医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > コロナ診療「直近1年で最も深刻」-順天堂大学医学部附属浦安病院石原唯史氏

コロナ診療「直近1年で最も深刻」-順天堂大学医学部附属浦安病院石原唯史氏

読了時間:約 3分32秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年08月23日 PM01:00

)が猛威を振るっている。感染者の合計数は120万人、死亡者数は1万5000人を超えた。どのような状況で、どのような治療を行っているのか。順天堂大学医学部附属浦安病院の石原唯史氏(救急診療科/こども救急センター 准教授)にCOVID-19診療現場の今を取材した(8月11日オンラインインタビュー)。

――COVID-19診療の現状をお聞かせください。

私が所属する救急診療科では重症から最重症の患者さんを診ています。いわゆる軽症・中等症の患者さんは呼吸器内科の先生が診るという体制をとっています。

7月の最終週くらいから急激に患者さんが増えてきています。当院ではCOVID-19患者さん用の病床がトータルで30床程度ありますが、8月7日~9日の連休前くらいから少しずつベッドが埋まり始め、今はほぼ満床です。

重症患者さんに対して用意している8床もすべて、8月に入ってからは埋まっています。全例、気管挿管及び人工呼吸管理をしており、ECMO(体外式膜型人工肺)の使用例も増えました。

救急車で何時間も待機してもらったり、その日のうちに入院が決まらず、患者さんを説得して救急車を降りてもらったりすることもあります。千葉の西の方から東の端や南の端にある病院に入院せざるを得ないという事態が起こってきています。直近1年の中で最も深刻な状況です。
ワクチン接種率の向上がパンデミックを抑える1つのポイントであることは間違いないと考えています。2020年の夏頃は60~80代と高齢の入院患者さんが多かったのですが、現在、高齢の入院患者さんは圧倒的に減りました。特に重症の入院患者さんの年代は、40~50代にシフトしてきています。新しいワクチンで、将来的にどうなるかわからないと不安に感じる方がいると思いますが、臨床現場で診ている限り、ワクチンの効果は実感しています。

COVID-19に限定した抗ウイルス薬の開発に期待

――既存の治療薬について使い分けを教えてください。

重症まで進行してしまうとほかに手だてがないということもあり、使えるものは全部使って、やれることはしっかりとやるというのが治療のスタンスです。また、当科では、日本救急医学会と日本集中治療医学会が合同で作成している「COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations(第3.2版)」を治療方法の決定の参考にしています。

2021年8月現在、国内のCOVID-19治療では、抗ウイルス薬の「レムデシビル」(商品名:)、ステロイド製剤の「」(同:)、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の「」(同:)、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体の抗体カクテル療法「(遺伝子組換え)/イムデビマブ(遺伝子組換え)」(同:)が承認されています。また、未承認薬ではありますが、ヒト化ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体である「」(同:アクテムラ)も使用しています。

まず、ステロイドと抗ウイルス薬では作用が異なります。ステロイドはCOVID-19で起こった炎症を抑える目的で使うもの。ウイルス増殖期(発症から1週間程度)の後の過剰な炎症反応が起こる時期(発症から1~2週間程度)に有効だといわれています。デキサメタゾンについては、どの医師も使用に躊躇することはあまりないと思います。

一方、レムデシビルは唯一承認されている抗ウイルス薬で、ウイルス増殖期に投与することで、ウイルスの増殖を抑えるだろうといわれています。ですから現在のところ、中等症患者さんには効くが、重症患者さんにはほとんど効果がないとされており、そういったことも踏まえて、あまり使用を推奨していないガイドラインもあります。日本やオーストラリアでは、中等症で酸素投与を行っている患者さんに対しては効くとして使用することが多いです。当院では酸素投与の量が増えると救急診療科で対応しており、患者さんを受け取った段階で早めに抗ウイルス薬を投与しています。

抗体カクテル療法は、話題に上っていますが、対象は軽症から中等症で入院している患者さんです。今はベッドを軽症患者さんにまで割り当てる余裕がないため、投与は難しいでしょう。内科の医師からは、発症から原則1週間以内に投与しなければならず、そのタイミングで投与できるかという問題もあるという話を聞きました。症状の悪化は発症から1週間前後で見られるケースが多いので、タイミングが遅れてしまう懸念があります。外来患者さんにまで適応が広がることが望まれます。

――治療薬に求めることは何ですか。

インフルエンザの治療薬のように、吸入薬や飲み薬があると、もっと診療しやすくなると考えています。2009年に新型インフルエンザのパンデミックが発生した際、患者数が多くても、社会の経済を止めるまでにはいきませんでした。その大きな理由の1つとして、決定的な治療薬があったことが挙げられるのではないでしょうか。

COVID-19ではまだ決定的な治療薬が開発されておらず、どこの病院も四苦八苦しながら対応しているのが現状だと思います。抗ウイルス薬で唯一承認されているレムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療用に開発されたものです。COVID-19に限定した薬があれば、より治療効果に期待ができると思います。

石原唯史氏
順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科/こども救急センター 准教授
2007年岡山大学卒。岡山赤十字病院初期研修修了。日本小児科学会指導医・専門医、日本救急医学会専門医、日本集中治療学会専門医、麻酔科標榜医。日本DMAT隊員、千葉県周産期リエゾン担当。専門は救急医学、小児救急、集中治療、小児集中治療、麻酔

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 子の脳内ストレスホルモン活性、授乳時の母親のストレスが関連する可能性-阪大
  • 骨と軟骨の形成に、Smoc1とSmoc2遺伝子がセットで必要であることを発見-阪大ほか
  • 一人住まいの大学生は肥満リスク「高」、阪大生検診データ解析の結果-阪大
  • 新型コロナ感染を大きく阻害できる2つの標的タンパク質を、ヒトiPS細胞で同定-CiRA
  • 卵巣がんに関する患者の理解度や情報収集の実態、一般の認知度を調査-AZ