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IgG4関連疾患、診断での「類似疾患除外基準」有用性を確認-岡山大ほか

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2021年12月02日 AM11:30

iMCDとの鑑別のため、2020年にIgG4関連疾患「類似疾患除外基準」提唱

岡山大学は11月30日、IgG4関連疾患の診断における「類似疾患除外基準」の有用性について検証し、有用性を確認したと発表した。この研究は、同大大学院保健学研究科の錦織亜沙美大学院生、岡山大学病院病理診断科の西村碧フィリーズ医師、学術研究院保健学域の佐藤康晴教授ら、厚生労働省の研究班員の研究グループによるもの。研究成果は、「Pathology International」に掲載されている。

IgG4関連疾患は、抗体の一種であるIgG4の産生が亢進し、全身のさまざまな臓器に腫瘤形成や線維化を引き起こす指定難病。一方、特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)も原因不明の難病で、全身のリンパ節の腫れや、発熱・倦怠感といった全身症状を示す。両疾患の診断には、病変から採取した組織を顕微鏡で観察し、特徴的な組織像を確認することが必要だが、どちらも似た組織像を示すため、鑑別が難しい場合がある。

現在用いられているIgG4関連疾患の診断基準は、臨床所見と組織像の両方を総合的に判断するよう定めている。しかし、iMCDの中には、IgG4関連疾患の診断基準を満たす症例が少なからず存在し、誤った診断がなされるという問題がある。両疾患は薬物療法への反応性や治療法が異なるため、正確に診断することが重要だ。こうした問題点を踏まえ、2020年にはIgG4関連疾患の「類似疾患除外基準」が提唱された。

IgG4関連疾患の診断基準満たすiMCD症例、類似疾患除外基準で全て除外

この除外基準では、過去に報告された多くの論文の記述をもとに、IgG4関連疾患で非典型的な臨床・組織所見の項目が述べられており、その所見がみられた場合には診断を見直す必要があると記されている。しかし、この除外基準の有用性は未検証だった。そこで、今回の研究ではiMCDを対象にこの除外基準の有用性を検証した。

今回、IgG4関連疾患の診断基準を満たすiMCD症例を集め、それらの症例に対してIgG4関連疾患の「類似疾患除外基準」を当てはめ、有効に除外されるのか検証。その結果、全てのiMCDがIgG4関連疾患から除外され、この基準の有用性が確認された。

専門家以外にも広く普及することで、正しい診断へ

この「類似疾患除外基準」の目的は、治療法の異なる類似疾患が、安易にIgG4関連疾患と誤って診断されるのを防ぐことにある。同基準が、専門家以外にも広く普及することで、正しい診断につながり、これらの病気で苦しむ方々が適切な診断・治療を受けられることが期待される、と研究グループは述べている。

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