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植物乳酸菌IJH-SONE68産生のEPS、通年性アレルギー状態を軽減-広島大

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2022年01月17日 AM11:15

イチジクの葉から得られた乳酸菌産生の細胞外多糖体EPS、ヒト臨床研究へ

広島大学は1月14日、植物由来乳酸菌(植物乳酸菌)の一種「Lactobacillus(Lb.)paracasei IJH-SONE68」がつくる細胞外多糖体(exopolysaccharide:EPS)を摂取することで、通年性アレルギーの状態が軽減されることをヒト臨床研究で証明したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科未病・予防医学共同研究講座の杉山政則教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。


画像はリリースより

2011年8月にまとめられた厚生科学審議会の報告書によると、日本全人口の2人に1人が何らかのアレルギー症状を持っており、その割合は急速に増加している。そのうち、アレルギー性鼻炎は国民の約4割が罹患しているとされ、罹患数第1位の疾患となっている。公私を問わず日常生活の質の低下に影響を及ぼす場合もあり、アレルギー性鼻炎労働者一人当たりの経済的損失は、1年あたり約19万円と試算されている。

杉山政則教授の未病・予防医学共同研究講座では、未病改善と予防医療に有益な植物由来乳酸菌(植物乳酸菌)の分離探索研究を継続的に進めてきた。最近の研究成果として、現在までに探索分離した1,000株を超える植物乳酸菌の保存菌株のうち、イチジクの葉から得られた乳酸菌Lb. paracasei IJHSONE68の産生するEPSが、アレルギー症状を誘発させたモデルマウスの症状を改善する効果を持つことを突き止めた。今回は、この発見をもとに、ヒトでのその有効性と安全性を検証すべく、臨床研究を実施した。

1日のくしゃみ回数、鼻をかんだ回数、涙目、頭重感のスコアが有意に低下

同研究は、当講座の野田特任准教授と総合内科・総合診療科の菅野啓司准教授が担当し、臨床研究に参加した被験者60人を、IJH-SONE68株由来EPSを含むカプセルを摂取する群(試験食群)と、EPSを含まないカプセルを摂取する群(プラセボ群)とに分け、それぞれのカプセルを12週間摂取してもらった。評価項目として、くしゃみの回数、鼻をかんだ回数を記録し、鼻詰まりの様子、目のかゆみ、涙目、そして頭重感を合わせた6項目を、目と鼻の不快感に関するアンケート項目(程度に応じて自己評価スコアとして算出)として設定。各カプセルの摂取期間前後における、上述のスコアを試験食群とプラセボ群とで比較した。

その結果、試験食群ではプラセボ群と比べ、自己評価スコアの合計値が有意に低下。アンケートの項目別では、1日のくしゃみの回数、1日に鼻をかんだ回数、涙目、そして頭重感の4項目は試験食群で有意なスコアの低下が認められたが、鼻詰まりと目のかゆみの2項目はスコアが低下していたものの、生物統計学的な有意差は認められなかった。

治療薬開発も目指し、製薬企業との産学連携研究を模索

IJH-SONE68株の産生するEPSには、抗アレルギー作用に加え、接触性皮膚炎や潰瘍性大腸炎といった他の炎症性疾患にも有効なことが、動物実験により、確認されている。

植物乳酸菌IJH-SONE68株は果汁中で活発に増殖し、多量のEPSを菌体外に分泌する。今回の臨床研究では、パイナップル果汁を培地として培養し、得られた果汁発酵液を粉末化したものをカプセルに詰め、試験食とした。このように、同株由来のEPSはカプセル化や錠剤化が容易なため、サプリメントとしての製品化を進めているという。同製品が市場に投入されれば、アレルギー性鼻炎患者の42%にあたる、医療機関での積極的治療までは考えていない人々にも広く受け入れられると期待しているとしている。

また、動物実験でEPSが潰瘍性大腸炎の改善に有効であったことから、研究グループは医師主導型の治験を通じ、治療薬としての開発も目指し、製薬企業との産学連携研究を模索している。

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