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パーキンソン病患者/高齢者の方向転換時の軌道などの特性を明らかに-畿央大ほか

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2021年07月06日 AM11:45

方向転換時の転倒リスクを減らすには?TUGで調査

畿央大学は7月5日、レーザーレンジセンサーを用いた高精度歩行計測システムを用いてパーキンソン病患者と高齢者がTimed up and go test(TUG)で方向転換を行う際の移動軌跡と足接地位置の特性について調査し、その結果を発表した。この研究は、同大ニューロリハビリテーション研究センターの岡田洋平准教授、福本貴彦准教授、慶應義塾大学の高橋正樹教授、同大学院の萬礼応氏(現・筑波大学助教)、京都大学の青山朋樹教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Gait & Posture」に掲載されている。


画像はリリースより

方向転換は、加齢やパーキンソン病により障害される。高齢者は方向転換時の歩数が増加し、速度が低下し、転倒リスクの増加につながる。パーキンソン病患者は、方向転換の速度がより低下し、歩幅も低下することなどが示されている。円滑な方向転換には、移動軌跡や足の接地位置を適切に制御することが重要であると考えられるが、これまで高齢者やパーキンソン病患者が、方向転換時にどのように移動軌跡や足接地位置をとる傾向にあるのか、またその傾向は方向転換時の歩幅などにどのように関連するかは明らかではなかった。

研究では、パーキンソン病患者、健常高齢者、健常若年者を対象に、レーザーレンジセンサー(LRS)を用いた高精度歩行計測システムにより、TUGを行う際の脚移動軌跡と足接地位置について比較検証した。従来のTUGは、椅子から立ち上がり、3m歩いて、180度方向転換し、戻ってきて、椅子に座るまでの所要時間を計測するのみだった。しかし、今回はLRSを用いた計測システムを利用することにより、肢移動軌跡や足接地位置に関する指標(マーカーと足接地位置の最短距離、スタート地点と足接地位置の最大前方距離、足接地位置の最大横幅など)や歩行の時空間指標(歩幅、歩隔、歩行率)もマーカーレスで計測できた。

パーキンソン病患者は鋭い角度で方向転換しようとして、歩幅低下の可能性

その結果、パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強いほど、方向転換時の歩幅が低下することが明らかになった。この結果は、パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地してより鋭い角度で方向転換しようとすることにより、方向転換時の歩幅の低下の程度が大きくなる可能性を示唆した。

高齢者は、動的不安定性を減少するため、方向転換時に歩隔を広くしている可能性

一方、高齢者はTUGにおいて歩隔(足の横幅)が広く、方向転換時のスタート地点と足接地位置の最大前方距離が大きいことが示された。この結果から、高齢者は方向転換時に歩隔を広くして、側方への動的不安定性を減少させるための代償戦略をとっていることを表している可能性があるという。

パーキンソン病患者と高齢者の方向転換時の足接地位置や移動軌跡の特性が初めて示された。今回得られた知見は、パーキンソン病患者の方向転換時の歩幅の低下の助長を防ぐため、あるいは高齢者の動的不安定性を軽減するための運動療法や動作指導を行う上で有用であると考えられる。「今後は、パーキンソン病患者や高齢者の方向転換時の足接地位置や移動軌跡に関連する要因や他疾患における傾向についても検証していきたい」と、研究グループは述べている。

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