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新型コロナの罹患歴があっても「2回のワクチン接種が必要」-米研究

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2021年09月09日 PM03:30

新型コロナ感染歴は良好な免疫反応を保証しない

)の罹患歴があり、COVID-19のワクチンを1回接種したから、もう新型コロナウイルスに感染することはない。そう思っている人は、考えを改めた方が良さそうだ。COVID-19罹患歴により高レベルの抗体産生が約束されるわけではなく、また、新型コロナウイルスの感染歴があっても、1回のワクチン接種で盤石な免疫反応が保証されるわけでもないことが、新たな研究で明らかになった。米ノースウェスタン大学のThomas McDade氏らが実施したこの研究結果は、「Scientific Reports」に8月30日掲載された。


画像提供HealthDay

McDade氏らは今回、27人の試験参加者から集めた血液サンプルを基に、米ファイザー社製または米モデルナ社製のCOVID-19ワクチンの2回接種による防御力の持続期間や、新型コロナウイルスの変異株に対する効力の程度、さらに、COVID-19の罹患歴の有無によるワクチン接種後の抗体産生の違いを調べた。試験参加者の平均年齢は39.7歳、女性が51.9%で、接種したワクチンの種類は、ファイザー社製が59.3%、モデルナ社製が40.7%だった。また、ワクチン接種前に抗RBD抗体が検出された陽性者は13人、検出されなかった陰性者は14人で、陽性者のうち、4人はPCR検査で新型コロナウイルス感染が確認されていたが、残りは無症状だった。血液サンプルは、1回目のワクチン接種後に1回(中央値で1回目接種から18.5日後)と、2回目の接種後に2回(中央値で2回目接種から19.8日後と1回目接種から95.5日後)に集められた。

血液サンプルを分析した結果、2回目のワクチン接種後には1回目の接種後に比べて、抗RBD抗体レベルが約5倍になることが明らかになった(中央値で21.0μg/mL対4.2μg/mL)。また、2回目接種後の新型コロナウイルス野生型に対する予防効果は97.7%と極めて高いものの、変異株に対する予防効果は、ガンマ型では27.1〜70.0%、ベータ型では34.2〜66.7%、アルファ型では45.9〜92.0%と有意に低かった。抗RBD抗体濃度(中央値)は、ワクチン接種後のピーク時に比べて接種から3カ月後には50.1%低下していた。また、変異株に対する予防効果も、3カ月後には低下し、特にガンマ型(31.2%)とベータ型(27.5%)で低下の幅が大きかった。

さらに、COVID-19の罹患歴がワクチン接種後の反応に与える影響について調べたところ、1回目のワクチン接種から3カ月後での抗RBD抗体レベルは、PCR検査でCOVID-19が確認された人(27.2μg/mL)で、その他の抗体陽性者(8.2μg/mL)や陰性者(8.7μg/mL)よりも高いことが明らかになった。しかし、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質とヒト細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)との相互作用をブロックする中和抗体のレベルについては、血清陽性者と血清陰性者との間に有意差は認められなかった。

McDade氏は、「われわれの研究結果は、COVID-19の罹患歴が、高レベルの抗体産生や、初回のワクチン接種に対する強力な免疫反応を保証するものではないことを示すものだ。また、感染歴があっても症状が軽症か無症状だった人でのワクチン接種に対する抗体反応は、感染歴のない人と本質的に変わらない」と強調する。

なお、McDade氏は、この研究はデルタ株が現れる前に実施されたものだが、研究結果はデルタ株に対しても当てはまるとの見解を示している。「あらゆる変異株に対するワクチン接種後の予防効果に関して言えることは一つだけだ。ワクチンは優れた予防効果をもたらすが、ワクチン設計に当たってのターゲットであった野生型に対するほど優れた効果は得られない。このことと、免疫力は時間の経過に伴い低下するという事実を考慮すると、ブレイクスルー感染に対する脆弱性は時間とともに高まっている。つまり現状は、デルタ株の流行と、最初にワクチン接種を受けた多くの人々の免疫力低下という2つの打撃に直面しているということだ」と懸念を示している。(HealthDay News 2021年8月31日)

▼外部リンク
Durability of antibody response to vaccination and surrogate neutralization of emerging variants based on SARS-CoV-2 exposure history

HealthDay
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