医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 循環・代謝疾患リスク要因は日本・オランダの夫婦で類似、生活習慣と相関-ToMMoほか

循環・代謝疾患リスク要因は日本・オランダの夫婦で類似、生活習慣と相関-ToMMoほか

読了時間:約 2分13秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年09月17日 AM11:15

2国のバイオバンク情報から、配偶者ペアの疾患リスク因子の類似性を比較

東北大学は9月15日、日本とオランダの一般地域住民の夫婦ペアを対象に、、医学検査値、疾病の類似性を両国の公的バイオバンクを利用し検討した結果を発表した。この研究は、同大東北メディカル・メガバンク機構とオランダのフローニンゲン大学の研究グループとの国際共同研究によるもの。研究成果は、「Atherosclerosis」に掲載されている。


画像はリリースより

これまで、配偶者同士の心血管・代謝疾患のリスク因子(生活習慣、医学検査値、疾病の有無)の類似性を2国間で調査し、比較した研究はなかった。今回の国際共同研究は、日本人とオランダ人の集団間の心血管・代謝疾患のリスク因子について、配偶者同士の類似性を定量化して比較することを目的とした。

3万組以上を対象に生活習慣、疾病、検査値の類似性を検討

研究の対象は、日本では、東北メディカル・メガバンク機構地域住民コホート研究(以下、ToMMoコホート)の5,391ペア(2013~2016年に調査)、オランダはフローニンゲン大学のLifelines研究(以下、Lifelinesコホート)の2万8,265の配偶者ペア(2006~2013年に調査)。

Lifelines研究は、オランダ北部で実施された大規模な前向きコホート研究で、16万7,729人を対象とした三世代の家族をリクルートしている。評価項目は幅広く、一般集団の健康と疾病に寄与する生物医学的、人口統計学的、行動学的、身体的および心理的要因を多面的に評価している。さらに、複雑な遺伝的要因と複数の疾患発症に焦点を当てており、この研究の重要な位置付けとなっている。

心血管・代謝疾患のリスク因子として喫煙・飲酒・運動などの生活習慣、・糖尿病・メタボリック症候群の疾病、体重、腹囲、肥満度(Body Mass Index)、血圧、総コレステロール・中性脂肪・HDL-コレステロール・LDL-コレステロールなどの検査値について、配偶者同士の類似性を検討した。分析は配偶者の年齢を考慮した相関分析またはロジスティック回帰分析を使用して評価した。

日本・オランダともに配偶者同士の類似性を確認

ToMMoコホートの夫と妻の平均年齢は63.2歳と60.4歳、Lifelinesコホートの夫と妻の平均年齢は50.0歳と47.7歳だった。配偶者同士の類似性は、両方のコホートのすべての心血管・代謝疾患のリスク因子および疾患で確認された。検査値の夫婦同士の類似性について、相関係数は0.032~0.263の範囲であり、体重や腹囲で相関係数が高い値を示した。

また、生活習慣の夫婦同士の類似性について、「現在喫煙」のオッズ比は約5倍、「現在飲酒」「運動習慣」で2倍以上と配偶者同士の類似性が示された。疾病について、高血圧、糖尿病、メタボリック症候群の年齢調整オッズ比はいずれも約1.5倍であり、夫婦同士の類似性が示された。

遺伝要因よりも環境要因を共有する夫婦に類似性

今回の研究により、日本人とオランダ人の2国の集団間で、ほとんどの心血管・代謝疾患のリスク因子に類似性が示され、疾患予防として、以下のような新たな施策が考えられた。1.健康診断等で夫婦一緒に保健指導を行う(問題認識の共有)。2.夫婦で励まし合い、競争し合うよう誘導する(日常生活における健康管理)。「このような施策により、効果的な生活習慣の変容ができる可能性がある。また、遺伝要因よりも環境要因を共有する夫婦の類似性の結果から、環境要因と疾病の関連をより明確化できる可能性がある」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 平均身長の男女差、軟骨の成長遺伝子発現量の違いが関連-成育医療センターほか
  • 授乳婦のリバーロキサバン内服は、安全性が高いと判明-京大
  • 薬疹の発生、HLAを介したケラチノサイトでの小胞体ストレスが原因と判明-千葉大
  • 「心血管疾患」患者のいる家族は、うつ病リスクが増加する可能性-京大ほか
  • 早期大腸がん、発がん予測につながる免疫寛容の仕組みを同定-九大ほか