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抗PD-1抗体による甲状腺副作用の発症メカニズムをマウスで明らかに-名大

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2021年05月14日 AM11:15

免疫チェックポイント阻害薬治療によるirAEsの発症機序は不明だった

名古屋大学は5月13日、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体による甲状腺副作用の発症メカニズムをマウスで明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院糖尿病・内分泌内科の安田康紀医員、岩間信太郎講師、同大医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の有馬寛教授らの研究グループと、同大医学系研究科分子細胞免疫学の西川博嘉教授らの研究グループとの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Science Translational Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより

免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対する免疫反応を高めることで抗がん作用を示すがん免疫治療薬。日本では悪性黒色腫、肺がん、腎がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、胃がん、尿路上皮がん、乳がん等で近年保険が適用され、使用が拡大している。

一方、免疫反応の活性化が自己の臓器で発生した際の副作用「irAEs」が問題となっている。irAEsは肺、消化管、皮膚、神経・筋、内分泌器官など、全身のさまざまな部位で認められる。このうち甲状腺の副作用は約10%と頻度が高く、一過性の甲状腺ホルモン上昇とその後の低下を伴う破壊性甲状腺炎の臨床像を呈するが、その発症機序は明らかにされていなかった。

破壊性甲状腺炎マウスでCD4陽性T細胞が増加、細胞障害作用を示唆するグランザイムBが発現

研究グループは、甲状腺特異的なタンパクであるサイログロブリンをマウスに皮下投与し、2か月半後に抗PD-1抗体を投与することで、著明な炎症細胞浸潤を伴う破壊性甲状腺炎を呈するマウスモデルを確立した。同マウスモデルの頸部リンパ節および甲状腺におけるPD-1とそのリガンドであるPD-L1の発現を解析した結果、PD-1は主にCD4陽性T細胞において、PD-L1はマクロファージなどの炎症細胞において発現が認められた。

抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎発症時にマウスの頚部リンパ節をフローサイトメトリーで解析した結果、CD4陽性のエフェクターメモリーT細胞およびセントラルメモリーT細胞の増加が認められた。このマウスにおいて、CD4陽性T細胞はサイログロブリンに特異的に反応することおよび細胞傷害作用を示すタンパク「」を発現することが示された。

抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎において、CD4陽性T細胞が発症に必須と判明

次に、あらかじめCD4、CD8、CD20陽性リンパ球をそれぞれ除去した後に抗PD-1抗体を投与して、破壊性甲状腺炎の発症を解析。その結果、CD4陽性T細胞を除去した場合に抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎の発症が完全に抑制され、CD8陽性T細胞の除去では破壊性甲状腺炎の発症は部分的に抑制された。さらに、抗PD-1抗体により破壊性甲状腺炎を発症したマウスのリンパ節からCD4陽性T細胞を抽出して別のマウスへ移植した結果、レシピエントマウスの甲状腺濾胞構造の破壊が認められた。また、抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎発症者6人と非発症者7人の血液中のリンパ球をフローサイトメトリーで解析した結果、発症者では非発症者と比べ、細胞傷害性CD4陽性T細胞の割合の増加が認められた。以上のことから、サイログロブリンの免疫によって生じたCD4陽性メモリーT細胞が抗PD-1抗体の投与により活性化し、細胞傷害作用を示すことで直接的に破壊性甲状腺炎の発症に関与することが示された。

今回の研究により、抗PD-1抗体による破壊性甲状腺炎の発症には細胞傷害作用を示すCD4陽性T細胞が必須の役割を果たしていることが明らかになった。同結果は、現在広く使用されている抗PD-1抗体による副作用の機序の解明およびその予防法の確立につながる成果と考えられる。

irAEsの新たな治療法と予防法の確立につながる可能性

免疫チェックポイント阻害薬は細胞傷害作用を有するCD8陽性T細胞の活性化を介して抗腫瘍作用を発揮すると考えられているが、irAEsのひとつである破壊性甲状腺炎では、細胞傷害性CD4陽性T細胞が重要な役割を果たしていることが示された。「本研究成果はirAEsの新たな治療法および予防法の確立につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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