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京都府立医大髙山氏、エドルミズ投与による予後改善に期待

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2021年06月17日 PM01:00

がん悪液質とサポーティブケアについて、京都府立医科大学大学院医学研究科の髙山浩一氏(呼吸器内科学教授)が6月7日に講演した。髙山氏は、「がん悪液質はがん患者の死因の1/4を占める」と重要視し、運動療法や栄養療法、薬物療法を組み合わせた介入による患者の生命予後改善に期待を示した。


髙山浩一氏(小野薬品工業提供)

講演は、小野薬品工業が非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんのがん悪液質を効能・効果としたグレリン様作用薬「」(一般名:アナモレリン塩酸塩)の発売に合わせて開いたセミナーで実施したもの。エドルミズは、空腹になると胃から血液中に分泌され脳を刺激することで食欲亢進や筋肉量増加、体重増加をもたらすホルモンであるグレリン様の作用を示す。国内第Ⅱ相(ONO-7643-04)試験と国内第Ⅲ相(ONO-7643-05)試験の結果に基づき1月に承認、4月に発売された。

がん悪液質は進行がん患者の80%に認められ1)、膵臓がんや胃がん、食道がん、頭頸部がん、肺がんで特に起こりやすい。European Palliative Care Research Collaborative(EPCRC:上質な緩和ケアの提供を目的とし、欧州連合の研究・技術枠組み計画に関連して設立された国際協力プロジェクト)は、「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無にかかわらず)を特徴とする多因子性の症候群」2)と定義している。診断基準2)は①過去6か月間の体重減少>5%、②BMI<20、体重減少>2%、③サルコペニア、体重減少>2%(体液貯留あり、腫瘍量大、肥満を認める場合は骨格筋量により計算)――のいずれかに該当し、経口摂取不良、全身性炎症を伴うもの。がん悪液質には、「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」と3つのステージがある。

不応性がん悪液質より前段階の患者にエドルミズ投与を

セミナーで髙山氏は、「死因を正確に調べるのは難しい」と前置きした上で、「死因の2/3は臓器不全によるものだが、がん悪液質によって徐々に衰弱して亡くなるケースが1/4を占めている」と説明。これまで介入の余地はなかったが、運動療法や栄養療法と共にエドルミズを投与することで、身体機能とQOLの維持・改善が期待できるとした。その上で、「状態が良くなることで治療を継続できる患者も増え、生命予後の改善につながるのではないか」との考えを示した。

髙山氏はまた、「多くの医療従事者が持つがん悪液質の認識は、不応性がん悪液質の段階だ」と問題視。「不応性がん悪液質の患者にエドルミズを使えないわけではない」としつつ、「より薬の効果を発揮するためには、不応性がん悪液質より前段階で、早期の治療を開始することが重要だ」と述べ、医療従事者への啓発が今後の課題だとした。

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