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アルコール依存症の相談から治療へつなぐ 行政と医療機関における連携と取り組み

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2021年11月19日 PM01:00

2021年3月、第2期アルコール健康障害対策推進基本計画が発表された。同計画では、アルコール問題を抱える当事者やその家族からの相談や医療へのアクセスが不十分な現状と治療ギャップがあるため、相談や治療等に円滑に結びつくよう支援することを重点課題のひとつと位置付けている。大塚製薬株式会社は2021年10月、アルコール依存症Web講演会「相談から治療へ」を開催。自治体と医師との連携による重層的な支援と、当事者の受診ハードルを下げ治療継続を促す取り組みについて、それぞれ自治体担当者と医師が解説した。

講演会ではまず、佐賀県精神保健福祉センター所長の永田貴子氏が登壇。アルコール問題を抱える当事者を相談から医療につなぐ佐賀県の取り組みを紹介した。

自治体と医師が連携し、問題を抱える当事者を相談から治療へスムーズにつなぐ

永田氏は、アルコール問題を抱える当事者を適切な支援や医療につなぐうえで、相談拠点である精神福祉センターと治療拠点である病院や医師との連携を重視。相談員と医師が県内各地の保健所に出向いて現地で相談を受け付ける「出張相談事業」に触れた。

出張相談事業では、佐賀県精神保健福祉センターの相談員と、センターから委嘱された依存症の医師が相談を受ける。アルコール問題を抱える当事者にとっては地元で専門家にアルコール問題を相談できる点がメリットだ。また、各保健所へ相談員が出向くことで精神保健福祉センターとの関係強化につながるだけでなく、医師が現地に足を運ぶことで自治体と医師とが顔の見える関係が構築され、重層的な支援が可能になる。

さらに、県内の依存症治療拠点病院3か所でアルコール問題の診療を行っている医師に依存症相談を委嘱することで、相談がそのまま治療につながるケースも出てきている。

永田氏は、今後は出張相談でカバーしきれない地域の当事者にいかにアクセスしてもらうかを課題に挙げ、ITを活用したオンライン相談の導入も検討中という。県では、問題を抱える当事者が社会の中のどこにいても、途切れることのない重層的な支援の構築を目指していきたいと述べた。

一般内科で減酒治療 ―― 受診ハードルを下げて治療ギャップ解消へ

続いて、アルコール低減外来を開設し治療にあたっている筑波大学医学医療系総合診療医学准教授の吉本尚氏が登壇。アルコール問題を抱える当事者の受診ハードルを下げる試みについて紹介した。

アルコール問題を抱える当事者が治療につながりにくい理由として、吉本氏は1)アルコール依存症であることを周りに知られたくない、2)断酒という治療目標への抵抗、3)心療内科や精神科への受診ハードル、があると解説。これらの問題に対し、断酒以外の治療選択肢を与えること、精神科・心療内科以外の受診場所をつくることが必要であるとの考えから、同氏は2019年に北茨城市民病院附属家庭医療センター、2021年に筑波大学附属病院の総合診療科にアルコール低減外来を設置した。

設置以来約2年半の期間に100名弱の受診があり、受診者のほとんどは過去にアルコール問題の治療を受けた経験がなく、医師療機関の受診歴もなかった。現在では断酒や減酒を達成している患者も多く、治療の継続率も高い。「アルコール問題を抱える患者にとって、一般の患者に交じって内科を受診できることは精神的負担が軽い。また、減酒治療は断酒に比べ前向きに取り組みやすいため、治療ギャップ解消に役立つのではないか」(吉本氏)。

今後は、内科標榜の医療機関にアルコール低減外来をさらに増やしていくことを検討しているという吉本氏。医療者側のトレーニング不足や診療報酬面の整備などを課題として挙げ、内科領域でアルコール依存症の治療が可能となるような環境整備が進むことへ期待を寄せた。

世界的にもアルコール依存症の領域はケアが最も不十分であり当事者が治療につながりにくい、とされているため、今後同様の取り組みが各都道府県に広まることが強く望まれている。

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大塚製薬 プレスリリース

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