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リツキシマブ、全身性強皮症の治療薬として承認-AMED

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2021年10月08日 AM11:45

リツキシマブによるB細胞除去療法は強皮症治療として国内外で期待されていた

(AMED)は10月7日、東京大学医学部附属病院皮膚科の佐藤伸一教授、吉崎歩講師、江畑慧助教らの研究グループによる研究成果に基づいて、(以下、強皮症)に対する新たな治療薬が厚生労働省より薬事承認されたと発表した。

強皮症は、皮膚をはじめ、内臓を含めた全身に線維化病変をきたす、膠原病に属する自己免疫疾患。国内では、少なくとも2万人以上が罹患していると推測されており、診断基準を満たさない軽症例を含めると4万人以上の患者が存在すると考えられている。病気の原因は不明で、根本的な治療は存在せず、厚生労働省が定める指定難病に認定されている。未治療のまま放置すると、症状がしばしば進行し、特に肺線維症と呼ばれる肺に生じた線維化病変は、ときとして致命的となる。

病気の原因は不明だが、佐藤伸一教授らはこれまでに、強皮症の発症と進展にはB細胞が重要な役割を果たしていることを数多くの基礎的研究によって示してきた。実際、2019年に報告された臨床研究においても、リツキシマブを用いたB細胞除去療法は、従来標準療法であるシクロホスファミド療法よりも有用であることが示唆されており、諸外国からも強皮症に対するリツキシマブの有効性を支持する結果が報告されていた。従って、リツキシマブによるB細胞除去療法は、強皮症の新たな治療になり得ると国内外から期待されていた。

東大病院で多施設共同医師主導治験を実施

新たな治療薬が保険適用として使えるようになるまでには、国内においては薬剤の製造販売元が主体となって医師に依頼して治験を行い、その結果を医薬品医療機器総合機構(PMDA)が審査し、厚生労働省が承認するという一連のステップが必要となる。しかしながら、B細胞除去療法は多くの他疾患においても有効であることが示唆されており、リツキシマブの治験が待たれている疾患が数多く存在していたため、製造販売元である全薬工業株式会社に強皮症の治験をすぐに行う予定はなかった。そこで、東京大学医学部附属病院皮膚科では吉崎歩講師を「自ら治験を実施する者」とする体制で、多施設共同医師主導治験が実施された。この治験は、AMED「難治性疾患実用化研究事業」の支援と、全薬工業株式会社の支援(治験費用の一部と治験薬の無償供与)を受け、東京大学医学部附属病院治験審査委員会の承認のもと、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験として実施された。

有効性が科学的に証明され、強皮症自体に対する治療薬として初めて承認

2017年11月より国内の4施設で開始されたこの治験は2019年11月に完了し、主要評価項目として設定された皮膚硬化の指標である修正ロドナンスキンスコアと、副次評価項目として設定された肺線維症の指標である%努力性肺活量において、リツキシマブによる有意な改善が認められた。この結果は、膠原病分野を代表する雑誌の一つである「The Lancet Rheumatology」に掲載された。さらにこの治験は、過去に行われた臨床研究の結果から、主要評価項目である皮膚硬化に対するリツキシマブの有効性をあらかじめ統計学的に予測し、これを検証する形で行われた検証的治験だった。つまり、この治験結果により、リツキシマブは強皮症の皮膚硬化に対して有効であることが科学的に証明されたことになる。これらのことは、PMDAの審査でも認められ、その結果、リツキシマブは、強皮症の合併症に対してではなく、強皮症自体に対する治療薬として、厚生労働省より公知申請以外では初めて薬事承認されるに至った。

B細胞は強皮症を引き起こす病態の根元に近いと考えられているため、リツキシマブによるB細胞除去療法は従来療法と比べて、より根本的な新しい強皮症治療薬と言える。これにより、従来よりも多くの強皮症患者に新たな治療の選択肢を届けられることが期待される。

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