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寝る前の照明環境が、睡眠時の体温とエネルギー代謝に影響-筑波大ほか

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2021年07月06日 AM11:15

光環境の違いが睡眠時のエネルギー代謝に与える影響を検討

筑波大学は6月30日、LED照明と、よりまぶしさが少ない有機EL照明について、夜間に照射する光の違いが睡眠時の体温とエネルギー代謝に及ぼす影響を検討したと発表した。この研究は、同大国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の徳山薫平教授、 学術研究院の白戸淳二教授(大学院有機材料システム研究科担当)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより

人工照明は白熱電球、蛍光灯を経て、現在はLED照明の普及が進んでいる。これに伴い、人工照明は次第に短波長の光に富むものへと変遷してきた。そのため、ヒトの生活時間は、自然光とは周波数特性の異なる光環境、特にブルーライトとして知られている短波長光下で過ごすことが増えている。また、LED電球は、発する光の指向性が強いため、同じ明るさでも他の照明器具と比較してまぶしく感じられる。また、次世代照明技術として、有機ELの開発が進んでいる。有機EL光は、LED光に比べて短波長光成分が少なく、面全体で発光するため、まぶしさが少ないことから目に優しい照明として期待されている。

このような光環境の変化は、睡眠、体内時計、内分泌や体温などの概日リズムにも影響を及ぼす。同様の影響は、ヒトだけではなく、都市に生息する野鳥などでも生じていることが知られている。近年は、人工照明の普及に起因する健康や生態系への悪影響が「光害」と呼ばれ始めている。光環境の違いが睡眠に及ぼす影響については、これまでも研究が行われてきた。一方、睡眠時のエネルギー代謝には個人差が大きく、睡眠中の脂肪の燃焼(脂質酸化)量の差が、将来の肥満や糖尿病などの代謝性疾患の発症に関連することを示唆する研究成果が報告されつつある。そこで研究グループは、光環境の違いが睡眠時のエネルギー代謝に与える影響を検討した。

就寝前の有機EL光はLED光より、睡眠中のエネルギー消費量・深部体温の低下・脂質酸化を増大

研究では、25〜26歳の健常男性10人を対象とし、色温度を4,000Kに揃えたLED光(1,000ルクス)、有機EL光(1,000ルクス)、および対照条件として薄明かり(10ルクス以下)を、それぞれ20~24時までの4時間、座った姿勢で目の高さから当てた。その後、24時~翌朝7時まで睡眠をとってもらい、その間のエネルギー代謝と体温を、ヒューマン・カロリーメーターを用いて測定した。

その結果、就寝前に有機EL光を照射した場合は、LED光を照射した場合に比べ、睡眠中のエネルギー消費量と深部体温の低下、および脂質酸化の増大が見られ、これらの傾向は翌朝にも確認された。これより、光照射が睡眠時の体温とエネルギー代謝に影響することが示された。また、実験中の被験者の尿を全て採取し、メラトニン(体内時計に働きかけるホルモン)代謝物の濃度を測定したところ、睡眠中の脂質酸化は、夜間のメラトニン分泌と相関していた。このことから、光照射が夜間のメラトニン分泌に影響し、睡眠時の体温とエネルギー代謝の調節に関与していることが示唆された。

睡眠時の正常な代謝促進に、照明の制御が重要となる可能性

睡眠不足は、糖尿病や脂質異常症などの代謝疾患や肥満の発症と関連していることが、これまでの疫学的研究で指摘されている。今回の研究では、照明によって、睡眠時の体温や、エネルギー代謝、脂肪酸化等が影響を受ける、つまり、睡眠時の正常な代謝を促すためには、照明の制御が重要な要素となる可能性を示唆している。

有機ELとLEDは、周波数特性だけでなく輝度も異なる。そのため、今回見出された体温とエネルギー代謝に及ぼす影響の違いが、有機ELが持つ青い光成分が少ない、緑の光成分が豊富であるなどの周波数特性によるものなのか、輝度の違いによるものなのかなどを、解明する必要がある。「研究では、10ルクス以下の薄明かりを照射した場合は、就寝前の体温の低下が早く始まることもわかった。この現象は、体内時計の機能が後退しているヒトの矯正にも応用できる可能性を示しており、さらに研究を進めることで、多様な光環境を駆使した健康で望ましいライフスタイルの実現につながると考えられる」と、研究グループは述べている。

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