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新規認知行動療法UP、通常治療への追加で精神障害への有効性を確認-NCNPほか

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2022年01月12日 AM11:15

NCNP病院へ受診の成人104人対象、通常治療を続ける条件・通常治療+UP条件を比較

)は1月11日、感情障害への診断を越えた治療のための統一プロトコル(UP:ユーピー)が、うつ病や不安症などのさまざまな精神障害に対して有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、NCNP認知行動療法センターの伊藤正哉部長、堀越勝特命部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Psychological Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより

うつ病や不安症などの精神障害は、個人の人生に対しても、社会全体にも大きな影響を与えており、グローバルな精神保健上の問題として認識されている。うつ病や不安症に対しては、さまざまな治療法がある。中でも、認知行動療法はエビデンスが集積している治療法のひとつだ。これまで、それぞれの精神疾患に特化した認知行動療法が開発され、その有効性が検証されてきた。

例えば、パニック症に対しては、パニック症に特化した認知行動療法が開発されてきた。その一方で近年、精神医学や臨床心理学において、単一の精神障害に限定せずに、診断を越えた(Trans-diagnostic)発想に基づく認知行動療法が注目されるようになった。その背景には、異なる診断とされてきた精神障害には、共通する症状や特徴が認められたり、共通する病因が想定されたりするようになってきた点が指摘される。共通の病因があるのであれば、それを標的として介入法を開発することで、さまざまな異なる精神障害に対して認知行動療法を幅広く適用できるという発想に基づいている。

日本においては、、パニック症、、強迫症、心的外傷後ストレス障害などさまざまな精神障害に対して、それぞれに特化した認知行動療法が診療報酬の対象として含まれた。このように、日本においても認知行動療法が着実に普及しつつある。しかし、必要とする人に十分に提供できていると言える状況ではない。診断を越えた認知行動療法は、特定の疾患にとらわれずに実施でき、併存障害を抱える者にも適用可能できると想定されている。このように、診断を越えた認知行動療法は、グローバルメンタルヘルスの解決に向けたひとつのアプローチとして、注目されてきた。

今回の研究では、診断を越えた認知行動療法の中でも、最もエビデンスが集積されている「感情障害に対する診断を越えた治療のための統一プロトコル(UP:ユーピー)」の有効性を検証。具体的には、うつ病や不安症を主な診断としてNCNP病院に外来受診している成人104人を対象として、通常の治療を続ける条件と、通常の治療にUPを加える条件を比較した。最も重要な評価項目は、治療開始後21週におけるGRID-ハミルトンうつ病評価尺度(GRID-HAMD)で測定されるうつ症状。その他に、不安症状、全般的な臨床的な重症度、研究参加時からの回復度等を評価した。

UPを加える条件で、うつ症状、不安症状、全般的な重症度を改善

研究の結果、通常の治療を続ける条件と比べて、UPを加える条件のほうがうつ症状、不安症状、全般的な重症度が改善しており、より大きな回復が確認された。これらは、不安症を対象として報告されてきた先行研究の有効性と同等だった。ただし、うつ症状の半減で定義される治療反応、GRID-HAMDで軽症相当の7点以下で定義される寛解状態、精神障害の診断の喪失については、治療開始21週後の両条件で有意な差は認められなかった。また、UPの実施によって重篤な有害事象が生じることはなかったとしている。

長期間の精神医療継続で比較的重篤な症状を有している者へも、UPが有効な可能性

この臨床試験の参加者の半数以上が複数の精神障害を併存させ、精神科に初めて受診してから長い治療期間があり(中央値7.8年)、うつや不安の重症度は先行研究の参加者よりも重篤だった。このため、複数の精神障害に苦しみ、長い期間の精神医療を続けつつも、比較的重篤な症状を有している者に対しても、UPが有効である可能性を示したと考えられる。

今後、個々人にUPを最適化する研究を

上記のように、日本の精神科という医療環境において、通常治療のみに比べて、それにUPを追加して実施することが、うつ病や不安症などを有する者の症状の改善に有効であることが示唆された。今後は、UPによって回復した人とそうでない人を分ける要因を明らかにして、個々人にUPを最適化する研究や、UPを効率的に幅広く提供していくための研究が求められる。

NCNP認知行動療法センターでは、産業技術総合研究所(西村拓一氏)、(竹林由武氏)、東洋大学(樫原潤氏)、(古徳純一氏)、専修大学(国里愛彦氏)、(村中潤氏)、(菅原大地氏)、Hmcomm株式会社(三本幸司氏)などの国内のさまざまな機関とともに、人工知能技術を適用した研究事業を進めている、としている。

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