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低着圧の弾性ストッキング、長時間座位による血栓症発症リスク軽減の可能性-東京医大

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2022年03月02日 AM11:30

平均年齢22.6歳の健康な男性9人対象、連続8時間の座位姿勢保持実験

東京医科大学は3月1日、長時間座位姿勢保持が生体に及ぼす影響と、長時間座位姿勢保持時の低着圧弾性ストッキング着用効果を検証した結果を発表した。この研究は、同大健康増進スポーツ医学分野の黒澤裕子講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Medicine & Science in Sports & Exercise」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

飛行機や長距離バスによる移動、パソコン作業や講義を受けるなど、長時間にわたり座位姿勢を保持する場面は、日常生活に数多く見られる。その結果、下肢の深部静脈に血栓が生じる深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群が発症するとともに、命にかかわる肺塞栓症を併発する場合もあることがわかってきた。しかしながら、長時間の座位姿勢保持が生体にどのような影響を及ぼすのか、時間経過に伴う詳細な変化は、完全には明らかになっていない。

近年、一過性の座位姿勢保持による悪影響だけでなく、長期間にわたる座位姿勢保持、つまり毎日座り続ける生活を送ることにより、循環器疾患をはじめとする種々の疾患の罹患率、死亡率が上昇することがわかってきた。1日当たりの座位時間は、ここ数十年の間、世界的に増加傾向にあり、日本は他国に比べて座位時間が1番長いという調査報告もある。しかし、長時間座位姿勢保持による生体への悪影響を予防する方法について、その有効性を検証したエビデンスは不足しているという現状がある。

今回の研究は、平均年齢22.6歳の健康な男性9人を対象に実施した。参加者に飛行機のエコノミークラスシートに近い形状の椅子に、8時間連続で座ってもらい、1時間ごとに下肢の周径囲、動脈血流、筋酸素化レベルを測定。また、同時に、座位時に左右無作為に片肢のみ、低い着圧の弾性ストッキングを鼠径部から足首まで着用してもらった。

座位姿勢保持による下肢の血行動態の悪化、血栓症発症リスク上昇を示唆

研究の結果、連続8時間の座位姿勢保持により、ふくらはぎと足首の周径囲は増大し、下肢の浮腫が認められた。また、下肢浮腫の変化率と、ふくらはぎ周径囲の変化率との間には、有意な正の相関関係が認められた。この結果は、下肢周径囲の座位姿勢保持による増大が、下肢浮腫に由来するものであることを示している。

下肢動脈血流、ずり応力、および動脈血流変化率と下肢周径囲変化率との関係を調べたところ、連続8時間の座位姿勢保持により、下肢の動脈血流は約40%低下。ずり応力も、弾性ストッキング着用肢に比べ、非着用肢では有意な低値を示した。

また、動脈血流の変化率と脹脛周径囲変化率、および足首周径囲変化率との間には、有意な負の相関関係を認めた。この結果は、座位姿勢保持による下肢動脈血流の低下が下肢周径囲の増大につながったことを示している。

さらに、腓腹筋の酸素化レベルも、座位開始前と比べ、座位後には低下。以上の結果は、座位姿勢保持による下肢の血行動態の悪化を示しており、血栓症発症リスクの上昇を示唆するものだとしている。

低着圧弾性ストッキング着用でふくらはぎと足首の周径囲は増加せず、下肢の動脈血流低下を約15%に抑える

一方で、現在医療現場で推奨されている着圧よりも低い着圧の弾性ストッキングを片肢に着用することにより、8時間座位後でも、ふくらはぎと足首の周径囲は増加せず、下肢の動脈血流の低下も約15%に抑えられていた。また、腓腹筋の酸素化レベルも、実験開始前と比べて変化しておらず、悪化を示さなかった。

これらの結果は、日常生活での長時間座位姿勢の保持は、特に下肢の血行動態を悪化させ、血栓症発症リスクを増大させる可能性を示唆している。また、着圧の低い、着用しやすい弾性ストッキングの着用は、血栓症発症リスクの軽減につながることを示しているとしている。

座位中の運動実施効果も検証予定

今回、健康な若年男性を対象に研究を行ったが、若い健康な者でも、8時間座位姿勢保持により、血栓症発症リスクの上昇を示す結果が認められた。今後、妊婦や高齢者のような、血栓症発症リスクがより高い者を対象とした研究を行うことにより、高リスク者の座位姿勢保持に伴う生体変化が明らかになると同時に、低い着圧の弾性ストッキング着用効果を調べることができるという。

これまで医療現場で推奨されてきた着圧の高いストッキングの着用は、特に、筋力が低く皮膚の弱い高齢者では、履きにくさにから着用率が低下しているほか、皮膚炎の原因となっている。一方、今回の研究で用いたのは、低い着圧で履きやすい弾性ストッキングだ。弾性ストッキング着用率の向上につながると同時に、血栓症発症リスクの予防効果も期待できると考えられる、と研究グループは述べている。

研究グループは今後、座位姿勢保持に伴う生体への悪影響を予防する方法として、座位中の運動実施効果も検証する予定だとしている。

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