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日本人はHbA1c値が正常範囲の5.0~5.4%でも妊娠糖尿病の発症リスク「高」-山梨大

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2022年02月10日 AM11:00

糖尿病ではない日本人を対象に、妊娠時のHbA1c値と妊娠糖尿病の関連を解析

山梨大学は2月9日、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査()」に参加した妊婦を対象に、エコチル調査に登録された時点の糖化ヘモグロビン値(HbA1c値)と妊娠糖尿病との関連について解析した結果を発表した。この研究は、同大エコチル調査甲信ユニットセンターの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Diabetes Investigation」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、エコチル調査)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするため、2010年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。母体血や臍帯血、母乳、血液、尿、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

妊娠糖尿病は、さまざまな周産期合併症の要因となり得ることが知られており、長期的には2型糖尿病の発症にも関与することも報告されている。そのため、妊娠糖尿病の予防、スクリーニング、早期診断・治療が非常に重要であり、米国では妊娠前に耐糖能の指標であるHbA1c値を6%未満にすることを推奨している。アジア人は欧米人と比較してインスリン分泌能力が低いことが知られており、HbA1c値が欧米人における正常範囲であっても妊娠糖尿病のリスクがある可能性が指摘されているが、これまでアジア人を対象とした大規模な研究はなかった。研究グループは今回、糖尿病を罹患していない日本人を対象に、妊娠時のHbA1c値が妊娠糖尿病とどのように関連しているのかを解析した。

HbA1c値5.0%以上5.4%以下の群では、妊娠糖尿病の発症が1.32倍

エコチル調査参加者のうち、妊娠糖尿病の診断やHbA1c値の情報がない人、糖尿病の既往がある人、HbA1c値6.5%以上の人を除いた8万9,799人の妊婦を対象とした。全体の解析のほか、HbA1c値が「4.9%以下」「5.0%以上5.4%以下」「5.5%以上5.9%以下」「6.0%以上6.4%以下」の4群に分け、妊娠時のHbA1c値と妊娠糖尿病の発症についてロジスティック回帰分析を行った。

その結果、全体ではオッズ比1.20で、HbA1c値と妊娠糖尿病の発症に関連が見られた。さらに、HbA1c値 5.0%以上5.4%以下、5.5%以上5.9%以下、6.0%以上6.4%以下の群において、HbA1c値と妊娠糖尿病の発症に関連が見られた。

また、HbA1c値4.9%以下の群と比較して、HbA1c値5.0%以上5.4%以下の群では、妊娠糖尿病の発症が1.32倍となるという関連が見られた。前述の通り、米国では妊娠前のHbA1c値は6%未満が推奨されている。日本では妊娠前のHbA1c値に明確な基準はないが、一般的な健診では5.5%前後に基準値を設けていることが多い。しかし、今回の解析により、正常範囲とされているHbA1c値5.0%以上5.4%以下であっても、妊娠糖尿病の発症のリスクが高い可能性が示唆された。

妊娠糖尿病の妊婦では、1.41倍、羊水過多2.99倍、早産1.23倍

さらに、妊娠糖尿病と診断された妊婦では、妊娠糖尿病と診断されていない妊婦に比べて、妊娠高血圧症候群の発症が1.41倍、羊水過多が2.99倍、早産が1.23倍になるという関連も見られた。このような事実は以前から知られていたことだが、妊娠糖尿病の危険性が認識され診断・治療が確立している現代においても、妊娠糖尿病は以前と変わらず、さまざまな周産期合併症のリスクとなることが改めて示されたことになる。

これまでに、妊娠早期に食事・運動療法による介入を行うことで妊娠糖尿病の発症リスクを減少させることができると報告されているが、今回の解析結果から、妊娠早期に食事・運動療法による介入が必要な妊婦の同定につながることが期待される。

一方、同研究の限界点として、妊婦・主治医への質問票による調査の解析であり、HbA1c値の測定時期が1人1人の対象者で異なる点や(中央値は妊娠15週)、妊娠糖尿病の発症リスクとしてすでに知られている糖尿病の家族歴や尿糖陽性などに関する情報を収集していない点などが挙げられるとしている。

妊娠時のHbA1c値と妊娠糖尿病との関連については今後も検討が必要

今回の研究で明らかにされた「妊娠時のHbA1c値と妊娠糖尿病との関連」については、実際にHbA1c値を目安に妊娠早期から食事・運動療法による介入を行い、妊娠糖尿病の発症リスクを下げることが可能かを検証する必要があると言える。

「その際、今回示したHbA1c値の目安を達成するために、安全性が確立していない過度な糖質制限を行う食事療法や運動強度の高い運動療法を妊娠中に行うことは推奨されない。医師と相談しながら、適切な食事・運動療法を実施することが重要だ」と、研究グループは述べている。

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