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食道がん術前化学療法のBTと重度胃腸障害をシンバイオティクスが抑制-ヤクルトほか

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2021年12月22日 PM12:15

術前化学療法でもBTは発生するのか?シンバイオティクス摂取による影響を検証

株式会社ヤクルト本社は12月21日、シンバイオティクス摂取が、術前化学療法を受ける食道がん患者のバクテリアルトランスロケーション(以下、)と重度の胃腸障害を抑制することを確認したと発表した。この研究は、同社と名古屋大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Nutrition」に掲載されている。


画像はリリースより

食道がんの治療では、抗がん剤を用いた化学療法をしてから手術を行うのが一般的だが、食道がんの代表的な根治手術である開胸開腹食道切除術は侵襲が大きく、術後に重篤な臓器障害や感染性合併症を生じ、患者の予後に大きな影響を与えることが問題となっている。食道がん患者では、手術によって術後感染症の一因となるBTが誘発されるが、術前・術後の管理にシンバイオティクスを用いることにより、術後に生じるBTを抑制できることが、これまでの研究で明らかになっている。

一方で、術前化学療法も胃腸粘膜に強く影響し、悪心、嘔吐、口内炎、下痢を頻繁に誘発することから、BTを生じる可能性が考えられるが、術前化学療法によるBT発生については明らかにされていなかった。そこで研究グループは、術前化学療法によるBTの発生を明らかにし、さらにそのBTをシンバイオティクスで防御できないか、食道がん患者を対象とした無作為化比較試験で検証した。

シンバイオティクス摂取群のBT発生率、非摂取群と比較して有意に低い

研究では、術前化学療法を必要とする食道がん患者42人をシンバイオティクス摂取群と非摂取群にランダムに分けた。摂取群には、術前化学療法の7日前から手術の1日前まで毎日、シンバイオティクスとして乳酸菌「ラクチカゼイバチルス パラカゼイ シロタ株(以下、L.パラカゼイ・シロタ株)」を400億個含む発酵乳飲料1本(80ml)、「ビフィドバクテリウム ブレーベ ヤクルト株(以下、B.ブレーベ・ヤクルト株)」を100億個含む発酵乳飲料1本(100ml)およびガラクトオリゴ糖液糖15gを摂取してもらった。

術前化学療法は、開始1日目と22日目にシスプラチン、1~5日目および22~26日目に5-フルオロウラシルの投与を1サイクルとして2サイクル行われ、化学療法完了後の4~5週以内に手術が行われた。また、化学療法開始前、第1サイクル開始後、第2サイクル開始前、第2サイクル開始後、手術直前に血液および糞便を採取し、開腹時および腫瘍切除時に腸間膜リンパ節(以下、MLN)を採取した。血液、糞便およびMLNの細菌はYIF-SCAN(R)を用いて解析した。また、糞便中の有機酸濃度は高速液体クロマトグラフィー、糞便のpHはpHメーターを用いて測定した。

その結果、シンバイオティクス非摂取群では、化学療法期間中の血液中および術中のMLNから大腸菌群やブドウ球菌、腸内で最優勢な偏性嫌気性菌が検出され、BTの発生が確認された。非摂取群のBT発生率は、血液中では15.8%、MLNでは35.3%だった。一方、シンバイオティクス摂取群のBT発生率は、血液中が2.0%、MLNにおいては0%であり、非摂取群と比較して有意に低いことが確認された。

摂取群では化学療法で起こる重度胃腸障害の発生率も低下、腸内環境も改善

化学療法によって起こる重度(Grade3以上)の胃腸障害の発生は、非摂取群(約36%)と比較して、摂取群(約5%)の方が有意に抑えられることが確認された。

さらに、摂取群では全ての患者の糞便から、L.パラカゼイ・シロタ株およびB.ブレーベ・ヤクルト株が検出され、その検出菌数のレベルは非摂取群に比べて有意に高いことが確認された。また、摂取群では、BTの起因菌である大腸菌群、ブドウ球菌の糞便中菌数が、非摂取群と比較して、有意に少ないことも確認された。

腸内環境については、糞便中の主要な有機酸であり、腸管上皮のバリア機能の維持や有害菌の増殖抑制などに重要である酢酸の濃度が、非摂取群と比較して摂取群の方が有意に高いことがわかった。また、pHは非摂取群と比較して摂取群の方が有意に低い値を示したとしている。

シンバイオティクスが術前化学療法を受ける患者のがん治療中の負担を軽減する可能性

食道がんは女性に比べて男性の罹患率が高く、男性において年々増えつつある。食道がん患者における術前化学療法や開腹開胸を伴う手術は、患者の負担が大きく、有害事象や感染性合併症が生じた場合には患者の生活の質の低下につながる。安全性が十分確認されているシンバイオティクスの摂取は、術前化学療法を受ける患者の腸内環境の改善を介してBTおよび胃腸障害の発生を抑制し、がん治療中の負担を軽減する可能性が今回の研究から示された。

「今後、シンバイオティクスによる医療領域でのさらなる活用が期待されることから、有用性の拡大につながる研究を進めていく」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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