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iPS細胞技術の社会実装に向け新会社「オリヅルセラピューティクス」を設立-武田薬品工業・京都大学

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2021年08月23日 PM01:30

製薬会社の武田薬品工業と京都大学iPS細胞研究所()らは8月10日に会見を開き、iPS細胞由来再生医療の事業化に特化した研究開発型企業「」を設立したことを発表した。

武田薬品工業とCiRAなどは2016年から産学連携プログラム「」で、iPS細胞技術による研究成果の実用化を目指してきた。2025年までの同プログラムに武田薬品工業は総額200億円の研究資金を提供する。

T-CiRAの成果について武田薬品工業の梶井靖氏(T-CiRA ディスカバリーヘッド)は、「iPS細胞創薬の研究成果として得られたALS治療薬候補化合物やiPS細胞から作り出したT細胞によるがん免疫細胞療法(iCART)の基礎技術はすでに同社に移管し、臨床試験実施へ向け開発を進めている」と報告。同社が注力するがん、ニューロサイエンス、消化器、遺伝性希少疾患の領域にかかわるT-CiRAの成果については、「武田薬品工業が最善のパートナーとして患者さんに届けることが重要だ」と述べた上で、「これらの領域以外でも臨床応用可能な研究がでてきた」と紹介。「T-CiRAの始動から5年目となり、事業展開戦略を拡大するタイミングにきた。研究成果を迅速に最善の形で臨床現場に届けるためには新会社設立が最適だ」との考えを示した。

臨床応用可能な研究については具体的に、①iPS細胞由来膵島細胞(iPIC)による重症1型糖尿病治療、②iPS細胞由来心筋細胞(iCM)による重症心不全治療――を挙げ、新会社であるオリヅルセラピューティクスにプロジェクトを移管すると明らかにした。

1型糖尿病治療、重症心不全治療の臨床試験を2026年までに終えて上市目指す

オリヅルセラピューティクスは2021年4月に設立し、本店を京都大学、事業所を湘南ヘルスイノベーションパーク(神奈川県)に構える。主な事業は、「細胞移植による再生医療等製品の開発」「iPS細胞関連技術を利活用した、創薬研究支援および再生医療研究基盤整備」。iPICやiCMの研究については、2026年までに臨床試験を終え、上市を目指すとしている。
 同社の従業員は約60名で、うち約20名が武田薬品工業やCiRAの研究者、約30名が技術者。京都大学イノベーションキャピタル、、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJ銀行、メディパルホールディングス、三井住友ファイナンス&リース、三井住友信託銀行、日本ベンチャーキャピタルから総額60億円の出資を受けている。
社長の野中健史氏は記者から新会社の運営について意気込みを問われると、「iPS細胞の社会実装に携われることには心が震える」との思いを語った。また、「社員は皆同様に“われわれこそがiPS細胞をなんとかしないと後がない”と危機感を持っている」とし、「サポートしていただく方と一緒に再生医療を患者さんに届ける目標を達成したい」と述べた。

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