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COVID-19、高齢・肥満などが重症化リスク因子となるメカニズムにGPR78が関与-阪大

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2021年11月04日 AM11:30

シャペロンタンパク質GRP78、ウイルス複製や細胞侵入などに関与

大阪大学は10月28日、)が高齢者や肥満、糖尿病のヒトに危険な理由として、脂肪組織とGRP78の関与を新たに提唱したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科のシンジフン助教(糖尿病病態医療学寄附講座)、下村伊一郎教授(内分泌代謝内科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

GRP78は小胞体に局在し、タンパク質が正常な高次構造を維持するように助けるシャペロンタンパク質としてよく知られている。ストレス環境では、GRP78は細胞表面や血中に分泌され、内因性・外因性のタンパク質と結合しさまざまな病態に関係している。また、GPR78はさまざまなウイルスと結合し、ウイルスの複製や細胞への侵入などウイルスのライフサイクルに関与していることが知られている。しかし、GPR78とCOVID-19の関連については不明だった。

GRP78は高齢・・糖尿病状態の脂肪組織で高インスリン環境により高発現

今回、研究グループは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を用いた生化学実験やさまざまなトランスクリプトーム解析を通じ、COVID-19が、高齢や肥満、糖尿病のヒトに危険な理由として脂肪組織とGRP78の関与を新たに提唱した。

まず、ストレスにより発生する細胞表面型・分泌型GRP78がSARS-CoV-2のスパイクタンパク質と結合し、ACE2発現細胞への集積を増強させることを見出した。

続いて、GRP78の発現はCOVID-19の危険因子としてよく知られている高齢や肥満、糖尿病状態の脂肪組織で高発現していることを明らかにした。また、その主な理由は高インスリン環境であることを発見したという。

既存の抗糖尿病薬・生活習慣改善で、COVID-19予防や治療の可能性示唆

COVID-19の研究期間はまだ短く、COVID-19に関する基礎知識や治療ターゲットへの情報は不足している。今回の研究は、細胞外GRP78、特に分泌型のGRP78がSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し、ACE2発現細胞への集積を増強させることを発見した初の報告だ。

脂肪組織のGRP78は、COVID-19の危険因子として挙げられている高齢や肥満、糖尿病など高インスリン環境により発現が誘導される。既存の抗糖尿病薬、食事や運動など生活習慣の改善によりその発現を抑制できることから、今後のCOVID-19の予防や治療への可能性が示唆される、と研究グループは述べている。

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