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新型コロナによる重症呼吸不全治療に関する「同意説明」の実態調査-東京医歯大

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2021年12月06日 PM12:00

2020年12月から4か月、入院患者・家族を調査

東京医科歯科大学は11月29日、同大学病院に入院した新型コロナウイルス感染症()重症呼吸不全患者とその家族を対象に、インフォームド・コンセントの実態および、ECMOトリアージに対する意見について調査を行い、その結果を発表した。この調査は、同大生命倫理研究センターの吉田雅幸教授、甲畑宏子講師の研究グループによるもの。調査結果は、日本生命倫理学会第33回年次大会で報告された。


画像はリリースより

COVID-19によって、人工呼吸器やECMOの使用が医学的に必要になったときに患者やその家族が納得した形で意思決定できることは、コロナ禍における医療の信頼性維持のために重要である。これを実現するには、治療開始時に医療者からの十分な説明と、理解に基づく納得した意思決定が重要だ。しかし、感染症対策として制限された環境下で行われる説明と同意にはさまざまな困難が予想される。

同大学病院ではCOVID-19患者をのべ500人以上(11月1日現在)受け入れてきた。この実績を基に、COVID-19呼吸不全治療に関する説明と同意の現状を明らかにするとともに、医療資源のトリアージに関する当事者の意見を聞く必要があると考え、その第一歩として2020年12月~2021年3月に質問紙調査を実施した。

明確に治療に関する意思表示ができた入院患者は1割

患者17人、家族14人から回答を得た。当院入院時に医師から説明を受けた人について調査した結果、当院搬送時、すでに患者の意識レベルは低く、家族だけで説明を受けたケースは31例中17例と半数以上に及んでいた。この結果から、COVID-19呼吸不全が重症化した場合には、今後の治療方針に関する重要な説明を患者自身が聞くことができない状態となる可能性が高く、家族のみが説明を受ける状況が想定される。

入院時に医師から説明を受けることができた患者8人のうち、明確に治療に関する意思表示ができたのは2例・約2割であり、意思表示をしたかどうか覚えていない例は5例と約6割だった。この結果から、入院患者のうち明確に治療に関する意思表示ができたのは患者回答者17人中2人の約1割であり、ほとんどのケースでは家族が治療方針の意思決定の役割を担っていることが明らかとなった。

患者の意向がわからない状況で治療方針の決定が必要だった家族が約6割

また、治療に対する説明を受けた家族13人のうち12人が明確に意思表示をしていたが、意思表示内容は「延命治療を望まなかった」が5例と約4割だった。この5例について、回答者である家族に患者の年齢、患者自身の意向を確認したところ、患者の年齢層は50~90歳代と広く、患者自身も延命治療を望んでいないケースが3例あったが、残り2例については患者の意向は不明な状態だった。

治療に関する意思表示を行った家族12人について、家族の意向と患者の意向が一致していた例は4例・約3割だったが、患者自身の意向がわからない状態で意思表示をした例が7例と最も多く、約6割に及んでいた。つまり、家族の約6割は、患者の意向が分からない状況で治療方針の決定をしなければならない状況だった。

ECMOトリアージに対しては、条件付きを含め、回答者全員が「納得できる」と回答。条件については、「患者の年齢」や「ECMOが不足していること」については、患者・家族ともに重要と回答。しかし、それ以外の項目は、患者と家族で重要と考える条件に違いがみられた。この結果から、ECMOトリアージについては、特定の条件下であれば、当事者の支持が得られる可能性が示唆された。

ACP実施によるCOVID-19治療に関する事前の意思表示などが推奨される

日本では、2021年6月下旬~10月、新型コロナウイルス感染症のいわゆる「第5波」において、これまでにない感染者および重症患者の急増による医療体制のひっ迫が深刻な問題となった。肺炎が重症化した患者は、人工呼吸器の使用が必要となり、さらに悪化すればECMOへの移行も必要となる。しかし、これら医療機器の使用については2つの倫理的な問題がある。

1つ目は、意思決定に関する問題である。通常、これらの機器を使用する場合には、患者やその家族は使用のメリット、デメリットを含めて説明を受け、検討した上で意思決定を行う。しかし、新型コロナウイルス感染症患者に対する使用においては、症状の急速な悪化に伴う意識レベルの低下、家族が濃厚接触者であることによる感染対策などにより、患者本人のみならず家族においても同意説明および意思確認に困難を伴う。2つ目は、医療スタッフや医療機器など医療資源の量的制約がある中で、重症患者が同時に多数発生した場合に、人工呼吸器やECMOをどう有効活用していくか、といったトリアージの問題である。

今回の調査により、重症患者は入院時点で意識レベルが低く明確な意思表示が行える状態ではないこと、患者に代わり意思決定を行わなければならない家族の約半数は患者の意向がわからない状況で判断を行わなければならなかったことが明らかとなった。トリアージについては、当事者である患者、家族からの支持が、条件によっては得られる可能性が示唆されたが、それらの是非や公平・公正な条件設定については、更なる慎重な議論が必要だ。

治療や介護の方針を事前に決めておくACP(Advance Care Planning:もしものときのために自分が望む医療やケアについて、健常時に繰り返し話し合い、家族や医療者と共有するプロセス)の実施がCOVID-19に関しても推奨されている。人工呼吸器やECMOを装着された後に、患者に起こり得ることを知っておくことは、これらの使用に関する意思決定を助け、また、ACPによる事前の意思表示や家族との話し合いの促進にもつながるものと考えられる。研究グループは「COVID-19により患者に起こり得ることを一般市民がイメージできるよう、医療者は必要な情報を発信し、普及啓発に努めるべき」と、述べている。

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