医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > エンテロウイルスD68、従来法より正確に検出できる新規PCR法を開発-新潟大

エンテロウイルスD68、従来法より正確に検出できる新規PCR法を開発-新潟大

読了時間:約 2分51秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年10月21日 AM11:45

周期的に流行し重い呼吸器疾患や脊髄炎を起こすウイルス、従来法では検査不十分

新潟大学は10月20日、これまで標準的に使われてきた方法よりも、エンテロウイルスD68をより正確に検査できる方法を新しく開発したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科小児科学分野の幾瀨樹大学院生、齋藤昭彦教授ら、同研究科バイオインフォーマティクス分野の奥田修二郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Microbiology」に掲載されている。


画像はリリースより

エンテロウイルスD68感染症は、喘息に似た呼吸器疾患である喘息発作様呼吸器疾患や、手足に麻痺をきたし高率に後遺症を残す急性弛緩性脊髄炎を起こすことがある。国外は2014年、2016年、2018年と、国内では2015年、2018年と周期的な流行が見られている。エンテロウイルスD68による喘息発作様呼吸器疾患は通常の気管支喘息発作よりも重くなることが多く、集中治療室での治療が必要なことがある。また急性弛緩性脊髄炎では四肢の麻痺を起こし、約半分の患者に後遺症を残す。

エンテロウイルスD68の検出や遺伝子の細かい解析にはPCR法が一般的だ。米国ワシントン大学や米国疾病予防管理センター(CDC)が開発したPCR法が、エンテロウイルスD68の検出や塩基配列の解析の標準的な検査方法。しかし、研究グループの検討によると、それらの方法では、近年流行しているウイルス株に対して十分対応できていないことが判明したという。

従来法のPCR部位に変異を発見、感度・特異度の高い新規PCR法を開発

今回、研究グループは、2014~2018年に流行したエンテロウイルスD68のRNAの塩基配列を解析し、PCR法で確認する場所の遺伝子を細かく解析。すると、これまでの標準的な方法で見つける場所には、遺伝子の変異が見つかった。そこで、変異に合わせて2種類の新しいPCR法を開発。1つはウイルス検出のためのリアルタイムPCR(NU assay)、もう1つは遺伝子をより細かく調べるためのPCR(N-Set)だ。

この方法の有用性を検証するために研究グループは、エンテロウイルスD68の22検体と、エンテロウイルスD68以外のウイルス135検体を使って、(NU assay)の感度と特異度を調べ、同様にPCR(N-Set)の感度についても調べた。感度については、従来の標準的なワシントン大学の方法と比較。また、これまでに登録されているエンテロウイルスD68の遺伝子(540個)、D68以外のエンテロウイルスの遺伝子(3,683個)などを使ってコンピューターで解析し、新しく開発したPCR法がこれまでに登録されているエンテロウイルスD68と同じかどうかを調べた。

エンテロウイルスD68の22検体で、新しく開発したリアルタイムPCR法(NU assay)とこれまでの標準的検査法のPCR法で検査した結果、新しい方法でPCR陽性率が上昇(100% vs 45.4%)。エンテロウイルスD68以外のウイルス135検体については、新規PCR法では陽性になることはなかった。

過去流行時の急性弛緩性脊髄炎検体を振り返り解析、従来法1例、新規法3例検出

塩基配列を調べるためのPCR(N-Set)については、標準的なCDCの従来法と比べてPCR陽性率が高かった(90.9% vs 72.7%)。また、登録されている過去のエンテロウイルスD68の塩基配列と、新しいPCR法との相性をコンピューター解析したところ、特に2015年以降のエンテロウイルスD68の塩基配列との相性が良いことが判明した。

続いて、2015年と2018年のエンテロウイルスD68流行時期に新潟県内に認められた急性弛緩性脊髄炎の11症例の血液、髄液、咽頭拭い液、便などの検体に従来法と新規PCR法を実施。その結果、これまでの方法では1例のみエンテロウイルスD68が陽性だったのに対し、新しい方法では3例で検出された。

より正確な診断、患者の把握が可能になる可能性

急性弛緩性脊髄炎の症例を振り返って調べ直し、従来の方法では検出できなかったエンテロウイルスD68が検出されたように、今までに原因ウイルスが特定されていない急性弛緩性脊髄炎の検体を再度検査し直す必要があると考えられる。

また、エンテロウイルスD68は2014年以降世界的に周期的な流行を示している。今後も国内外で大きな流行を起こす可能性があり、その際には、今回開発された方法を用いて、国内はもちろん、世界におけるサーベイランスを行うことで、より正確な診断、患者の把握が可能になると考えている、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 女性型XLSA、iPS細胞技術で初の病態モデル作製、治療薬候補AZAを同定-CiRA
  • SLE患者に伴うステロイド関連大腿骨頭壊死症、疾患感受性遺伝子領域を同定-理研ほか
  • 高齢者の腎臓病の悪化に関わる原因細胞と分子を同定-京大
  • 脳動脈解離診療の国際ガイドラインを作成-国循ほか
  • IgG4関連疾患、診断での「類似疾患除外基準」有用性を確認-岡山大ほか