医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 画期的な放射線治療補助具を開発、手指で自由に成形でき高密着-近大ほか

画期的な放射線治療補助具を開発、手指で自由に成形でき高密着-近大ほか

読了時間:約 1分58秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年09月21日 AM11:00

どのような治療部位の皮膚にも高密着し、再利用可能なボーラス開発を目指す

近畿大学は9月15日、温めることによって手指で自由に成形でき、身体のどの部位にも高密着する新たな放射線治療補助具「(Soft Rubbers Bolus)」の開発に成功したと発表した。この研究は、同大医学部放射線医学教室(放射線腫瘍学部門)の門前一教授ら、早川ゴム株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Physics in Medicine and Biology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

従来のボーラスは、頭部、顔面、頸部、乳房などの曲面部位や凹凸のある部位に放射線を照射する場合、皮膚との間に隙間が生じてしまい、十分に皮膚表面に線量を投与できない、処方通りの照射ができない、といった問題がある。また、サイズや厚みを患者ごとに変えることができず、近年需要が高まっている個別化医療の実現が困難だった。

また、照射精度の向上や個別化医療を目的とした、3Dプリンタの技術を用いたボーラスも商品化されているが、3Dプリンタを有しない施設が多いため汎用的ではなく、再利用ができないために費用や資源などの問題もあった。どのような治療部位の皮膚にも高密着し、サイズや厚みも自由自在に変えられ、多くの施設で簡易に使用でき、再利用可能なボーラスが求められている。

表在性腫瘍への放射線の照射精度を向上、より精度の高い治療に期待

今回、研究グループが開発したソフトラバーボーラスは、温めることによって手指で自由に成形することができ、室温や体温では形状が維持される。そのため、凹凸のある部位でも高密着を実現可能だ。

開発においては、治療の際にその場で患者の体にのせて成形するため、熱すぎると火傷を引き起こす恐れがある一方、体温では固さを保持し形状を維持できるようにするため、温度特性に工夫が必要だった。何℃で柔らかくして、何℃以下で形状を維持するかを何度も試しながら、粘性と弾性の両方を合わせた性質である「粘弾性」がどのように変化するかを測定し、最適な温度を特定。さらに、成形後に形状が経時変化しないようにすることにも配慮した。

また、放射線には、照射対象の密度が高いほどその対象に多くのエネルギーを付与することで、通過後に放射線の性質が変わってしまうことがある。そこで、ソフトラバーボーラスの密度を人体の組成に近い水と同じにすることで、ボーラスの有無によって放射線の性質が変わってしまうことを防いだ。水と同等の密度にするためには混ぜ合わせる化合物を工夫する必要があるが、早川ゴムの配合技術がそれを可能にした。

これらの工夫によって、表在性腫瘍への放射線の照射精度を向上させ、より精度の高い治療を可能にするソフトラバーボーラスが開発された。

消毒が容易・再利用可能で、簡易に使用可能に

ソフトラバーボーラスは、衛生面にも配慮しており、消毒が容易で、温めなおすことによって再利用も可能であり、多くの施設で簡易に使用可能だと考えられる。

なお、今回の開発については、2021年2月5日に特許出願を行っており、今後は、薬事申請を経て、製品化および臨床使用への展開を目指す、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 子の脳内ストレスホルモン活性、授乳時の母親のストレスが関連する可能性-阪大
  • 骨と軟骨の形成に、Smoc1とSmoc2遺伝子がセットで必要であることを発見-阪大ほか
  • 一人住まいの大学生は肥満リスク「高」、阪大生検診データ解析の結果-阪大
  • 新型コロナ感染を大きく阻害できる2つの標的タンパク質を、ヒトiPS細胞で同定-CiRA
  • 卵巣がんに関する患者の理解度や情報収集の実態、一般の認知度を調査-AZ