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動脈硬化症、発症における好中球ヒストンシトルリン化の役割を解明-東京医歯大ほか

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2021年05月24日 AM11:15

高脂肪食負荷による動脈硬化性血管炎症反応、好中球ヒストンシトルリン化が関与

東京医科歯科大学は5月20日、高脂肪食負荷による動脈硬化性血管炎症反応に好中球ヒストンタンパクのシトルリン化が関与していることを突き止めたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科先進倫理医科学分野の吉田雅幸教授と大坂瑞子助教、東京都健康長寿医療センターの研究グループによるもの。研究成果は、「JACC:Basic to Translational Science」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

アテローム性動脈硬化症の発症および進展には、血管炎症反応が重要な役割を果たしている。これまでの多くの動脈硬化症研究によって血管内膜への単球やマクロファージの接着が動脈硬化巣形成の引き金になることが報告されてきた。

研究グループは以前、野生型マウスに対する高脂肪食負荷早期に好中球が血管内膜へ接着し、内膜での白血球集積の増加に関与することを見出し、これらの結果から動脈硬化症の発症において好中球は重要な役割を果たすことが示唆された。しかし、動脈硬化症に関連する血管炎症を誘発する好中球の性質について明らかとなっていなかった。そこで好中球の質的変化が動脈硬化症に関連した血管炎症反応に関与することを仮説とし、動脈硬化症モデル動物であるLDL受容体欠損マウスの好中球について調査した。

ペマフィブラートがヒストンシトルリン化抑制で好中球接着を抑制、マウスで確認

今回の研究において、好中球は、細菌感染等の炎症反応における炎症の急性期に関与し、さらに好中球細胞外トラップ(NET)という新しい現象が感染によって誘導されることが報告された。NETは、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4(PAD4)によってヒストン中のアルギニン残基がシトルリン残基に変換されることにより、核内のクロマチン構造を細胞外に放出する。

高脂肪食を摂取したLDL受容体欠損マウスの末梢血好中球では、野生型マウスに対してヒストンタンパクのシトルリン化が亢進していた。これらのマウスの血中では、好中球の遊走因子であるCXCL1が特異的に上昇し、CXCL1は好中球のヒストンH3シトルリン化を誘導した。

高脂肪食を摂取したLDL受容体欠損マウスの大腿動脈では血管内膜への好中球接着が亢進したが、シトルリン化を抑制するPAD4阻害剤の投与により好中球接着が有意に減少した。また、血中の中性脂肪の上昇を抑制する選択的ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)モジュレーターである抗脂質異常症治療薬ペマフィブラートは、血中CXCL1を減少し、ヒストンシトルリン化を抑制して好中球接着を抑制したという。

動脈硬化症の新規治療ターゲットとして期待

この研究により、動脈硬化症発症に関連した血管炎症反応に好中球が関与することが解明され、ペマフィブラートが好中球ヒストンのシトルリン化と血管炎症を抑制することが明らかとなった。

脂質異常症低下薬の抗動脈硬化作用として、好中球ヒストンのシトルリン化抑制という新たな機序が同定された。動脈硬化症の新規治療ターゲットとして期待される、としている。

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