インフルエンザとCOVID-19の相違点と類似点――AHAニュース
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、病名も異なれば原因ウイルスも異なる。しかし両者は、自分自身を守るための手段を含め、多くの共通点がある。米メイヨークリニックのPriya Sampathkumar氏は、「両者のウイルスはともにさまざまなタイプがあり、いずれも感染症を起こし得る」と解説する。

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米疾病対策センター(CDC)によると、インフルエンザとCOVID-19はともに軽症で済むこともあれば重症化することもある。いずれも倦怠感、体の痛み、発熱、悪寒、咳、頭痛が現れやすく、COVID-19では息切れ、鼻水、嗅覚・味覚障害がより多く見られる。ただしSampathkumar氏によると、「症状だけから両者を区別することは難しい」とのことだ。さらに感染経路も類似していて、どちらのウイルスも上気道で増殖し、咳や会話の際の飛沫によって伝播する。
また、両者ともに、感染した人に症状が現れる前に他者に伝播する可能性がある。CDCによると、インフルエンザウイルスは発症の1日前から7日間が他者に伝播するリスクが高い時期であるのに対して、新型コロナウイルスは発症の約2日前から伝播のリスクがあり、発症後の少なくとも10日間はそのリスクが続くという。
さらに、両者ともに致命的となることがある。そして、感染した際の影響は人により大きく異なる。Sampathkumar氏は、「インフルエンザとCOVID-19の違いの一つは、幼い子どもへの影響だ。幼い子どもはCOVID-19罹患リスクがやや低いと考えられるが、インフルエンザに罹患した子どもは症状が重くなりやすい」と語る。
一方、「ウイルス感染症罹患時の重症化リスクの高い人のリストには、心疾患患者が含まれる」と話すのは、米クリーブランド・クリニックのDeborah Kwon氏だ。同氏はまず、2018年に「The New England Journal of Medicine」に掲載された、インフルエンザと診断された後の1週間は心臓発作のリスクが6倍に上昇するというデータを紹介した上で、「インフルエンザとCOVID-19の原因ウイルスはどちらも同じように血小板の働きを高めるように働き、血栓を引き起こす可能性がある」と解説する。
ただし幸いなことに、インフルエンザとCOVID-19は、その感染を予防するための対策も同じだ。マスクを着用し、物理的な距離を保つこと、少なくとも1回20秒以上の時間をかけて手をこまめに洗うことだ。そして、両者ともにワクチンがある。
CDCは、12歳以上の全ての人にCOVID-19ワクチン接種を推奨し、生後6カ月以上の全ての人にインフルエンザワクチン接種を推奨している。「Journal of the American Heart Association」に今年3月掲載された研究では、インフルエンザワクチンは心疾患患者の死亡リスクを下げることが示されている。
しかし、社会の混乱は続いている。米国心臓協会(AHA)が行ったオンライン調査によると、米国民の27%がワクチン接種によってインフルエンザに感染することがあると誤解していた。また、12%の人はCOVID-19とインフルエンザのワクチンの同時接種はできないと考えていた。実際は、米国では同時接種が可能だ。
「健康な若年者であればワクチン接種を受けずにウイルスに感染したとしても、重症になる確率は低いかもしれない。しかし、ワクチン接種を受けることで、ほかの人に感染させてしまうリスクが抑制され、高齢者や免疫不全状態にある人など、ワクチンを接種してもその効果を十分に得られない可能性のある人を守ることにつながる。自分のためだけでなく、ほかの人のためにも接種を受けてほしい」とSampathkumar氏は力説する。
▼外部リンク
・Acute Myocardial Infarction after Laboratory-Confirmed Influenza Infection
・Effects of Influenza Vaccine on Mortality and Cardiovascular Outcomes in Patients With Cardiovascular Disease: A Systematic Review and Meta‐Analysis
・Despite risks, 60% of Americans say they may delay or skip the flu shot this year
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Photo Credit: Brothers91/E+, Getty Images