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がん光治療用ミトコンドリア標的型ナノカプセル開発、マウスで有用性確認-北大

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2021年08月26日 AM11:15

PS搭載MITO-Porterを構築、担がんモデルマウスによる検証実験

北海道大学は8月24日、光増感分子(Photosensitizer:PS)を搭載したミトコンドリア標的型ナノカプセルの構築に成功し、ヒト由来のがんを担持するマウスを用いた検証実験で「ミトコンドリアを狙い撃ちするがん光治療戦略」の有用性を示すことに成功したと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究院の山田勇磨准教授、原島秀吉教授、電子科学研究所の高野勇太准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nanoscale Advances」に掲載されている。


画像はリリースより

がん光治療は、患部切除を行わずに選択部位のがん組織を死滅させるため、患者の身体的負担が少ない治療法として期待されている。しかし、現状の光治療法の原理では、死滅させられなかったがん細胞が増殖することによる耐性がん発生のリスク問題があり、それを解決する治療法の開発が望まれている。抗がん剤の多くは、がん細胞の遺伝子が保存されている核を攻撃して、がん細胞を死滅させる。しかし、薬剤耐性を獲得したがんを死滅させるためには、核以外を標的とする必要がある。

今回の研究では、がん細胞のミトコンドリアを破壊する新たながん光治療の検証を試みた。研究グループはこれまでに、ミトコンドリア標的型ナノカプセル(MITO-Porter)を利用して、薬剤耐性のあるがん細胞のミトコンドリアに抗がん剤を運ぶ研究を進め、細胞実験で一定の成果を得ている。ミトコンドリアに薬を運ぶ技術は日々進化しており、体の中のがん細胞内ミトコンドリアへ、薬を届けることを目標に研究を進めてきた。

今回の研究では、PSを搭載したMITO-Porterを構築し、ヒト由来のがんを担持するマウスを用いた検証実験を行い、「ミトコンドリアを狙い撃ちするがん光治療戦略」の有用性を動物実験で実証することに挑戦した。

MITO-Porter(rTPA)投与・光照射群で抗腫瘍効果

今回の研究では、PSとして近赤外(700nm)の光照射によってミトコンドリア内で活性酸素発生反応を誘導し得るポルフィリン骨格を有する独自の新規化合物(rTPA)を選択。また、分子送達に関しては、研究グループが開発したミトコンドリア標的型ナノカプセル、MITO-Porterを用いた。ミトコンドリアにrTPAを運ぶために、rTPAを搭載したMITO-Porter(MITO-Porter(rTPA))の構築を検討。ナノサイズの粒子を調製することに成功した(粒子径:100-200nm、ζ電位:+30~40mV)。

モデルがん細胞として使用したヒト舌がん細胞(SAS cell)に蛍光標識を施したrTPA-MITO-Porterを添加し、ナノカプセルの細胞内局在を蛍光顕微鏡で観察。その結果、rTPA-MITO-Porterがミトコンドリアに集積する様子が観察され、MITO-PorterによるrTPAのミトコンドリア送達が確認できた。一方で、ミトコンドリア標的能がない陰性コントロールナノカプセルを利用した場合には、ミトコンドリアへの集積は観察されなかった。

続いて、rTPA-MITO-PorterをSAS cellに添加し、光照射後にWST-1アッセイを用いて細胞生存率を算出し、がん治療効果を検証。光を照射した群では、rTPA投与量に依存して細胞生存率が減少することを確認した。光を照射しない場合は、細胞毒性が確認されなかった。

さらに、SAS cellを皮下移植した担がんモデルマウスを作製し、MITO-Porter(rTPA)投与・光照射後の抗腫瘍効果を継時的に評価。その結果、MITO-Porter(rTPA)投与・光照射群において、がん細胞の成長を著しく抑制する抗腫瘍効果を観察した。これらの研究成果は、がんミトコンドリアを標的とするがん光治療の有用性を示している。

既存薬の抗がん作用機序と異なり、薬剤耐性がんの治療にも有用な可能性

ミトコンドリアを狙い撃ちするがん治療戦略は、既存薬の抗がん作用機序と異なり、薬剤耐性がんの治療にも有用であると期待される。また、がん細胞にピンポイントに抗がん剤を運ぶナノカプセルは正常細胞への侵襲性を抑えることが期待されるため、効果が現れているものの副作用で治療を断念するケースの解決にもつながる可能性があるという。

さらに、多彩な機能を有するミトコンドリアを標的とした創薬開発の医療用ナノカプセルの基盤技術としても貢献できると期待される、と研究グループは述べている。

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