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子どもの「神経性やせ症」初診外来患者、コロナ禍で約1.6倍に-成育医療センターほか

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2021年10月26日 AM11:15

新入院者数も約1.4倍に増加、摂食障害の病床充足率200%を超え施設も

国立成育医療研究センターは10月21日、新型コロナウイルス感染症流行下の子どもの心の実態調査を行い、コロナ流行前の2019年度と比較し、2020年度では神経性食欲不振()の初診外来患者数が約1.6倍、新入院者数が約1.4倍に増加していたことが判明したと発表した。調査は、2021年4月30日~6月30日に同センターの子どもの心の診療ネットワーク事業が実施したもので、全国26の医療機関にアンケートを送付し、20歳未満の患者について回答を得た。


画像はリリースより

子どもの心の診療ネットワーク事業拠点病院から、コロナ禍で神経やせ症の患者が重症化し、入院期間が延びているとの報告もあった。しかし実際には、摂食障害の患者のための病床数が不足していることがわかった。摂食障害の病床充足率について回答があった5施設のうち、4施設で病床使用率が増加しており、充足率(現時点で摂食障害で入院している患者数/摂食障害の入院治療のために利用できる病床数×100)が200%を超える施設が2施設あった。

このことから、摂食障害を治療できる医療機関が少ないこともあり、特定の施設に入院患者が集中していることが推測された。また、新型コロナウイルス感染者への病床数を増やしたため、摂食障害の患者の入院まで対応できなくなったことが影響している可能性も考えられるという。

ストレスや「コロナ太り」対策の情報に子どもたちが影響を受けた可能性

神経性やせ症の患者増加の背景には、緊急事態宣言や学校の休校などの生活環境の変化によるストレス、子どもたちが感染対策のために家に引きこもっていること、行事などのアクティビティが中止になったこと、友達に会えないこと、新型コロナウイルス感染症への不安などがあると推測された。同センターが以前に実施した「コロナ×こどもアンケート」の第3回調査(2020年9〜10月実施)では、回答者(6〜18歳)全体の73%に、第5回調査(2021年2〜3月実施)では76%に、何らかのストレス反応がみられていた。

さらに、「コロナ太り」対策のダイエット特集の報道やSNSでの情報に、子どもたちが影響された可能性も考えられるという。第4回調査(2020年11〜12月実施)では、「あまり食欲がない、または食べ過ぎる」と回答した子ども(9~18歳)が、全体の約半数だった(過去7日間のうち、数日、半数以上、ほとんど毎日と回答した者の合計)。また、第5回調査では、いまの自分の体型について、回答者(9~18歳)全体の38%が、「太りすぎ」「太りぎみ」と思っていると回答し、48%がやせたいと思っていると回答していた。さらに、やせるために、回答者全体の4%が「食事の量を普段の3分の2以下に減らす」、2%が「食べたものを吐く」と回答していた。これらから、「コロナ禍の子どもの心の実態調査」で判明した患者数以上に、摂食障害の潜在患者や予備軍の子どもがいる可能性も推測されるという。

摂食障害を診察できる医療機関の拡充、家庭や教育機関での気配りなどの対策を

神経性やせ症とは、摂食障害の一つで、極端に食事制限をしたり、過剰な食事後に吐き出したり、過剰な運動を行うなどして、正常体重より明らかに低い状態になる疾患である。病気が進行すると、日常生活に支障をきたすこともある。米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)では、1.正常の下限を下回る低体重、2.肥満恐怖あるいは体重増加を妨げる行動の持続、3.自己評価に体重や体型が不相応な影響を受け、低体重の深刻さが認識できないなどの特徴が挙げられている。

「神経性やせ症患者が増加し、また入院日数も伸びていることから、入院病床数を確保することが必要になっている。また摂食障害を診察できる医療機関の拡充も求められている。神経性やせ症の場合、本人が病気を否認して医療機関での受診が遅れがちだ。子どもの食欲や体重の減少に家族や教育機関で気を配り、深刻な状態になる前に、まずは内科、小児科などのかかりつけの医を受診することが必要」と、研究グループは述べている。

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