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コレステロール代謝が関わる炎症抑制機構を発見、炎症性疾患の新治療に期待-慶大ほか

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2021年10月13日 AM11:45

IL-27が炎症を収束させる仕組みは?

慶應義塾大学は10月11日、コレステロール代謝に関連した新たな炎症抑制機構を発見したと発表した。この研究は、同大医学部皮膚科学教室の高橋勇人准教授、天谷雅行教授、米国国立衛生研究所菅野由香博士(Staff Scientist)、ジョン・オシェア博士(Scientific Director)らの国際合同研究グループによるもの。研究成果は、「Science Immunology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

コレステロールはヒトの細胞の活動に必要な構成要素で、体内の酵素によりオキシステロールに代謝される。細胞内のコレステロールとオキシステロールの量が増えると、コレステロールの合成が止まり、細胞内コレステロール濃度が適正に保たれる仕組みはすでに知られていた。一方、体内で生じた炎症はさまざまな仕組みで適切に収束されることで、組織に余計な損傷を与えることなく消えていく。例えば感染症では、ウイルスや細菌などの病原体を排除するために炎症が生じるが、炎症を収束する適切な仕組みが存在するため、病原体をきちんと排除しながらも、適切なタイミングで炎症が落ち着き、組織は正常な状態に戻る。インターロイキン-27()は、この炎症を収束させる機構の一つとして重要なサイトカインで、IL-27を欠失したマウスでは、感染症の際に、組織が必要以上の炎症による損傷をうけることが知られている。しかし、IL-27が炎症を収束させる仕組みは、完全には理解されていなかった。

IL-27<Ch25h発現CD4+T細胞を炎症局所に誘導<25OHC分泌<周囲の免疫細胞のコレステロール不足<炎症収束

今回、研究グループは、まずIL-27がCD4陽性T細胞に作用すると、T細胞がコレステロール25-水酸化酵素(Ch25h)を発現し、その代謝産物である25水酸化コレステロール(25OHC、オキシステロールの一種)を分泌することを示した。25OHCを、活性化したCD4陽性T細胞(炎症と関係)に作用させると細胞が死滅した。一方、活性化していないT細胞(炎症と無関係)ではこの作用は観察されなかった。

そこで、25OHCの作用をうけ、死滅していくT細胞を調べると、細胞のコレステロール合成機能が著しく低下しており、T細胞がコレステロールを作り出すことができない状態にあることがわかった。コレステロールを外から補充すると細胞の死滅を回避できたことから、25OHCによるT細胞の死滅は、細胞内のコレステロールが不足するために生じていると判明した。

次に、皮膚の表皮細胞を攻撃する自己反応性CD4陽性T細胞が皮膚炎を起こす動物モデルを用いて、生体内でのCh25hの機能を検証した。この皮膚炎モデルでは皮膚に入り込んでいるT細胞にCh25hの発現が確認されたが、皮膚の所属リンパ節のT細胞では確認されなかった。つまり、皮膚炎を起こしている場所にいるT細胞にCh25hが発現すると考えられた。一方、IL-27の作用がない条件では、皮膚炎に存在するT細胞のCh25h発現が低下し、皮膚炎が増悪することがわかった。このT細胞からCh25hを欠失させただけで、皮膚炎は増悪した。さらに別の動物モデルとして、マウスの皮膚に化学物質を塗布し皮膚炎を発症させる接触皮膚炎モデルにおいては、Ch25hを欠失したマウスでは皮膚炎の収束が遅延した。

以上より、IL-27はCh25h発現CD4陽性T細胞を炎症局所に誘導し、25OHCの分泌を促すことで、周囲の炎症に関連する免疫細胞に作用し、免疫細胞のコレステロールを不足させることで細胞を死滅させ、その結果、組織の炎症が収束していく仕組みが存在すると考えられた。

免疫系と代謝系の接点が明らかに

これまでの研究では、免疫系や代謝系に関して別々に研究がなされ、それぞれの役割が別々に理解されてきた。代謝系の従来の研究において、オキシステロールを介した細胞内コレステロール濃度の調節機構は、多くの細胞で機能している脂質代謝調節の仕組みとして以前から知られてきたが、コレステロールの濃度を調節する本来の目的以外の役割は知られていなかった。今回の研究成果は、炎症を収束させるためにコレステロール調節機構を免疫機能が利用しているという全く新しいコンセプトを確立し、免疫系と代謝系の接点を明らかにした点で、ヒトの体の仕組みを理解するうえで大きな前進と考えられるもの。

また、25OHCによる細胞を死滅させる作用が、活性化したT細胞のみに観察される理由として、活性化したT細胞は細胞分裂が盛んで、その細胞機能を維持するためにコレステロールの需要が高い状態にあることが考えられる。25OHCの作用により自らコレステロールが作れなくなった状態では、この高い需要を満たせなくなるために、細胞機能が維持できずに死滅すると考えられる。一方、活性化していないT細胞はコレステロールの需要は高くないため、25OHCによる影響を受けにくく、細胞が死滅しにくい状況にあると考えられる。

炎症性疾患に対する副作用の少ない治療法開発に期待

炎症の病態に直接関与している免疫細胞は活性化状態にあると考えられる。したがって、今回の研究で発見した仕組みをうまく利用できれば、病気を起こしている免疫細胞のみをうまく死滅させる治療法が開発できる可能性がある。「炎症性疾患などに対して、従来の免疫に作用する治療法の多くは、病気と無関係な細胞にも作用することで、さまざまな副作用を引き起こす。そのような副作用の少ない治療法の開発が、本研究成果の利用により将来的に期待される」と、研究グループは述べている。

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