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たばこ成分が子宮内膜の低酸素状態を招き、細胞死関連遺伝子を発現-関西医科大ほか

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2021年05月20日 AM11:30

たばこ成分を添加した子宮内膜間質細胞、正常酸素下でも低酸素誘導因子HIF-1活性化

関西医科大学は5月19日、たばこ成分が加えられた子宮内膜間質細胞で、正常酸素濃度であっても低酸素誘導因子HIF-1が活性化していることを発見したと発表した。この研究は、同大産科学・婦人科学講座の岡田英孝主任教授、木田尚子助教、同附属生命医学研究所侵襲反応制御部門の廣田喜一学長特命教授、慶應義塾大学産婦人科学教室の丸山哲夫准教授、広島大学大学院統合生命科学研究科ゲノム情報科学研究室の坊農秀雅特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Antioxidants」と一般社団法人日本生殖医学会発行「Reproductive Medicine and Biology」に掲載されている。

妊娠の成立には、「卵巣機能」「胚」「子宮内膜」という三者の調和のとれた相互作用が必要なる。また、喫煙が妊娠に悪影響を与えることは経験的によく知られており、同時に疫学的な研究も数多く行われた結果、様々な報告が行われてきた。しかし、女性の胚や卵巣機能にどのような影響があるかに関する研究では、子宮内膜への影響についてはほとんど報告されていないのが現状だ。その意味で、喫煙による影響とそのメカニズムについて全容を科学的に解明した研究はないといえる。

生殖可能な年齢のヒト子宮内膜は、月経周期において卵巣ステロイドホルモンに制御された周期性変化を繰り返す。その重要な機能が子宮内膜の増殖と分化、つまり血管新生と脱落膜化だ。そこで今回研究グループは、ヒト子宮内膜の血管新生、脱落膜化機能に対する喫煙の影響について研究を進めた。

CSE群では細胞死関連遺伝子が特徴、低酸素群との比較で

今回の研究では、同大産科学・婦人科学講座が独自に確立した方法を用いて分離培養したヒト子宮内膜間質細胞、および不死化ヒト子宮内膜間質細胞にたばこ抽出液(CSE)を添加。また、脱落膜化にはエストラジオールおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを添加して12日間の培養を行った。

その結果、CSEは活性酸素種(ROS)を産生させ、正常酸素下にもかかわらず低酸素誘導因子HIF-1αを活性化していることを発見。細胞内でHIF-1αの安定性が高まり、分解が抑止されることで活性化していることも明らかになった。蓄積したHIF-1αは、細胞核内に移行し、下流遺伝子である血管新生因子VEGFの発現を転写レベルで誘導していることを示した。

また、低酸素群とCSE群でのRNAシークエンスによる比較解析を実施。CSEは低酸素誘導遺伝子のクラスター発現を促進することを解明した。低酸素群では、主に代謝再プログラミング(好気性から嫌気性への変化)に関連する遺伝子クラスターを特徴とするのに対して、CSE群では細胞死に関連する遺伝子を特徴としていたという。これらの結果から、子宮内膜間質細胞において、CSEによって誘導される細胞応答にHIF-1シグナルが重要な役割を果たすことを発見した。

同時に、脱落化マーカーや形態学的な評価を行った結果、脱落膜化に与える影響についても、CSE濃度が低濃度では脱落膜化を促進し、逆に高濃度では抑制するという、濃度によって異なる影響を示すことがわかっているという。

これまで疫学的にわかっていた生殖機能に対する喫煙の影響、科学的に分子メカニズムレベルで解明

今回の研究成果は、CSEがヒト子宮内膜間質細胞の機能調節機構における血管新生、脱落膜化に直接的な影響を与えることを示している。特に、これまで疫学的にわかっていた生殖機能に対する喫煙の影響を、科学的に分子メカニズムレベルで解明した点、つまり、CSEが正常酸素下で低酸素誘導因子HIFを活性化させることに意義を見出しているとしている。

今回の研究は、子宮というブラックボックスのなかで起こる着床の仕組みを解明されることにもつながり、今後ヒト子宮内膜におけるHIFの作用をさらに検討することで、着床障害のメカニズム解明や新規診断・治療法の開発につながっていくことが期待される、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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