性の向上を目指して、術後の放射線治療に抗がん薬シスプラチンを同時併用する治療の開発が行われてきた。術後再発するリスクが高い因子を有する頭頸部扁平上皮がん患者を対象とした術後放射線治療とのランダム化比較試験の結果、シスプラチン100mg/m2を3週毎に3コースを放射線治療と同時併用する化学放射線療法(シスプラチン3週毎+放射線治療)は、再発を抑える効果が優れていることが示され、術後補助療法の新たな標準治療になった。

標準治療は副作用のリスクから避けられる現状

しかし、吐き気、腎機能障害などの副作用が強い、副作用のために投与量を減らすことも多く、指示通りに治療を計画することが難しい、副作用のために長期の入院が必要である、術後の手術部位が感染するリスクが高まるなどを理由に、医師が治療提示を避けることが多く、普及していなかった。そのため、術後補助化学療法単独、術後放射線治療単独などの治療が頻用されている状況だった。

実臨床では、副作用の軽減を期待してシスプラチンの用量を30~40mg/m2に減らし、毎週投与する化学放射線療法(シスプラチン毎週投与+放射線治療)が頻用されてきた。しかし、標準治療であるシスプラチン3週毎+放射線治療との比較試験が行われていないため、シスプラチン毎週投与+放射線治療が、標準治療と同等の治療効果を示すかどうか明らかになっておらず、効果がわからない治療が実臨床で頻用されていることが問題視されていた。

成人以上のステージIII/IVA/IVB、術後再発高リスク因子を有する患者を対象に実施

JCOGの頭頸部がんグループでは、日本の代表的な頭頸部がんの専門施設を中心に、術後再発リスク因子を有する頭頸部扁平上皮がん患者を対象に、標準治療であるシスプラチン3週毎+放射線治療に対して、シスプラチン毎週投与+放射線治療の非劣性を検証するランダム化比較第2/3相試験を実施した。

シスプラチン3週毎+放射線治療、シスプラチン毎週投与+放射線治療ともに実臨床で実施されていたが、同試験計画時点で、両群の治療とも、参加施設では実施経験が少なく、実施可能性および安全性の情報は十分ではないと判断された。そこで、第2相部分で両群の治療の安全性を確認し、第3相試験として試験を継続することが適切であるかを判断し後に、引き続いて第3相部分を行うランダム化第2/3相試験を実施した。

第2相部分は、各群33例、両群66例とし、第3相部分は、各群130例、両群260例だった。主要評価項目は、第2相部分が治療完遂割合、第3相部分が全生存期間だった。対象の主な組み入れ規準は、年齢が20~75歳、口腔・中咽頭・下咽頭・喉頭のいずれかに原発巣を有する頭頸部がん、組織学的に扁平上皮がんと診断、術後の診断にてステージIII/IVA/IVBのいずれかと診断、切除断端陽性あるいはリンパ節外浸潤の術後再発高リスク因子を有する、遠隔転移を有さない、全身状態が良好(ECOG PSが0または1)である、十分な臓器機能を有する、他のがんに対する治療も含めて、放射線治療、抗がん薬、ホルモン療法いずれも受けた経験がないことなどであった。

患者は1:1にシスプラチン3週毎+放射線治療(シスプラチン3週毎投与群)か、シスプラチン毎週投与+放射線治療(シスプラチン毎週投与群)に割り付けられ、どちらかの治療を受けた。2012年10月~2015年2月までに第2相分の登録が66例に達し、JCOG効果・安全性評価委員会にて試験の継続が認められ、第3相部分に移行し、2018年12月21日に261例で登録を完了した(シスプラチン3週毎投与群132例、シスプラチン毎週投与群129例)。

全生存期間は毎週投与群71.6% vs. 3週毎投与群59.1%、副作用がより軽いことも判明

第3相試験における2回目の中間解析を実施したところ、フォローアップ期間中央値2.2年において、3年生存割合はシスプラチン3週毎投与群59.1%、シスプラチン毎週投与群71.6%とシスプラチン毎週投与群にて良好な傾向を示した。この結果、シスプラチン毎週投与+放射線治療が、シスプラチン3週毎+放射線治療に比べて全生存期間で劣らないことが証明された。

また、シスプラチン毎週投与群はシスプラチン3週毎投与群と比較して、グレード3以上の好中球減少(35.3% vs. 48.8%)、グレード2以上のクレアチニン上昇(5.7% vs. 8.5%)、グレード2以上の難聴(2.5% vs. 7.8%)、グレード2以上の粘膜炎(50.0% vs. 55.0%)など、急性期にみられる副作用が軽いことも示された。

シスプラチン毎週投与+放射線治療が新たな標準治療に

同試験の結果、シスプラチン毎週投与+放射線治療が標準治療であることがガイドラインに記載され、新たな標準治療となることから、今後患者に対してより安全で、エビデンスに基づいた治療を提供することが可能となるという。「シスプラチン毎週投与+放射線治療は、副作用が軽く、外来でも実施可能であることから、今まで術後補助療法を避けてきた患者に対しても術後補助療法が適切に実施されるようになり、頭頸部がん患者全体の予後改善が期待される」と、研究グループは述べている。

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