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妊婦の殺虫剤へのばく露、生まれた子どもの中耳炎罹患との関連を示唆-兵庫医大ほか

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2022年02月25日 AM10:50

親子9万8,255人対象、「1歳までに子ども中耳炎罹患」と「妊婦の殺虫剤使用頻度」の関連は?

兵庫医科大学は2月22日、子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)の約10万組の親子のデータをもとに、妊婦の殺虫剤の使用頻度と生まれた子どもが1歳までに中耳炎にかかることとの関連について解析した結果を発表した。この研究は、同大小児科学およびエコチル調査兵庫ユニットセンターらの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

中耳炎は子どもによくみられる病気であり、急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎からなる。急性中耳炎の罹患率は1年に100人あたり約10.8人と言われており、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌などが原因になる。中耳炎のリスク因子としては、男児であること、反復する中耳炎の家族歴があること、たばこの煙へのばく露、年上のきょうだいがいること、保育施設に通っていることなどが知られている。また、生後6か月間母乳栄養で育てることが中耳炎の予防になるとされている。

殺虫剤については、ピレスロイドと有機塩素化合物が主な成分であり、妊婦のばく露が生まれた子どもに与える影響について調べた報告はいくつか見られる。妊婦のピレスロイドへのばく露が生まれた子どもの2~4歳における注意欠陥多動性障害と関連があるという報告がある一方、妊婦のピレスロイド代謝物質の濃度と生まれた子どもの認知スコアとの間には関連がないというものや、妊婦のピレスロイド殺虫剤へのばく露が生まれた子どもの発達によい影響を及ぼすといった報告もある。妊婦の殺虫剤へのばく露と中耳炎の罹患の関係について調べた報告では、イヌイットの妊婦において有機塩素化合物へのばく露が急性中耳炎のリスク因子になるとされている。

今回の研究では、エコチル調査に登録され、妊娠初期から生まれた子どもの生後1歳までに実施された約10万組の親子のデータのうち、子どもが生産、単胎であり自記入式質問票に有効な回答があった9万8,255人に対して、妊娠判明時から妊娠初期および妊娠判明時から妊娠中期における妊婦の殺虫剤の使用頻度と、子どもが生後1歳までに中耳炎にかかった頻度との関連を解析。性別、生後6か月まで母乳栄養かどうか、母親の年齢、在胎週数、出生体重、生後6か月時点で同居するきょうだいの有無、1歳時点で保育施設に通っているかどうか、母親の慢性中耳炎の既往歴、子ども自身のワクチンの接種歴、母親および父親の喫煙歴、母親の受動喫煙の有無、不妊治療の有無、母親の職業別分類などを共変量としてロジスティック回帰分析を用いて解析をした。さらに、これまでに中耳炎のリスク因子として知られている保育施設に通っているかどうか、きょうだいがいるかどうか、母親の慢性中耳炎の既往歴で層別化し、追加で解析した。

妊婦が妊娠初期に週1回以上殺虫剤使用群、使用なし群と比べて1.30倍中耳炎罹患の頻度「高」

解析の結果、生まれた子どもが1歳までに中耳炎にかかる群とかからない群で、妊婦の殺虫剤の使用頻度に有意な差は認められなかった。ロジスティック回帰分析では、妊婦が妊娠初期に週1回以上殺虫剤を使用した群で、殺虫剤を使用しなかった群と比べて、1.30倍中耳炎にかかる頻度が高くなっていた。

層別化解析の結果、保育施設に通っていない子どもでは、妊婦が妊娠初期に週1回以上殺虫剤を使用した群で、殺虫剤を使用しなかった群と比べて、1.76倍中耳炎にかかる頻度が高くなっていた。なお、殺虫剤の使用期間を妊娠判明時から妊娠中期までとした場合には、いずれの関連も認められなかった。

妊娠初期に使用の殺虫剤種類・量と、子どもの中耳炎罹患との関連を明らかにする必要

なお、今回の研究における限界として、妊婦の殺虫剤の使用は質問票への回答によって評価したものであり、その種類や使用量は明らかではなく、妊婦の生体試料中の殺虫剤成分の分析も行っていないことをあげている。また、質問票に回答する時点で殺虫剤を使用した時期について、回答者が勘違いをしていた可能性もある。さらに、中耳炎の罹患に影響を及ぼす未知の交絡因子が存在するかもしれない、としている。

今回の研究結果から、妊婦が妊娠初期に仕事で週1回以上、半日以上かけて殺虫剤を使用した場合、生まれた子どもの1歳までの中耳炎の頻度が高くなることとの関連が認められた。また、子どもが保育施設に通っていない群では、さらに関連があることがわかった。今後、研究グループは、妊娠初期に使用する殺虫剤の種類や量と子どもの中耳炎の罹患との関連を明らかにする必要があるとしている。また、中耳炎の罹患に影響を与える他の因子についてもさらなる研究が必要だ、と述べている。

エコチル調査では引き続き、子どもの発育や健康に影響を与える化学物質等の環境要因を明らかとすることが期待される。

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